「Django Unchained / ジャンゴ 繋がれざる者 (2012)」の成功で、今年は奴隷作品ブームだと言われている。そして次のアカデミー賞で注目を集めそうなのが「Twelve Years a Slave / 日本未公開 (2013)」。あの「Roots / ルーツ (1977) (TV)」もTVミニシリーズで復活か?という噂まであるし、奴隷時代の物語の幾つかがTVにて放送される予定でもある。まさに「奴隷物語ブーム」が映画やテレビで起きている。
という事で、500年前の奴隷時代に戻るドキュメンタリーを。このドキュメンタリーの面白い所は、アメリカだけではなくカリビアンの国も追っている所。そしてイギリスにも飛んでいる。でもこの映画はアフロセントリックな人々へのインタビューが多い。アメリカで生まれアメリカ名を持っているが、アフリカ的な名前に改名した人たちばかり。そんな彼等のユニークで個性的な意見が聞ける。でも、アフリカでは奴隷貿易に黒人も関わっていたというのが通説だけど、1人の学者は「奴隷はヨーロピアンが生み出したものなので、黒人が黒人を奴隷にする事は無く、黒人が関わる事も無かった」と言い切っていた。そして、聖書の中に奴隷、そして奴隷の状況が肯定されているとも言っていた。そして問題は、黒人は文句は言うけど、投票はしないし、組織としてまとまっていないとも話していた。と、中々面白い意見も沢山あった。
ウィル・スミスがアメリカで全国区のスターとなったのが、TVシリーズ「The Fresh Prince of Bel-Air」。1人は、それを批判していた。ウィルが演じたのが、フィラデルフィアからベルエア(LAの高級住宅地)に住むおじの家に厄介になる青年。そのおじの息子カールトンは頭はよくていい学校に行っているけど、ダサい男。勉強が出来るカールトンはそのようにダサく描かれ、ウィルは勉強は出来ないけどストリートスマートでカッコ良く描かれていると。そういう構図はアメリカの黒人社会にありがちで、そういうメディアがステレオタイプに影響を与えていると。
そして引用される言葉は、マーカス・ガーベイやマルコムX(但しエル・ハジ・マリク・エル・シャバーズの名で)の言葉が多かった。その中で印象に残っているのが、やっぱりネルソン・マンデラでしたね。教育問題の所で「教育は世界を変える上でのもっとも重要な武器である」と。
若い期待出来る人コーナーで、クワメ・キルパトリックが登場していた。この映画の当時は、ヒップホップ市長といわれ、デトロイトの市長として将来が期待されていた。しかし今は刑務所内。スキャンダルまみれであります。
インタビューを受けている人たちが本当に個性的。先日見た「The Two Nations of Black America / 日本未公開 (1998)」にも出ていたクワンザの創設者マウラナ・カレンガも出演。私の気を引いたのが、学者で作家で詩人の女性アッシャー・ホイレス。見た目も熱っぽい所もグレース・ジョーンズ。
面白かったんだけど、ヘンリー・ルイス・ゲイツのみたく、もっと様々で豊かな意見も知りたかったかなー。一辺倒になり過ぎな点がね...
今日の写真はライターとして参加した期待の若手のM.K.・アサンテ。
(3.75点/5点満点中:12/8/13:DVDにて鑑賞)