「崇高」とか「高潔」とか「威厳」とか「偉大」とか「気品」とか「高尚」とか...「芸術」とか「優秀」という難しくて美しい言葉を求めて映画を観ている方々には絶対におススメできない作品です。でも「最低」とか「爆笑」とか「下品」とか「お尻」とか「下ネタ」とか「う○ち」とか「クスリ」とか「ち○ち○」いう言葉でピンと来てしまう人々にはおススメ出来ます。この夏(って始まったばかりだけど)で一番笑った映画です。一緒に観ていた観客は悲鳴にも近い笑いで観てましたね。とにかく下品なので、女性は苦手だと思うのですが、その女性達(いちよう私も含めて)の方が爆笑していたように思いました。もうとにかく意味のない事に爆笑してしまうのです。あの笑いはナンだろうなーと思っていたのですが、学生時代に友達がバカな事して笑わせてくれた時に思わずその子を指差して「あははー、○○ちゃん、バカだねー!」と言ってお腹抱えて笑っているあの感覚に近い。スクリーンでバカやってる出演者達を「あははー、バカだねー」と指差して笑いたくなるのです。とは言えですよ... コメディアンとして大成功を収めているクリス・ロックが主役で制作。彼はいちよう政治的なコメディアンとしても知られている人物。その人がね、今になって小学生みたいな下ネタを繰り広げているのがビックリでした。でもそれが最高に面白かった。
今回はキャスティングを上手く使ってましたね。ダニー・グローバーの使い方が最高。彼のラストは最後のオチとして素晴らしい笑い。「Our Family Wedding / マイファミリー・ウェディング (2010)」のフォレスト・ウィッテカーの使い方とは大違い。ダニー・グローバーが演じたのは口悪いおじさん役。車椅子生活で、みんなに車椅子を引いて貰ってるのに、持ってる杖で殴ったりと最低。それだけじゃなくて、今までのダニー・グローバーの持つイメージも重なり合って、最後に最高に笑えるシーンを作り出してましたね。同じ事はトレイシー・モーガンにも言える。彼の飄々としたイメージが、ダニー・グローバーに虐められているのはイメージ通りで全く違和感が無くてついつい笑ってしまう。
ロレッタ・ディバインのお母さんも強烈。あのおっとりとした声と雰囲気で、最高にキツイ事言うから凄い。あれはお嫁さん役のレジーナ・ホールがものすごく可哀想に見えてきた。あれは若いお嫁さんにはキツイなー。
ゾーイ・サルダーニャが演じた女性エレインの恋人役のオスカーも笑える。おどおどしていて情けないんだけど、だけどエレインは好きになってしまうだろうなーという魅力もちゃんとあった。真っ裸のオスカーとエレインの弟ジェフを演じたコロンバス・ショートのあのシーンは下品だが、最高に笑ってしまった。オスカーは黒人と白人が逆転したバージョンの「Guess Who's Coming to Dinner / 招かれざる客 (1967)」。でもそのリメイク版で白人と黒人の立場が逆転しているリメイクの「Guess Who / ゲス・フー/招かれざる恋人 (2005)」ともちょっと違う。そういう所はクリス・ロックぽいかもしれない。
元々はイギリスの映画「ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式」のリメイク。そのオリジナルを観ている人々にはまあ評判悪い。でもそのオリジナルを観ているアメリカの映画評論の権力者ロジャー・エバートはこの映画を「ずっと笑いぱなし。『ハングオーバー!』以来に笑った映画。オリジナルより面白い」と評し、彼は4点満点中3.5点と高評価をつけている。また彼は「下品なシーンで笑ってしまった事は誇りに思っている訳でもないし、親からそういう風に育てられた訳じゃないけど、大爆笑してしまった」と書いている。そうなんです。笑ってしまうんです。だからと言って、「あんなシーンで笑ってしまった」という罪悪感は意外と無いかも。ああいう下品な部分で笑ってしまうのが、人間なのかもね。
何もないけど、笑いだけはしっかりある!
(4.25点/5点満点中:劇場にて鑑賞)