Home of the Brave / 勇者の家 (1949) 1638本目
リアリティで人間の本質を描き出す『勇者の家』
黒人映画の歴史を勉強していると、割とすぐに出てくるのがジェームス・エドワーズ。とても2枚目。しかもこの映画での彼の役割について、黒人映画の歴史の中では常に語られている。けれど、ポール・ロブソンやシドニー・ポワチエはすぐにピーンと来るんだけど、中々ピーンと来ない。ブラックムービーというより、戦争映画に沢山出ている。それか!私は戦争映画には明るくない。彼がどうして戦争映画ばかりに出ていたのか?恐らく、今日のこの映画のせいである。映画出演2本目にして、軍人役として強烈な印象を残しているからだ。ずっと観たくて、DVD/ブルーレイが出ていた事も知っていたけれど、中々手に出せず、やっと。
第2次世界大戦の中、とある島で日本兵士と遣り合い、その後記憶を失くし、そして歩けなくなったピーター・モス(ジェームス・エドワーズ)が居た。キャプテンのドクター(ジェフ・コーリー)が献身的に治療していた。ドクターはピーターの記憶を取り戻す為、記憶を失くした時に同じミッションに参加していた、ロビンソン中尉(ダグラス・ディック)やミンゴ(フランク・ラブジョイ)やT.J.(スティーヴ・ブロディ)に話しを聞いた。それでも状況が分からず、ドクターはピーターに記憶がある分の話をさせた。ピーターは志願して、ロビンソン中尉が率いる島の地図を描く偵察ミッションを任された。ロビンソン中尉、ミンゴ、T.J.、ピーター、そしてピーターとは同じ高校の親友フィンチ(ロイド・ブリッジス)が島に到着する...
って、とーーーっても簡単にプロット書きましたが、凄い複雑なドラマなんです。ピーターはたった一人の黒人という事で、小さな隊に摩擦が起きる。「黒人だけど志願して来たから大丈夫だろう」とか「黒人と一緒なんて嫌」という人や「え?何の事?」という人や「滅茶苦茶バスケ上手くて良い奴!」という人と、色々である。もうその時点で1949年の映画なのにリアリティに溢れているなーと感心しちゃいます。と、それだけじゃないのがこの映画の凄さ。話を進めていくと、人の本音が見えてくる。それはいつも差別を受ける側の黒人の本音も見え隠れする。「お前たちが俺たちをそうさせるのだ」と。ぐーーーーっときた台詞。でもその前に別の男が「じゃっ×」言っていたので、おい!と思ってしまいましたがね。面白いのが、日本兵が全く出て来なくて、それも不気味。しかも良く分からない鳥の鳴き声も不気味だし。
白人が悪いとか黒人が悪いとか、単純な事を描いていないのが奥深い。「黒人と一緒なんて嫌」と、無意識に差別している男も、怪我した時には背負って走ってくれる。それがこの映画の凄さ。この映画のプロデューサーが、スタンリー・クレイマー。監督としては『The Defiant Ones / 手錠のまゝの脱獄 (1958)』とか『Guess Who's Coming to Dinner / 招かれざる客 (1967)』とかありますよね。『招かれざる客』もこの映画と同じように本音が見え隠れしている作品ですが、あまり好きではない。でもこの映画は好き!最後が最高。そして、そりゃ、ジェームス・エドワーズが黒人映画の歴史の中で語れるわ!と。笑顔ですぐに人の懐に入るタイプではなく、どこか斜に構えている感じが良い。物語や台詞など、人間の本質を捉えている。リアリティとはこの事。
Home of the Brave / 勇者の家 (1949)(5点満点:1949本目)