これは初夏ごろだったと思うけど、ツイッターのアメリカ在住のフォロワーさんに教えてもらった本の中に紹介されてました。そしてその中で一番見たくなった作品がこれです。
Blaxploitation Cinema: The Essential Reference Guide
- 作者: Josiah Howard
- 出版社/メーカー: Fab Pr
- 発売日: 2008/06/30
- メディア: ペーパーバック
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著者はイケメンで、インタビュー記事が面白いです。必見です。買って正解だった。インタビューはブラックスプロイテーションの監督にしてます。でも殆どが白人の映画監督。インタビューを受けた監督の中では「Penitentiary / 日本未公開 (1979)」のジャマー・ファナカと「TNT Jackson / TNTジャクソン (1975)」のシリオ・H・サンティアゴ以外はみんな白人の監督です。という訳でこの映画も白人監督。インタビュー記事を読んでいて引っかかったのが、この監督がこの映画きりでしかもこの映画が上映される前にこの業界を引退してしまったという事。そして「Sweet Sweetback's Baadasssss Song / スウィート・スウィートバック (1971)」が好きで、メルヴィン・ヴァン・ピープルスが彼のヒーローだと言っている点が気になったのです。あと「Dancing in September / TVショウ/夢と野望の間で (2000)」のレジー・ロック・バイスウッド監督が子役で出演しているのも気になった。彼はもうちょっと後に「The Brother from Another Planet / ブラザー・フロム・アナザー・プラネット (1984)」にもチョイ役で出てますけどね。
と言うわけで、この作品はハンフリー・ボガートも出演している1955年の「必死の逃亡者」の黒人版と言われている。3人の脱獄者が平和で割と裕福な牧師の黒人一家の家に押し入る。3人の脱獄者が白人、ヒスパニック、中国人(演じているのは日系人)と様々。白人の男がリーダーで3人は酷い事ばかりしていきます。白人のリーダーを演じたのがウィリアム・サンダーソン。彼の演技があまりに素晴らしすぎて、同情なんか出来ない程です。酷い男を見事に演じきってますね。この彼が演じた役を「映画史上最悪な差別男」と言う人が多い。「The Birth of a Nation / 國民の創生 (1915)」なんて目じゃないと。でも彼のそういう演技が、この映画をより現実的に見せている。そういう緊迫した場面だと、そういう汚い言葉ばかりでしょ?映画みたいに(って映画なんですけど)後からNAACPの攻撃やらが怖くて、正しい英語なんて使わないでしょ?まあこれでもかって位に差別用語を発する。お父さんに奴隷用語とか言わせてるからね。酷いよー、本当に。でもそれだけじゃないのが、この映画の面白さだと思う。この黒人一家のおばあちゃんと息子(これをバイスウッドが演じている)は、ブラックパワーの継承者。サンダーソンにも容赦なく、食いかかっていくのです。このおばあちゃんも、まあ口悪い。いや口悪いというより怖いもの知らず!でもそういう部分が、差別とは昔から戦ってきましたという事で毅然な態度に表れているんだと感じる。
しかしこの3人は女・子供にも容赦なし。映画を超えた映画ですね。今じゃ絶対に出来ないと思う。でも当時でもイギリスとスウェーデンは「ふざけるな!」と?上映禁止。今でもその両国では発禁になっております。でも日本ではなぜか公開。多分差別語の部分がやわらかく訳されてるんだと思います。
で最後ですよ。一家の大黒柱のお父さんが頑張るのですよ。それまでチョイチョイ弱かったお父さんが頑張るのですよ!!監督のインタビューに寄れば、演じたロバート・ジャッドはNG無しでいつもワンテイクだったそう。彼もサンダーソンと同じく名演技を見せています。名演技と言えば、一家の犬の演技も凄いね。クレジット見ると、監督の飼っている犬のようですが...
ちなみにポスターやジャケットで使われているサンダーソンとお父さんが上半身裸で取っ組み合いしているセクシーなシーンは残念ながらありませんので、ご了承の上ご購入くださいな。ボーナス映像も凄いです。予告編があるのですが、白人バージョンと黒人バージョンがある。白人バージョンには白人と黒人のラブシーンは無く、黒人のレイプシーンがある。黒人バージョンには黒人のナレーションでジャイブトーク。「ブラックパワー!」があって、黒人が抵抗しているシーンが多い。そして白人沢山やられる...みたいな。面白いので見比べて欲しい。
ブラックスプロイテーション映画として大正解!な映画です。
(5点満点:DVDにて鑑賞)