SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
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Shaft / 黒いジャガー (1971) 1692本目

なぜジョン・シャフトは70年代に誕生し愛されたのか?『黒いジャガー

6/14からアメリカでは劇場公開、日本では配信開始予定の『Shaft / 日本未公開 (2019)』を前に、今なぜまたシャフトなのか?じっくり考えたいと思った。『Moonlight / ムーンライト (2016)』のような繊細な作品がオスカーを獲得し、そして『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』という待望されたヒーローが登場し興行的に成功したばかりなのに、なぜ今ブラックスプロイテーションをリブートするのだろう?と、制作決定ニュースを聞いて思った。ホームページでもシャフト関係全然アップしていないし、『Shaft / シャフト (2000)』のジョン・シングルトン監督が他界して非常に悲しいし、リブートはなぜ今なのか分からなかったけれど、でも旧作を見直すならば、今だと思った。1作目となる『Shaft / 黒いジャガー (1971)』は、ライフ誌の写真家と知られており、『The Learning Tree / 知恵の木 (1969)』の監督・脚本・制作を担当したゴードン・パークス監督作品。70年代流行したブラックスプロイテーションの先駆けとも言われている作品。アイザック・ヘイズが音楽を担当し、なんとアカデミー歌曲賞を受賞している。

42番街を歩くジョン・シャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)。盗品の時計を売っている男やデモに出くわしながらも、情報をもらうために靴磨きに行った。シャフトは私立探偵だったのだ。そして事務所に戻ると、見知らぬ男たちに襲われ格闘の末に男を窓から投げ捨てた。どうやらハーレムを仕切る大物ギャングのバンピー(モーゼス・ガン)が送り込んだ男たちで、バンピーに呼ばれているらしい。刑事(チャールズ・シオフィ)にこっぴどく絞られ、6ヶ月間銃を使わせないようにすると言われるが、48時間の猶予をもらった。バンピーの所に向かうと、娘が誘拐されたので探して欲しいという依頼を受けたのだった。ギャング同士のいざこざに巻き込まれ、ニューヨークの街で死闘の救出が始まる...

今なぜまたシャフトなのか?を考える前に、なぜこのオリジナルが70年代に誕生したのか?を紐解く方が答えに近づく気がした。先に書いたように、この作品はブラックスプロイテーションの先駆けとなり、この映画を機に増えていく。監督こそ黒人のゴードン・パークスだが、脚本は白人のアーネスト・タイディマン。そのタイディマンの同名の小説が原作である。黒人の私立探偵が、黒人のギャングのボスから助けを求められる。警察には相談出来ないからだ。そしてシャフトも若い黒人活動家グループの助けを借りることになる。黒人脚本家が書いたような筋書である。1968年、キング牧師が暗殺され、西海岸ではブラックパンサー党がコインテルプロで苦しみ闘争が激化していた頃。善も悪も黒人同士が結束して巨大なシステムに立ち向かい女性を救い、悪を出し抜きシャフトが高らかに笑う。まるで古くから伝わる黒人民話のようである。でもセリフの節々やセックスアピールで、やはり行き過ぎた黒人像を感じてしまう。今と当時の意識や価値観の差もあるのだろう。当時は、セックスアピールもしない言葉もしっかりした真面目な男は、誰にでも従うショーケースの中の男と呼ばれ、アンクル・トム(主人に従順)とまで呼ばれる始末なのだから。非暴力を訴えたキング牧師の命を銃弾が奪った後、「ブラックパワー」という言葉が持て囃されたことでも分かるように、黒人が欲したのがパワーだった。アカデミー賞を取った「黒いジャガーのテーマ」の歌詞に「シャフトは複雑な男で誰も理解しないけれど、奴の女だけは理解してくれている」にもあるように、人種関係なくモテモテで遊んでいるbad mother...なセックスシンボルという価値観だったのは仕方ないことかもしれない。そしてそれが当時の黒人男性にとっての自由でありパワーの象徴だったのかもしれない。そして、そんな男性像をたった29歳の新人俳優リチャード・ラウンドトゥリーが演じている。20代とは思えないほどの貫禄と余裕は強さを感じ、シャフトをよりセックスシンボルへとしている。そしてそのセックスアピールで感じるパワーこそ、若者たちを惹きつけた。だから劇中でも若者たちがシャフトの味方になり助ける。

危険を顧みず同胞の為に戦う男って誰だっけ?(シャフト!)だろ?

