SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*映画秘宝 9月号にて『ザ・ファイブ・ブラッズ』レビュー&キャスト、最新ブラックムービー&ドラマ10選、ブルース・リー『Be Water』レビューを寄稿。(7/21/20)
*ミュージック・マガジン 8月号「ブラック・ライヴズ・マター」特集の「映画ガイド」にて29作選出、11作を解説を寄稿。(7/20/20)
*FRIDAYデジタルにて「映画が描いてきた「Black Lives Matter」の深層」というコラムを寄稿。(6/18/20)
*映画秘宝 7月号にてスタンダップコメディと『ウォッチメン』について寄稿。(5/21/20)
*FRIDAYデジタルにて「新型コロナ ルポ・アメリカ南部のいま」というコラムを寄稿。(4/27/20)
*Cinra.netにて『黒い司法 0%からの奇跡』について寄稿。(2/28/20)
*FRIDAYデジタルにて「オバマ前大統領は映画プロデューサー」というコラムを寄稿。(2/4/20)
*『黒い司法 0%からの奇跡』にコメントをしました。(2/4/20)
*Cinra.netにて「映画界に進出したラッパー百科」というコラムを寄稿。(1/27/20)
*映画秘宝 3月号秘宝ベスト&トホホ10&ドラマ・オブ・ザ・イヤー2019に参加。(1/21/20)
*Cinemoreにて定期的に映画について書いております。
*映画秘宝 1月号にて『ルディ・レイ・ムーア』について寄稿&インタビュー翻訳手伝い。(11/20/19)
*サイゾー 7月号にて『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』についてコメント出しております。(6/18/19)
*映画秘宝 7月号にてジョン・シングルトン追悼記事を寄稿。(5/22/19)
*ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 6月号にて「ブラックムービーとアカデミー賞」の記事を寄稿。(5/7/19)
*ユリイカ5月号のスパイク・リー特集にて2本の記事を寄稿。(4/27/19)
過去記事

Harriet / 日本未公開 (2019) 1726本目

水の中を歩いて渡るモーゼ、ハリエット・タブマン物語『Harriet』

ハリエット・タブマン、いずれはアメリカの20ドル紙幣になるかもしれない歴史的な人物。その女性は、奴隷状態の人々を率いて約束の地まで連れていったモーゼと同じ状況でだったので、「モーゼ」と人々から呼ばれるようになった。この映画を観ると改めて思う。ハリエット・タブマンこそ、アメリカ20ドル紙幣に相応しいと。監督は、『Eve's Bayou / プレイヤー/死の祈り (1997)』や『Talk to Me / 日本未公開 (2007)』のカシー・レモンズ。私の大好きな監督の1人で、過小評価されている監督の1人だと思っている。ちなみにレモンズは女優でもあり、スパイク・リーの『School Daze / スクール・デイズ (1988)』に出ていたり、『Fear of a Black Hat / 日本未公開 (1994)』では大きな役だったり、あとは『羊たちの沈黙』などにも出ているベテラン女優です。今回、主役のハリエット・タブマンを演じたのが『Widows / ロスト・マネー 偽りの報酬 (2018)』に出演していたイギリス出身のシンシア・エリヴォ。

朝靄の中、ハリエット・タブマン(シンシア・エリヴォ)は地べたに寝転がって回想していた。妹たちは、別の家に売られ、離ればなれになった日の事を... 奴隷ではなく自由人ジョン・タブマン(ザッカリー・モモー)と結婚したハリエットたちの元に生まれてくる子供は、自由人と約束して欲しいとマスターに願いを言うが、ハリエットとその母親が奴隷なので、奴隷になると言われる。そのことを言われたハリエットは1人で泣くが、マスターの息子ギデオン・ブローデス(ジョー・アルウィン)に涙を拭われそうになったのを拒み、そして頬を叩かれる。そして、マスターが亡くなり、借金の多いブローデス家は、ハリエットを売り出す予定だと噂が立つ。その噂を聞いたハリエットは、ジョンや家族に別れを告げ、北に向かって走った...

この映画を観る前に予習として、買いぱなしで読んでいなかったアン・ペトリー著の「Harriet Tubman: Conductor on the Underground Railroad」を読みました。これがドンピシャだった。大体、この本の通りに話が進む。そしてこの本がとても読みやすく、そして面白い!アン・ペトリーって児童文学も執筆するので、変に難しい言葉を使わず、とても伝わりやすい言葉で書いてくれる天才。私が好きなタイプの作家でした。もっと色々と伝記を書いてもらいたかった!という訳で、映画に話を戻すと、この映画もドンピシャ!冒頭から、カシー・レモンズの才気煥発。『プレイヤー/死の祈り』でも見せたように、南部独特の土の匂いを感じさせる絵面なんです。緑に囲まれた広い大地からは、清々しい空気が感じられる筈なのに、何か妖しい淀んだ雰囲気を身にまとっている南部の空気。あれを凄く感じるんですよね。そして、ハリエット役のシンシア・エリヴォもドンピシャ!ルックスから声から体格から動きから演技力から、もうハリエット・タブマンを演じる為に生まれてきたとしか思えないほどにピッタリ。この上ない配役。唯一、演出し過ぎたかな?というのが、ハリエットと夫のジョン・タブマンの仲。アン・ペトリーの本ではもっと切ない&辛い。でもその辛さが余計にハリエットが奴隷たちの解放の手伝いに突き進めることになるので、あの切なさと辛さは必要だったかと...

ハリエット・タブマンで大事な部分って、もちろん奴隷たちを北部やカナダに逃がす「地下鉄道」の活躍だと思うんだけれど、それともう一つ、軍人だったというのも大事。時代が時代なので、女性のハリエットが正式な軍人だった訳ではないけれど、彼女は軍を率いて道を導いたり、彼女のフットワークとネットワークを生かして軍スパイみたいなこともしていた。今だったら確実に上官として働いていただろうし、色んなメダルを貰っていたことでしょう。

そしてアン・ペトリーの本を読みながら私が調べたことは、南北戦争の年。南北戦争は、1861-1865年。南北戦争は、ハリエットが(誕生年が1822年だとして)39-43歳の頃に起きている。ハリエット自身が逃亡したのが27歳の時なので、南北戦争が始まる12年前。南北戦争が始まる前の混乱とかも伝わる映画。

南部の黒人教会で、人々が歌う生の「Wade in the Water(水の中を歩く)」を聞いて、御世辞にも上手いとは思えなかったけれど、何かこみ上げるものを感じたことがある。彼らのかすれた声に、彼らの長い歴史の哀傷を感じた。「自由になりたい」と、愛する者とも別れなくてはならなかった時代。それでもハリエット・タブマンは、道なき道、そして水の中さえ歩いて、自分の手と足で道を開いた。あの時私が聞いた「Wade in the Water」は、ハリエットの哀傷も含まれていたから、何かこみ上げてきたのかもしれない... と、ふと思った。自由とは?その意味をかみしめる。

(4.5点:1726本目)
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