コメディアンのポール・ムーニーがこの作品でなんとサム・クックを演じているんですよ。ポール・ムーニーの本を読んだ時に見たいなーと思ったけれど、観たの今。本読んだの2年前。ポール・ムーニーはリチャード・プライヤーのブレーンと言ってもいい人物で、プライヤーの番組等を手伝ったりもしていたコメディアン。今は黒人コメディ界のご意見番。辛辣にコメントするのが面白い。でも本人はそんなにメジャーじゃなく、黒人のコメディアンはみんなムーニーを尊敬したけれど、一般人は知らない人が多かった。白人の人は特に。でも「デイブ・シャペル・ショー」の番組に出演してから、白人の若者にも知られて人気になった。そのあとに、その白人の若者が知らずに彼のスタンダップコメディのライブを見に行って、居心地悪くてすぐに退席したのも、「Paul Mooney: Jesus Is Black - So Was Cleopatra - Know Your History / 日本未公開 (2007)」で確認できる。でもそれをも笑いにする人。白人怒らせるの始めてじゃないしー的で、今までも散々怒らせてきましたし的。と長くなりましたが、そんなコメディアンがサム・クックを演じてるんですよ。それだけで興味ありありでしょ?ポール・ムーニーが踊ってた!!コメディアンになる前に当時流行っていたダンスパーティの番組(映画「ヘアスプレー」みたいな)に出ていたムーニーなので、その片鱗が少しだけ見られて嬉しかった。またこの映画でも、黒人用のホテルにバディ・ホリーがチェックインするシーンで、ムーニーらしいジョークが彼の台詞にあって、バディ・ホリーとサム・クックの関係を浮き彫りにしてましたね。
とは言え、これはポール・ムーニーの「サム・クック・ストーリー」じゃなくって(も、あって欲しいけど)、ゲイリー・ビューシイの「バディ・ホリー・ストーリー」。この飛行機事故については、「ラ・バンバ」で観て知っていた。けれどこの映画はその飛行機事故というより、バディ・ホリーがどのようにスーパースターになっていたかが描かれている。でも史実とは違っていて、それはバディ好きのミュージシャンが怒ってしまい、ポール・マッカートニーが「これが本当のバディ・ホリー!」的なドキュメンタリーを制作してしまっている程。と、バディについても正確には知る事が出来ない伝記映画。しかし、バディを演じたゲイリー・ビューシイは素晴らしい。音楽に対しては絶対に譲らなかった所とか、でも他の事には柔軟で人懐っこい性格の所とか上手く引き出してた。正直ゲイリー・ビューシイが俳優としてこんなに素晴らしいとは思ってもいなかった。私はビューシイの奇行ばかりを覚えている年代なので。
地元のDJが「うちではどうせ掛けられないから」って、リトル・リチャードやファッツ・ドミノのレコードをバディにあげるシーンが好き。リトル・リチャードは今の時代だったら、著作権の裁判で勝ちまくりでもっとお金稼いでいただろうね。この映画の中でもバディ・ホリーが歌だけでは、黒人歌手だと思われていたというのがあるけれど、それはいかにあの当時の黒人ミュージシャンが優れていたけれど日の目を見なかったという事の裏返しでもあるように思えた。バディはエミネム的かなって思う。その才能を黒人の人々も認めていた。で、パット・ブーンはヴァニラ・アイス的だったね。
物語は「ラ・バンバ」の方が面白かった。この映画はバディの人生のどこをどう映画にするかという根本的な所が間違えていたんだと思う。バディ・ホリーだったらもっと面白いドラマを作れた筈。ビューシイの名演技が勿体ない。
オフィシャルサイトとかもちろん無いので、IMDBかAllcinemaさんをどうぞ。
(4点/5点満点中:6/2/12:DVDにて鑑賞)