これは面白かった!インディ映画なんですが、アンジェラ・バセット、ダニー・グローバー、サミュエル・L・ジャクソンという大スターが出ています。サミュエル・L・ジャクソンは友情出演的な感じでクレジット無しですが、映画の要になる役柄を演じています。監督がなんとベテラン俳優のジャンカルロ・エスポジート。(パチパチ...拍手!)初期のスパイク・リー映画で常連の俳優さんですね。「School Daze / スクール・デイズ (1988)」とか「Mo' Better Blues / モ’・ベター・ブルース (1990)」とか。私はスパイク・リー映画ではないんですが、彼の「Go Tell It on the Mountain / 日本未公開 (1985)」という作品が好きです。そして「Fresh / フレッシュ (1994)」の役が強烈過ぎて、私はつい最近まで苦手意識を持っていた位ですよ。うちの子供の友達がこのエスポジートにそっくりなんです。ビックリする位。ま、そんな話しは置いておいて...
この映画はサウスカロライナの小さな町が舞台なのですが、架空みたいです。でもオープニングの「Welcome to Julia」というサイン等が出てくるモノクロの写真達が、この映画は作り話じゃないのかも?なんて思います。ラストも同じく実際にあった公民権運動の様子の写真がモノクロで登場します。物語が中々複雑に絡みます。登場人物も多かったりしますので、最初がちょっと大変。でも最初だけで後からは断然に面白くなります。南部独特の雰囲気とそのものの物語でした。この架空の町は、うちの夫の故郷かと思った位です。どこの南部の町も、大抵大きな工場が1つあってそこで働く人が殆ど。ある意味独占企業となっていて、上の人達はやりたい放題。我慢して働くしかない人達が殆ど。うちの夫の故郷も製紙工場が、それに当たります。工場のディスクワークの人達がある人種で占めていて、肉体労働が黒人。南部って未だにそうなんですよね。でも最近ではその肉体労働の枠にメキシコからの移民が増えていて、違法の移民が殆どで彼等は政府が決めている最低賃金以下で働かされている為、黒人は用が無くなり違法移民は低賃金で働くという、更に働く環境は悪くなっています。でも上層部は文句があるなら辞めてしまえ!という態度です。辞めたり首になったら、明日から働く所がありません。慢性的に雇用不足ですし。そういう南部の小さな町の状況が出てましたね。でも黒人でも専門職で小さな町で頑張っている人達は居ます。今回はその役をジャンカルロ・エスポジートが演じてました。いやこの役の人は頑張っているか分からないけど... ちょっと悪役なんですわ。あ、忘れていたけれど、そのエスポジートの妻役にニア・ロングまで出てました。豪華ですね。アンジェラ・バセットは小学生の先生なので、彼女も専門職でしたね。しかもサミュエル・L・ジャクソンが演じた公民権運動時代の活動家の息子役がダニー・グローバーで、その妻役。そうなのよ、ダニー・グローバーがサミュエル・L・ジャクソンの息子役なのよ!そんな設定、普通じゃ考えられないですよね。でもサミュエル演じる活動家は40年前に亡くなっているという設定なのであり得たんですね。しかし、この40年前に亡くなったという設定が、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を思い出させますよね。でも役名のファミリーネームが「マルコム」なんです。面白い。ダニー・グローバーの枯れた感じが役にピッタリ。いちよう昔の若い頃には自分も活動家として頑張っていたという人物です。
そしてそのマルコム家に絡んでくるのが、へロッドという白人家庭。ジャック・へロッドという人が昔は町の保安官として人気だったけれど、そのサミュエル演じる活動家の殺人犯を捕まえられなかった事で信頼を失い、今は町の工場の上層部として働いている設定。未だに平気で「Nワード」を口にする差別的な男でもある。そんな父に育てられたのが2人の息子。でも息子達はそんな父を見ていても差別的にはならずに、むしろそれが彼等を感傷的にした様子。その息子2人が黒人にどのように絡んでいくかも見ものです。でも黒人も白人の人達もジャック・へロッドに対して偏見の目で見ているんですよね。
ウータンクランのRZAも出演しています。彼はウータンの中で一番映画に向いてますね。「American Gangster / アメリカン・ギャングスター (2007)」でもそれは思いましたけれど。最近ラッパーから俳優に挑戦している中ではダントツ1番だと思います。期待しているのは私だけでなくて、ハリウッドも同じで続々と出演作が決まっているので楽しみですわ。
ルーサーというイラク戦争帰りの負傷兵を演じたのがこの映画がデビューのラルフ・グリーン(あの「Talk to Me / 日本未公開 (2007)」の主人公と同名)という人。この映画では片足を戦争で失った事になっていますが、彼も実際に足を失っています。なんでもニューヨークのブルックリン出身で、銃で失ったらしいです。でも、その後に不屈の精神でなんと身体障害者のアメリカ代表チームの一人としてアルペンスキーをしているそうです。黒人としては初の快挙なんですって。デビュー作品ですが良かったです。
タイトルが今風のタイラー・ペリー映画の二番煎じぽさがありますよね。私もそう思っていたんです。またクリスチャン系の映画なのかと... 全然違いましたね。タイトルで損してる気がします。小さな町の一角が「ゴスペル・ヒル」という設定なのです。
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(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)