We can't take no more...
鑑賞後、あんなに高揚したのは久々だった。「良い映画を観た」という余韻と、「やってやるぜ、私もぉおおお」という高揚感。1%でも可能性が秘めていたラストだったからだろう。1980年のイギリス黒人の絶望感を描きながらも、観客には絶望感を残さない。「嗚呼、私はこういう映画が好きだったな」と、呼び起こしてくれた。そんな作品だ。
ブルー(ブリンズリー・フォード)とロニー(カール・ハウマン)は、街中を疾走していた。別の者たちは、デカいスピーカーを車に乗せたりと、サウンドシステムの用意をしていた。途中でブルーとロニーが合流。彼らはアイタル・ライオンのメンバーだ。ブルーは、両親に急かされ、学校をサボろうとする弟を学校に送り、人種差別的なボスがいる車修理の仕事をしていており、煩わしいことがたくさんあった。だが、すべては、個性豊かなアイタル・ライオンたちとともにサウンドシステムという楽しみがあるからだ。だがそれも社会が許してはくれず...
スティーヴ・マックイーン監督の『スモール・アックス』の『ラヴァーズ・ロック』でも描かれたサウンドシステム。『ラヴァーズ・ロック』はタイトル通り甘い恋愛がサウンドシステムと共に描かれていたが、こちらは80年代のイギリス社会そのものがサウンドシステムと共に描かれている。
私が気に入った点は、アイタル・ライオンのメンバーがそれぞれとても個性豊かに描かれていること。個性豊かってだけでなく、キャラクターの性格が尊重された描かれ方だったからだ。こういった個性豊かな群像劇は、キャラクターへ感じる愛しさゆえ、社会派ドラマでは確実に甘酸っぱさを残してくれる。
そして何より、若き才能が集まった感が物凄く強い。主演ブルーを演じたブリンズリー・フォードは、ASWADのメンバー。撮影監督のクリス・メンゲスは、その後『キリング・フィールド』と『ミッション』で2度もアカデミー撮影賞に輝いている。ビーフィー役のトレヴァー・レアードは、『スモール・アックス』の『エデュケーション』に出演。彼らが今まさに飛び立とうとしている瞬間に立ち会える。
本作は長年封印されていた。知る人が知る作品であって、私のように知ることができなかった者の方が多い。イギリスでもX指定で、アメリカでは論争の的になり得ると上映禁止。時代は変わり、40年以上も経った今、ブルーの叫びが永遠に心の中で続く。絶えることのない記憶となって鮮明に残るのだ。
(5点満点:9/1/22)
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