(5点満点:1692本目)
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Juanita / ライフ・アズ・ファニータ (2019) 1691本目

恐るべしベテラン女優アルフレ・ウッダード『ライフ・アズ・ファニータ』

アルフレ・ウッダード主演。最近だと、『Marvel ルーク・ケイジ』のマライア役と書けば分かりやすいかな?ベテラン女優の1人で、マーティン・リット監督の『クロスクリーク』(1983年)という作品で、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている実力派。これね、本当に凄いことなんですよ。80年代に黒人役者がアカデミー賞の主演・助演の演技部門でノミネートされたのはたった10人。そのうち女性は4人で、他3人は『The Color Purple / カラーパープル (1985)』でのノミネート。それから随所で、ウッダードは良い作品に出演している。賞レースに絡む作品から、娯楽作品、そしてカルト作品まで。私のNBA好きに火をつけた『Blue Chips / ハード・チェック (1994)』では、アンファニー・”ペニー”・ハーダウェイのお母さん役だし、『Miss Evers' Boys / ミス・エバーズ・ボーイズ〜黒人看護婦の苦悩 (1997)』は本当に好きな作品。これから公開の『Clemency / 日本未公開 (2019)』も楽しみで仕方ない!いい人から不埒な人まで幅広くて、大好きな女優さんの1人です。今回も、もちろん彼女の名前を見つけたから見た。シーラ・ウィリアムズ原作の『Dancing on the Edge of the Roof』をNetflixで映画化。

ファニータ(アルフレ・ウッダード)は結婚、妊娠、そして離婚を経験して今に至る。3人の子供たちと共にオハイオ州クリーブランドで生活。娘のバーティ(ジョーダン・ニア・エリザベス)はシングルマザーで、子育てをファニータに押し付けて夜遊び。ランディ(マーカス・ヘンダーソン)は良い子だけど、今は刑務所。ラショーン(アコーエ・ホワイト)もそのうち刑務所に入りそうだ。そんな状況の中、憧れの俳優ブレア・アンダーウッド(ブレア・アンダーウッド)との妄想と、親友のケイ=リタ(ラタンヤ・リチャードソン)との会話で何とか我慢している。けれど、今回ばかりは... 爆発しそうなファニータは、グレイハウンド(長距離バス)に乗って、モンタナ州にあるペーパームーンという所にたどり着く...

ウッダード買いで、何の情報も入れずに観ました。なんていうか、アルフレ・ウッダード的『How Stella Got Her Groove Back / ステラが恋に落ちて (1998)』でした。ブレア・アンダーウッドが、ブレア・アンダーウッド役で出てくるのが面白かった。しかし、ブレア・アンダーウッドって、やっぱりあの年代のセックスシンボルなんですね。60ドルの所、最高でした。原作読んだことないけれど、原作でもブレア・アンダーウッドなのかな?

そして、辿りついたモンタナで、ネイティブ・アメリカンの男性ジェスと知り合い、そして変化していくストーリー。正直、おばさんが(失礼!)が主人公のストーリーって、アピール出来る世代が同じおばさんだけになっちゃうと思うんですよね。若い子にはもちろん、同じ世代のおじさんたちもこのストーリーは興味ないと思う。でも男性と出会って変わっていくだけじゃないので、どの層が見ても好感度が高い筈。思い立ってグレイハウンドに乗るまでの過程とかもしっかり描かれていて、そして徐々にファニータが変わっていくのも良いですね。その過程をウッダードの演技力でしっかり見せるタイプの映画。ジェス役のアダム・ビーチも良かった。ネイティブアメリカンアフリカ系アメリカ人って、昔から密接に関わっているのに、映画ではあんまり描かれないので、今回はそれが少し見えたのも良かった。そして、ランディ役のマーカス・ヘンダーソン、どこかで名前を聞いた...と思ったら、『Get Out / ゲット・アウト (2017)』の直線走り男ウォルターくんではありませんか!そしてサミュエル・L・ジャクソンの嫁ラタンヤ・リチャードソンの親友ぷりもグッときました。良い役者が揃っていた。そして『S.W.A.T. / S.W.A.T. (2003)』のクラーク・ジョンソン監督作品。正直、こういう作品を作るとも思っていなかったので、新鮮でした。

アルフレ・ウッダードの実力を見せつけられました。長年、この業界で活躍し続ける人は、やっぱり凄い。恐るべしです!

