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The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016) 1503本目

「オスカー間違いなし!」とまで言われていた作品。少なくともオスカーのノミネーションは確実だと思われていた。なぜならサンダンス映画祭で大賞と観客賞を受賞。最近、この2冠を達成していると、オスカーでも認められ、ノミネーションは確実にされるからである。しかも、そのサンダンス映画祭にて、破格の価格で配給権が売れた。権利を獲得したフォックスサーチライトは、オスカーが一番狙える10月での公開を決定し、その時を待っていた。しかし... 監督・主演のネイト・パーカーの大学時代の事(前に書いたのでもう書かない。ここでご確認を)が明らかになり、一斉にネイト・パーカーがバッシングに遭い、興行成績も全く振るわないという異常事態になってしまった... 作品はサンダンス映画祭で公開された時と劇場公開では同じ作品なのに...

ナット・ターナーの反乱を描いた作品である。反乱を描いたというか、反乱にたどり着くまでを丁寧に書いている作品である。ナット・ターナーとは、奴隷制度時代の1800年に奴隷を使っていたヴァージニア州に生まれた。生まれながらにして奴隷だった男だ。奴隷が文字が読めるというだけでも罰せされた時代に、ナットは学に長け文字が読めた。運がいい事に、ナットを所有していた家の夫人がそれを怒るどころか、文字が読めるなら「一番の本を読みなさい」と聖書を渡す。良い年ごろになったナットは黒人奴隷たちを掘っ建て小屋に集めて説教をしていた。ナットを所有していた家は、経済的にあまり上手くいっておらず、彼らはナットを利用した。ナットを黒人奴隷用の牧師として各家に出向かせ、お金を稼いでいたのだった。しかしその間に、他の家では惨い仕打ちを黒人奴隷にしており、それを目撃して心を痛めていくナット。そしてナットの身にも悲劇が起きてしまう。愛する妻が乱暴されて...

という物語なんですね。この映画は多少脚色している。一番特徴が出ている所は、やはりロマンチックな役が得意なネイト・パーカーなので、監督でもそれを遺憾なく発揮している。ナットと妻チェリーの描写は、とにかく胸がキュンキュンする。後は、前にも書いたけれどナット・ターナーの真実は誰にも分からない。なにせ唯一の自伝的な本は他人の手によって書かれた物で、しかも反乱後に書かれた物故に、かなり著者の心情が含まれていると考えられているからだ。なのでこれはネイト・パーカーと脚本家が描いたナット・ターナーの物語である。そのパーカーと脚本家は、大学時代に女性に乱暴した罪を問われ裁判で無実となったが、この映画でナットは妻や他の女性が乱暴された事で反乱に向かわせる。これはとても興味深い事なのではないか。映画のボイコットなどのニュースよりも、ここの部分をもっと論議すべきなのだ。

冒頭のアフリカの土着的スピリチュアルな儀式やナット・ターナーの白塗りなど、ナット・ターナーが実際に反乱の日を神からのインスピレーションで決めたりとスピリチュアルな人だったという事が垣間見られる描写だ。ちなみに私が観ていた劇場では何回も感嘆する観客の声「Good Lord...」が漏れて聞こえてきた。その言葉は劇中でもナットが妻となる女性を観て思わず言ってしまった言葉である。人々をスピリチュアルにさせてしまう映画だったようにも思える。

「リベンジだ」とハッキリ言ってナットは斧を手にしている。このシークエンスは最高にカッコいいと思った。そのカッコ良さが心に刺さった。しかしこれは、見る側の人によって全く違う感情を呼び起こす事になる。こんなにハッキリと言ってしまった映画を観た事ない気がするのだ。もしかしたら過去に映画でもあったかもしれないが、こんなにそれまでの奴隷400年の歴史の憎しみを生々しく感じた事は無かった。それ故にまたふと最初に書いた事を思い出す。この作品はサンダンス映画祭でも劇場でも同じ作品を流しているのに...と。
(5点満点)
The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016)