SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

ジェイソンの痛快!生きざま大辞典『Portrait of Jason』

2015年に国立フィルム登録簿入りした1967年のドキュメンタリー映画。私が心から愛する『Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)』をDVD化してくれたマイルストーンからDVDが出ている。監督は50年代から80年代にかけて実験的で前衛的な映画を撮り続けたシャーリー・クラーク監督。この作品もタイトルのジェイソンがただただ語るという、今にして観ても実験的で前衛的な作品なのだ。所で、そのジェイソンとは、ジェイソン・ホリデー。生まれた時の名前はアーロン・ペイン。サンフランシスコでそのジェイソン・ホリデーという名を受けたとの事。

ジェイソン・ホリデーは大橋巨泉を思い出させるルックス。黒人でゲイ。ナイトクラブのパフォーマーで売春婦という肩書。彼が辿った人生は数奇なもので、それを彼自身がカメラの前で語っていく。映画はそれだけの事である。ジェイソン・ホリデーの与太話に1時間半付き合う事になるのだ。が、その人生は、誰もが通る道ばかりではなく、色んな人生経験をしているので、そんな話が面白い。お酒を飲みながらなので、途中かなり酔っている部分も多い。自分の事を「男のビッチ」と呼んでみたりもするし、「私は世界で一番惨めなの」と言ってみたりもする。「白人の男の子が大好きで仕方なかった」と正直にも話す。で、ここで改めて確認しておこう。これは1967年の映画だ。一般的な映画館ではシドニー・ポワチエの『In the Heat of the Night / 夜の大捜査線 (1967)』と『Guess Who's Coming to Dinner / 招かれざる客 (1967)』が上映されていた頃である。公民権運動では、映画『Loving / ラビング 愛という名前のふたり (2016)』で描かれたように異人種カップルのラヴィング夫妻がようやくアメリカで夫妻と認められ合法となった年。そんな時代に黒人でゲイのおっさんが泣きながらオーガズムを語ったり、「私は本物のレズビアンね」などと言ったりするのだ。これは中々凄い事なのだ。

実はこの映画には俳優のCarl Lee / カール・リーが大きく関わっている。リーはクラークの作品に出演した事があり、クラークにジェイソンを紹介したのはリーだったのだ。そしてこの映画の終盤でジェイソンに怒っているのは、恐らくカール・リーである。

男の生きざまとか女の生きざまなんて言いますが、これはそんな小さい枠をぶっ壊し、1人の人の生きざまを、これでもか!という位生々しく斬新に、それでいて率直にフィルムに残した作品なのである。

Portrait of Jason / 日本未公開 (1967)(4.75点:1563本目)