(4点:1691本目)

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Little / 日本未公開 (2019) 1690本目

え?嘘でしょ???私、戻ってるぅうう~~『Little』

今やヒットメーカーとなったプロデューサーのウィル・パッカー。昔は、エロサスペンス映画を量産していたが、『Think Like A Man / 魔法の恋愛書 (2012)』辺りでコメディアンのケヴィン・ハートを起用してコメディ映画をもうちょっとで1億ドルに手が伸びそうな位の大ヒットさせてからは、コメディ映画を量産。『Ride Along / ライド・アロング ~相棒見習い~ (2014)』で念願の1億ドル突破。『Girls Trip / ガールズ・トリップ (2017)』の主演レジーナ・ホールが今回も主演。共演は、TVシリーズInsecure / インセキュアー (2016-Present)』が好評のイッサ・レイと、TVシリーズBlack-ish / 日本未放送 (2014-Present)』のマーサイ・マーティン。そう、ウィル・パッカーはお馴染みのキャスティングを起用しつつ、新しいスターと組み合わせていくのが上手い。今回もパッカー作品でお馴染みのレジーナ・ホールと、新しく起用されたイッサ・レイとマーサイ・マーティンを上手く組み合わせ、化学反応を起こしている。そして、マーサイ・マーティンは14歳にして、この映画のプロデューサーも務めており、現在最年少プロデューサーの記録となっている。

中学生のジョーダンは、真面目に勉強していたが、見た目は地味で性格もキッチリしていた為、クラスの目立つ女の子から嫌がせを受けていた。そんな姿を見た父は「将来ボスになれば、ああいう子たちを顎で使える」と励ます。その言葉通り、ジョーダン(レジーナ・ホール)の現在はアプリなどのコンピューターソフト関連の会社を経営している。アシスタントのエイプリール(イッサ・レイ)のことも顎で使い、会社ではみんなに恐れ、近づく者すら居なかった。会社の前でトラックでドーナツを売る店の娘の女の子スティービー(マーリー・テイラー)と言い争いになり、スティービーはジョーダンに向かって玩具の魔法の杖と共に「私と同じ位の女の子になりますように。そうしたらぶん殴ってやる」と願った。そして、次の朝、ジョーダンが目覚めると... 中学生ジョーダン(マーサイ・マーティン)に戻っていた...

最近、私はマンガを良く読む。その度に強く思う、「嗚呼、高校生の頃に戻って、こんなキラっキラした高校生活をまた経験したい」と。で、また思う。これがマンガだったら、私は次の日、「え?嘘でしょ???私、戻ってるぅうううううう~~」と、高校生の私に戻っている筈だと。でも、毎朝、高校生からウン十年経ったいつもの自分である。戻る訳がない!でも、映画もマンガもそのあり得ない事が起きてしまうから、ワクワクしてしまう。今回は、マーサイ・マーティンも出演している『Black-ish』の脚本家であるケニア・バリスもプロデューサーの1人で、マーサイを見て、トム・ハンクス主演の『ビック』のような作品を作りたいと思いついたそうだ。そのマーサイ・マーティンが上手い。表情とか大人の女を思わせて、レジーナ・ホール演じる大人のジョーダンままな所が本当に憎たらしい。でも、やっぱり子供な所もあって可愛い。その微妙なさじ加減が上手くて面白かった。『ビック』の時には、大人になってしまった主人公を理解し、そんな姿でも支えてくれたのは子供の親友だったが、今回は設定が逆なのもあるのか、大人のエイプリールが主人公を支える。大人のエイプリールが子供のジョーダンよりも子供ぽかったりするのも面白い。こういう年齢トリップ映画の面白さが出ていた。出演者3人ともにとても魅力的だし、ルーク・ジェームスの使い方も上手い。ジョーダンが開発したAlexaみたいなソフトの名前も面白かった。

