今、一番期待されている新人が、この映画に主役で出演しているドナルド・グローバーです。スパイク・リーとかも卒業しているニューヨーク大のドラマティックライティング科を卒業。そのニューヨーク大在学中に結成したのが「デリック・コメディ」。この映画の監督であり脚本家であり制作者でありパフォーマー達が在籍。グローバーは人気コメディシリーズの「30 Rocks」の脚本も書いていて、脚本協会賞ではノミネートもされた。そして黒人不足の(はい嫌味です)の「サタデー・ナイト・ライブ」ではオバマ大統領を演じられる黒人が居ないので、オーディションを受けたりしてる。そしてフェイスブックやツイッターでは、次期のスパイダーマンを探しているクリエイターのスタン・リー向けに「ドナルド・グローバーを次期スパイダーマンに!」にキャンペーンが開始。という訳で今一番ホットなエンタテイナーです。脚本や俳優だけでなく、スタンダップコメディのステージにも立ったり、音楽もやったりと実に多才で今風。
そのドナルド・グローバーが主役で脚本も書き、音楽も担当している作品です。この映画のプロットを読んだ時に「どうせ今時のつまらないニコロディオン系のティーンコメディ」だろうなーと勝手に思ってしまったのですが、とんでも無かった。とにかくドナルド・グローバーが魅力的。もちろん他のデリック・コメディのメンバーの共演者も魅力的ではあるのだけど、グローバーはやっぱり光ってますね。他のメンバーが上手いことグローバーの魅力を支えているのもあります。主役は小4の心を持った18歳の童貞3人衆。その中でグローバーが色んなキャラクターを演じてるのだけど、それが面白い。18歳にもなって車じゃなくって自転車に乗って、チョコレートミルクが好きで、彼女を作る事はキモい事だと思ってる。そして近所のミステリーを解決すべく「ミステリー・チーム」を結成する。親からは諦められていて、学校の人々からは相手にされてない。近所の小学生達からもバカにされてる。でもグロッサリーストアーのオタクな店員だけは味方。「Neato」とかダサい単語も使ったりと、もう最低。誰も「ミステリー・チーム」を相手にしてないが、たまたま通り掛かった小さな女の子が、ドナルド・グローバー演じるジェイソンに「殺された両親の犯人と盗まれたリングを探して欲しい」と言った時から話は一転。3人が犯人を捜すのだけど、色々とひと悶着。ジェイソンに依頼した女の子にはジェイソン達と同じ年頃のお姉ちゃん(ゴス系)が居て、また一転。「ミステリー・チーム」内でも揉め事があったりして、他の2人が「俺達、普通に秋から大学行くから」みたいに目覚めちゃう所とか面白かった。
というか、何が私にとって一番面白かったかと言うと... 「デリック・コメディ」もドナルド・グローバーだけが黒人。この映画の中でも彼と彼の両親以外は全員白人。昔は「トークン・ブラック」と呼ばれていた「無理矢理黒人一人に役を与える」は(スクリーム2のジェイダ・ピンケット=スミスとオマー・エプスみたいな)、このドナルド・グローバーの状況に当てはまらない。何しろ全然違和感が無い。白人の中に黒人が一人という状況で、彼が臆する事なく伸び伸びとその魅力を発してるのが面白かった。仲間を信頼している感じも伝わってきた。映画の中でも黒人を意識している訳でもないけれど、それを卑下したり無視したりしている訳じゃなくて、黒人・白人を超えた人間対人間という感じを受けましたね。今時の新人類。音楽だとキッド・カディとかB.o.B.と同じ雰囲気。好きな物も日本のアニメとかコンサバなアートやファッションだったり。この人たちには「黒い」とかいう人種の観念がナンセンスなんでしょうね。黒人である事にもちろん誇りを感じてはいるけれど、その前に自分個人の個性を大事にしてますね。黒人は分裂か共存と言われてきたけど、それよりも進んで「個人」という思想が出てきたなと。いや前からあった事でもあるのだけど。だから彼がスパイダーマンのキャンペーンを始めた時にも様々な人々から支えられたのかも?ふと思いました。あ、ちなみにスパイダーマンのオーディションはスタン・リーは黒人のスパイダーマンは考えてないとの事で(なんだと!!)、最終的にはこのように決まりかけているみたいです。
ちなみにドナルド・グローバーはダニー・グローバーとは無関係。本人も嫌っていうほど質問されてるでしょうね。うちのおっさーーん1号も「Hip Hop Honors」に出てきたドナルドを見て「ダニー・グローバーの息子?」って言ってましたっけ...
と、映画はそんな難しい事全く関係なく、またもやうん○ネタとかもあって、本当に小4レベルよ。本当にドナルド・グローバーはこれからの注目株です。一つだけ残念なのは男前じゃないという事。でも才能はある!
(4点/5点満点中:DVDにて鑑賞)