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Nat Turner: A Troublesome Property / 日本未公開 (2003) (TV) 1487本目

今年から来年にかけてもっとこの名前を書く事になる&聞く事になる筈であるナット・ターナー。というのも俳優ネイト・パーカーが監督したナット・ターナーの自伝映画『The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016)』がサンダンス映画祭で大賞と観客賞の2冠を達成し、今度のアカデミー賞でも本命と言われているからだ。ノミネートはもう確実と言っても過言ではない。そのナット・ターナーヴァージニア州に奴隷の子供として生まれた。30歳の時にそのヴァージニア州で奴隷蜂起(歴史では反乱と呼ばれてはいるが)を起こしたのである。その蜂起が大きな反響と影響を与えた。ナットが囚われ縛り首の刑に処させるまで、監獄の中でトーマス・R・グレイという白人に話したものが書籍になったのが「ナット・ターナーの告白(The Confessions of Nat Turner)」である。それを1960年代に再考されて白人作家ウィリアム・スタイロンによって書き直されたのが同じタイトル「ナット・ターナーの告白」。

という事で、同じナット・ターナーの告白でも時代によって捉われ方や扱われた方が違う。というのを追ったのがこの作品。撮ったのは、私の生涯ナンバーワン映画であろう(今の所)『Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)』のチャールズ・バーネット。もちろんナット・ターナーが映画や本で描写された事は、それだけじゃないので、他の作品でのナット・ターナーも追っている。例えば、黒人の奴隷廃止論者ウィリアム・ウェルズ・ブラウンのエッセイでのナット・ターナーや、黒人劇作家ランドルフエドモンズの舞台のナット・ターナー、そして「アンクル・トムの小屋」のハリエット・ビーチャー・ストウがナット・ターナーをモデルに書いたであろう「ドレッド」などについても触れている。面白いのが、それぞれの作品からの再現シーンがあって、それをそれぞれ別の俳優がナット・ターナーを演じているのが面白かった。例えば、トーマス・R・グレイの「ナット・ターナーの告白」からの再現シーンでナット・ターナーを演じたのが、チャールズ・バーネット監督の男ミューズであろうカール・ルンブリーが演じていたりする。そういう実験的な所がチャールズ・バーネット監督らしい面白さだなーと改めて思った。

そしてインタビューでは、なんとナット・ターナーの子孫まで受けている!更にはナット・ターナーの反乱で殺された白人の犠牲者の子孫も!そして上に書いたウィリアム・スタイロンの「ナット・ターナーの告白」では、なぜか白人女性とナット・ターナーの不倫関係が描写されており、発売当時には黒人の作家たちが大反発した。この作品の中では、ウィリアム・スタイロンも反発した作家たちの両者がインタビューに答えている。

で、ナット・ターナーの一番信頼できるソースとなりそうなのが、トーマス・R・グレイの「ナット・ターナーの告白」になるのだけど、それもグレイの主観などが含まれ、勝手に書いている部分もあろうだろうという研究も進んでいて、今の歴史研究の殆どがそうだけど、結局の所は謎なのだ。で、黒人歴史の一人者であるハーバード大学の教授ヘンリー・ルイス・ゲイツは「スタイロン版が嫌いなら、自分自身で(ナット・ターナーの物語を)書くしかない」と話している。そしてこの作品を観た者全員がそうする事(自分自身でナット・ターナーの物語を書く事)になるであろう...という風にこの作品を魅力的にそして啓発的に作り上げたチャールズ・バーネット監督、やっぱり大好き!!!

それにしても、ネイト・パーカーの映画、益々楽しみになってきた。ネイト・パーカーもこの映画観たんじゃないかな?だからタイトルはあの『The Birth of a Nation / 國民の創生 (1915) 』から取ったんでしょ?そうでしょ?あああぁああぁあああ、聞きたい!(久々の5点満点ーーーー!!!!!)
Nat Turner: A Troublesome Property / 日本未公開 (2003)