夢がある。実際にはもちろん起きない。でも、映画やマンガなどの虚構の世界には、これ位の夢があったっていい。実際には無いからこそ、その虚構の世界で自分も子供に戻って、笑いながらフワっフワした気分で楽しめる。そんな映画だ。

(4.25点:1690本目)
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Black Memorabilia / 日本未公開 (2018) 1689本目

分からない世界『Black Memorabilia』

Tales from the Hood 2 / 日本未公開 (2018)』でも描かれた「ブラック・メモラビリア」。アンティークの黒人の人形だったり、置物だったり、看板だったり。バービー人形の黒人ではなく、黒人のステレオタイプを誇張し揶揄するタイプの人形。大抵は、それに酷い差別用語を使った名前が付けられていたりする。で、理解出来ないのが、暴力的・精神的に追い込むほど嫌いな人たちを人形や置物にして身の回りに置いておきたい気持ち。それが全く私には分からない。嫌いなものなんて、目に入れたくないと、私は思う。でも、この「ブラック・メモラビリア」は、割りと人気らしい。

アメリカに連れて来られ奴隷となった時から、黒人のイメージは歪められて擬人化され人形や看板や置物となり、それらがステレオタイプを助長し、差別に使用され「ブラック・メモラビリア」となった。それらが全て無くなったら?と思い、このドキュメンタリーを制作したのが、ボストンの芸術大学助教授しているチコ・コルバード監督。PBSにて放送。

まず監督は中国の石家荘市に飛ぶ。鉄鉱石業が盛んな所で、そこで「ニxー・ジョリー・バンク(陽気な黒xぼ貯金箱)」が製造されている。ジアンという女性の家族は代々、鉄鉱石を加工して商品にする小さな工場で働いている。そこで貯金箱を作りながら、「ブラック・リヴス・マター」のニュースを見ている。そして賃金はとても安い。...と最後まで続く。「へー、そうなんだー」と思いながら最後まで見たら、なんとこの中国の女性の部分、女優を使っている。「え?」ってなりました。なんでも製造工場が見つからなかったらしい。でも、中国のその辺りで今でも作られているのは確からしい。で、かなりひっくり返されましたよね。

で、次に出てくるのは白人女性ジョイ。彼女はアンティークのブローカーで、ブラック・メモラビリアだけでなく、クー・クラックス・クランKKK)のメモラビアも扱っている。夫(多分、劇中では紹介されていない...確か)と共に、車で全米を周り、アンティークのオークションやフリーマーケットを回っている。「ブラック・メモラビリア・ショー」というフリーマーケットが行われるくらいに需要があるのが驚いた。

その次は、「取り戻す」章。ブルックリンに住む黒人芸術家アレクサンドリア。彼女は、わざと顔に炭を塗ってブラックフェイスを作り、そして枕カバーを被った女の子になり(つまりブラックフェイスにKKKを思わせる白い布をかぶっている)、芸術作品としている。彼女はそうすることで「間違って使用された所有権を取り戻そうとしている」と語っている。はい、正直、私にはこの部分も意味分かりませんでした。彼女自身もやっていて不快だそうだ。やる方も見る方も不快なので、やる必要はないと思ったし、彼女の作品で考えが変わる人がいるとも思わなかった。

私には分からない価値観が存在する世界がある... とは思いました。とにかく、混乱する作品。私にはこの映画を観て、何かを引き起こす(Provoke)ことは難しいと感じました。

(3.5点:1689本目)
Black Memorabilia / 日本未公開 (2018)

Thriller / 日本未公開 (2018) 1688本目

ゲット・アウト』を超えられるのか?『Thriller』

Get Out / ゲット・アウト (2017)』を大きく当てたブラムハウス。第2のジョーダン・ピールを探そうと、ブラムハウスも積極的になっている感じを受ける。その役割に抜擢された一人が、ダラス・ジャクソン。ジョン・シングルトン監督がBETと組んだ『Rebel / 日本未放送 (2017-)』というTVシリーズでプロデューサーをしていた人だ。とはいえ、まだまだ情報が少なく、本当に出たばかりの新進監督である。そういう人にもチャンスを与えるブラムハウスだからこそ、『ゲット・アウト』みたいな作品も生まれたんだと実感する。

