以前本で読んだこの映画の題材となった事件の事がずっと心のどこかで引っかかっていた。事件はジョージア州アトランタにて1979年から連日続いた黒人の子供たちばかりを狙った行方不明、および殺人だった。当初から犯人として浮かび上がったのが、23歳の黒人ウェイン・ウィリアムス。彼はアトランタのフリーの音楽プロデューサーであり、写真家だった。元々、性的に子供が好きだったのもあり、変人として近所では知られていた。1981年にウィリアムスが捕まるまで被害になった子供たちは31人。
この映画ではそのウィリアムスが捕まった1981年から4年経った頃に、音楽雑誌「Spin」の編集者の元に一本の電話が入る所から始まっている。電話はアトランタの行方不明となった子供たちの母親の団体の代表者。ウィリアムスが捕まったが、母親達は別の犯人が居ると信じているという電話だった。当初は音楽雑誌だし...という事で、編集者もそんなにやる気ではなかったけれど、自分の子供の事を思い、政治的な事を書きたがっていた野心的な記者を連れて、2人はアトランタに向かう。最初はその団体の母親達に話を聞く、やはり「Spin」の編集者達も半信半疑だったが、捜査を進めていくと、実にこの事件が深い事に気がついていくのです。
最初に書いたとおり、私はこの事件について凄く疑問を持っていた。その疑問を見事に解決してくれましたね。そしてこの映画のプロデューサーがルディ・ラングライスという黒人のプロデューサー。この事件について書いた「Spin」の記事の時には、彼が「Spin」のエクゼクティブ編集者。それを知ったのは、たまたま映画を見た後にその実際の記事を読んでみたいと、雑誌を検索していたら、その号の雑誌にクレジットされていたからです。で、この映画で「Spin」の編集者を演じたのが故グレゴリー・ハインズ。そのラングライスが彼のモデルなのかと思っていたら違うらしい。実際のモデルになったのがバリー・マイケル・クーパー。彼は後に「New Jack City / ニュー・ジャック・シティ (1991)」の脚本家になった人なのです。
この映画で「Spin」の2人が突き止めたように、KKKが絶対関与していたと私も信じている。確かにウェイン・ウィリアムスは何人かの子供を殺してしまったと思う。しかし全部じゃない。かなり実際の捜査でももう少しという所までいったが、KKKからは犯人が未だに出ていない。そしてその捜査状況の書類を勝手に処分したKKKの関係者でGBIとして捜査に加わっていたチャールズ・サンダース(映画の中では名前がジャック・ジョンソン)は処分されずに、未だにGBIで働いている。80年代なのに... いや彼の裁判は2005年なのに!
この事件に疑問を抱いている人は私だけでなく、作家のジェームス・ボールドウィンやトニ・ケイド・バンバーラなども本に書いている位。
ちなみに数年前にCNNがこの事件の特集を組んでいて、その中で犯人の1人(とわざと書いてみる)ウェイン・ウィリアムスにインタビューしてます。今でも探すとすぐに出てくるので、興味ある方はどうぞ。私は怖くて最後まで観れませんでした。こういうのに弱いのですよー。
この頃にちょうどアトランタで子供だったのが、私が大好きなダンジョン・ファミリー...アウトキャストとかシーローのグッディ・モブとかスリーピー・ブラウンとかなのです。何か感傷的になります。
この事件の真相を知ることが出来ない事が、アメリカの恐怖。
(4.5点/5点満点中:2/9/12にDVDにて鑑賞)