SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

FTA / 日本未公開 (1972) 680本目

黒人コメディアンというか、ご意見番のポール・ムーニーの自伝を読んだ時に知った作品です。ポール・ムーニーがパフォーマーの一人として出ています。惹かれた理由は、私が過去住んでいた所にツアーが周っていたからです。でもこの映画の中には残念ながら出てこなかった。ポール・ムーニーの自伝では出てきたので、もしかしたら住んでいた所の70年代の映像が見れるかな?と思って期待していたのだけど... というか、あんなに小さい所にも周っていたんだと、ビックリでした。映画の中は、主にハワイの米軍基地、日本の沖縄と岩国が出てきます。日本の70年代ののどかな映像がこれまた懐かしい。海外というフィルターを通すと、余計に牧歌的で懐かしく感じる。あの時代はコンクリートがまだ少なかったんですよね。子供達も昭和ですわ。

という事で、映画の説明。
ハノイ・ジェーンなんて言われていた反戦家のジェーン・フォンダと当時W不倫関係にあったドナルド・サザーランド(おとなしく手を挙げて!そうだ、ジャック・バウアーの父親だ!)と共に、反戦活動として小劇団を作って、アメリカ軍基地を訪れて歌あり劇ありの所謂ヴォードヴィル劇を見せてました。そのドキュメンタリー。ここでの映像は主にハワイ、沖縄、岩国、フィリピンでの活動が主。しかしこれ以外にもアメリカ内の基地や日本の他の基地も訪れております。私が生まれる前の1971年の冬の事でした。日本にも来ていたんですが、日本政府はすんなり彼等を受け入れた訳ではなかった。観光ビザで入国しようとしていた彼等を入国拒否。後日、別のビザを発行した。多分アメリカ政府とも話し合ったんでしょうね。政府からしてみたら、彼等はテロリスト。もちろん武力行使する訳じゃないけれど。ジャック・バウアーの父がテロリスト扱いですよ!
他にもフォーク歌手のレン・チャンドラー、ポール・ムーニー、マイケル・アライモ、ピーター・ボイル、リタ・マーティソン等が出演。レン・チャンドラーはポリティカル・フォークシンガーとして、ブラックパンサーとかとも一緒に活動していた。その彼が日本に来た時には日本語でも歌っていた。リタ・マーティソンの歌も印象的でしたね。またアメリカでの資金集めの際には、ニーナ・シモンも歌いに来たらしいし、クインシー・ジョーンズも家を資金集めの為に開放して、その時には俳優のヴァン・ベーレンも来たらしい。

ちなみにタイトルの「FTA」とは表向きは「Free the Army(軍を解放せよ)」だが、本人達は「Fu** the Army(軍をぶっとばせ!)」と呼んでいたとの事。まあでも一言に軍と言っても、意味が広い。新人のペーペーだってもちろん軍人だし、コリン・パウエルみたいに陸軍大将となって軍全体を動かしてしまう人だって軍人。軍人の隅から隅までベトナム戦争への責任があるかと言えば、そうじゃないと思うんですよね。若い子達の中にはベトナム戦争への疑問を抱きながら戦場へ向かう子も多い。逆にアメリカがベトナム介入する事を大義だと思っている若者だって居る。そういう摩擦が見れたのが面白かった。白人の若い軍人達が日本の狭いアパートに集まってベトナム戦争の是非を討論していたり、逆に日本での公演中には2人の若い白人の青年が反戦を広めるジェーン・フォンダ等に疑問を感じて舞台で大声を上げて邪魔したりする。でもやっぱりこの映画で伝えたいのはジェーン・フォンダ等の意見なので、そんな若い2人の意見は消されてしまっていたようでした。彼等は舞台後でもいいからとことんあの2人と話しを聞いてあげるべきだったと思う。追い出してしまっただけなのが残念かな。

ポール・ムーニーとレン・チャンドラーが広島の原爆ドームを訪れていた映像もあった。またレン・チャンドラーは基地のすぐ外でプロテストする日本人の組合と共に歌を歌っていたりもする。70年代だなって思う。またムーニーとチャンドラーは日本滞在中に黒人の軍人を集めて討論会をしていた。中にはブラックパンサーを思わせる黒とグリーンと赤のジャケットにベレー帽をかぶった自分達で作った組織も存在していたようだ。

彼等は反戦を訴えると共に、軍の中に存在する人種差別や階級差別を上手く批判的なジョークとして軍人達の心に訴えていたと思います。軍みたいな所はこういう一般人が介入しないと中々...階級社会ですからね。でもこんな根性のある芸能人はもう居ないしね... 今だったらジュリア・ロバーツとかサンドラ・ブロックがこんな事をやると思います?やらないよね、絶対に。批判でつぶされるよね。でもジェーン・フォンダはこんなに自分の意見を貫いて批判も受けて、でも女優というキャリアではこの後にも何度もオスカーに受賞したりノミネートされたりを繰り返していた。その彼女の意見はともあれ...行動力と仕事ぷりはカッコいいわ。

ちなみにこの模様は「Sir! No Sir! (2005) - IMDb」というドキュメンタリー映画でも扱われているらしい。今度そっちも見ようと思う。

感想やあらすじはこちら

(4点/5点満点中:DVDにて鑑賞)