ロサンゼルスのコンプトン。中学生ながら大柄なチョンシーは、好きなリサから呼ばれ、2人で廃屋に入った。それは、リサが他の子どもたちに頼まれて仕組んだ罠だった。チョンシーは吃音症で子供たちからイジメられていたのだった。逃げるチョンシーをひつこく追う子供たち。2階で揉みくちゃになったところ、チョンシーはアマニを推してしまい、アマニは転落死してしまう。チョンシーはその場で逮捕。時を経て、リサ(ジェシカ・アレイン)やあの時の子供たちはコンプトン高校に通い、高校生活をエンジョイしていた。しかし、リサたちの周りで物騒なことが始まり、風の噂でチョンシー(ジェイソン・ウッズ)が刑務所から帰ってきたという噂が広まり...

ブラックムービーのゼロ世代辺りに沢山あったB級...どころかC級、Z級... の映画を思い出した。正直。無名な役者たちが出ていて、舞台をコンプトンにしただけの... と思ったら、最後に「ほほほーう、そう来ましたか」となった。とは言え、『ゲット・アウト』ばりの凄さとか面白さとか上手さは全くありませんので、ご安心を。これね、ミスキャストだと思うんですよね。主役のリサとかチョンシーが「誰?」っていう感じなんです。脇のアンドレ役のテクアン・リッチモンドとかジーナ訳のペイジ・ハードの方がまだ知られている。2人は、クリス・ロックのイケていない中学ー高校時代を描いた『Everybody Hates Chris / 日本未放送 (2005-2009)』にて共演している。リッチモンドクリス・ロックのイケていてモテモテの弟役で、ハードは確かクリス・ロックの家の隣の憧れの女の子だったと思う。という訳で、この2人がキャリアあるから、やっぱり上手いし、他と一緒だと浮いている(いや、浮いているのは彼ら2人以外なんだけど)。

で、高校生以外のキャスティングが微妙に豪華。『Fences / フェンス (2016)』とか『フォレスト・ガンプ』のシュリンプ・バッバで知られているマイケルティ・ウィリアムソンが刑事役で、デリックのママ役が『Coming to America / 星の王子ニューヨークへ行く (1988)』にてエディ・マーフィ演じるアキーム王子がNYに行く前に紹介された許嫁役のヴァネッサ・ベル・キャロウェイ、リサのママ役が『New Jack City / ニュー・ジャック・シティ (1991)』のウェズリー・スナイプスの軍団「キャッシュ・マネー・ブラザーズ」の女ギャング役だったヴァネッサ・ウィリアムス(Aの方。セデスじゃない方)だったりする。そしてウータン・クランのRZA先生がコンプトン高の校長先生!で、制作も担当。RZA先生は、監督作『Love Beats Rhymes / 愛・ビート・ライム (2017)』が良かったので、早く監督業に戻ってくださいまし!

とまあ、話題はあるホラー映画でした。

Thriller / 日本未公開 (2018)

映画秘宝7月号

映画秘宝7月号

本日5/21(火)発売の映画秘宝7月号に、先日他界したジョン・シングルトンの追悼文を寄稿しました。大好きな人たちの追悼文の執筆は私には辛すぎる、しかもこんな早くに書くとは思わなかった。でも誰かが書かないとならないならば、やっぱり自分が書きたい。ジョン・シングルトンなら尚更のこと。ジョン・シングルトンの功績や遺してくれたものを語り継ぎたい。その一心で書きました。毎回、ブログに追悼文を書いておりますが、今回はすべて映画秘宝7月号に込めました。

Boyz N The Hood / ボーイズ’ン・ザ・フッド (1991)』は、「映画秘宝EX 究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10 (洋泉社MOOK 映画秘宝EX)」で私の4位、先日の「映画秘宝 2019年 05 月号 [雑誌]」での「平成ブラックムービー・ベスト5」では、私の2位。この映画の成功をリアルタイムで感じたからこそ、今の私がいる。この映画を観れて・知れて良かった、光栄だった。私にとってかげがえのない作品となったから。

もちろん、シングルトン監督の他の作品にも私は影響されている。『Poetic Justice / ポエティック・ジャスティス/愛するということ (1993)』のジャネット・ジャクソンみたいに、ポップコーンをホットソースで食べるのも真似しているし、『Higher Learning / ハイヤー・ラーニング (1995)』の最後の言葉「unlearn」の意味を未だに模索中だ。無実や関係の無い人たちが殺されるニュースを見る度に、『Rosewood / ローズウッド (1997)』を思い出し、余計に胸が痛む。

ジョン・シングルトン監督、今まで心に残る色々な作品をありがとうございました。

映画秘宝7月号の追悼文を読んでくださいませ。よろしくお願いいたします。

映画秘宝 2019年 07 月号 [雑誌]

映画秘宝 2019年 07 月号 [雑誌]

Guava Island / Guava Island (2019) (VOD) 1687本目

美しく、そして分かりやすい『Guava Island』

ドナルド・グローヴァー aka チャイルディッシュ・ガンビーノ。今や、映画&TV系のエミー賞ゴールデングローブ賞、更には音楽系のグラミー賞にまで顔を出す、立派なスターの座を確立した人である。即ち、何かを発表すれば、すぐに話題になるということ。そこまでいくのは、中々難しく凄いことである。と、『Mystery Team / 日本未公開 (2009)』や『Donald Glover : Weirdo / 日本未公開 (2012)』の頃からリアルタイムで見て追ってきた私は目頭が熱くなる... と、軽--くマウンティングしながら始めました。

地球に大地や食物や生き物が神によって存在するようになり、愛も生まれたが逆の争いも生まれた。それらの要因からかけ離れた場所も神は創造した。それはとても小さな島で、世界の中心に位置しており、グアバ島と呼ばれていた。グアバ島は神のマジックに満ち溢れており、グアバ島だけで採れる食物や珍しい生き物も存在した。その1つがクレイワーム(粘土ミミズ)。その繭からは最高のブルーシルクが出来る。そのシルクを見れば誰もが愛してしまう。しかし愛が生まれれば、争いも起こる... 現代のグアバ島では、レッド・カーゴ(ノンソー・アノジー)がグアバ島の財政を握っており、彼によって支配されていた。ラジオDJをしながら、レッド・カーゴの貨物船で働くデニ(ダニー・グローヴァー)。デニの隣の家に住み、小さいころからデニの演奏を聴いていた幼馴染で恋人の͡コニ(リアーナ)もレッド・カーゴが経営する縫製工場で働いていた。島の人たちはデニが開催するフェスティバルの開催を楽しみにしていたが、レッド・カーゴが仕事を休ませる訳にはいかないと、フェスティバルを中止するように脅してくる...

と、プロット部分長くなりましたね。ちゃんと説明した方が良いかと思って最初の部分を長くしました。1時間位の短いミュージカル作品。こちらの作品も、ドナルド・グローヴァーといえば...となった最強のコンビであるヒロ・ムライが監督している。そして『Atlanta / アトランタ (2016-Present)』同様に、弟のステファン・グローヴァーが脚本担当。ストーリー自体は、兄ドナルドや他のメンバーと共にアイデアを出し合っている。

私、これ見て一番最初に浮かんだのが『Black Orpheus / 黒いオルフェ (1959)』でした。歌と舞台ブラジルと物語と俳優が美しさで一体化する「芸術」作品。この作品も美しく、神が特別に創造した島の独特の雰囲気を醸し出している。そして分かりやすい色使い。レッド=悪、ブルー=善。財政で支配することで人々をも支配し、そして搾取するのがレッド・カーゴ。誰もを魅了するブルーシルク、そしてブルーのカーニバル衣装をまとう人々。レッドとブルーは、アメリカの星条旗にも使われているが、アメリカ人ならすぐにレッド=共和党、ブルー=民主党と分かる。その構図が分かりやすい。エミー賞の受賞スピーチもそうだったが、これは彼なりのトランプ批判なのだと感じた。

そして歌わないのが残念だったが、リアーナを上手く使っている。控えめながら、あの鋭い眼差しが放つラストシーンのセリフは説得力に満ちていて印象に残った。

(4.5点:1687本目)

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