Big Words / 日本未公開 (2013) 1344本目
I'm takin ya back come follow me on a journey to see a for real MC...
ブラック・ムーンの「How Many MC's」の冒頭。いきなりブラック・ムーンから始まるんですよ!!
そんなブラック・ムーンの名曲「How Many MC's」を朝からガールフレンドに小言を言われながらもスクラッチするのがテリー(ダリエン・シルズ=エヴァンス)。しかし流れてきたラジオから自分のビートが聞こえてきた。盗作だ!と悔しがるテリー。2008年11月4日のニューヨーク。町は大統領選で活気に満ち溢れていた。そんな日にコンピューター修理のジョン(ドリアン・ミシック)は首になってしまう。仕事着のまま、ストリップクラブでビールで腐るジョン。そして出版会社に務めるジェームス(ベンガ・アキナベ)は、若いアシスタントのベン(ザッカリー・ブース)から本を書きたいと聞かされる。90年代にベンの父はヒップホップ系のレコードレーベルを設立していたので、父と90年代のヒップホップ黄金時代を書きたいと相談され、一枚のフライヤーを渡される。ジェームスは驚く。そこには自分の姿があった。そうジェームスは昔ベンの父のレコードレーベルの所属していた「DLP(Down Low Poets)」のメンバーの一人であった。あれから時を経て、DLPのメンバーはそれぞれ別の道を歩んでいた。しかし、大統領選で時代が変わろうとしているその日に、またDLPの3人の運命が交差していく...
この映画のDLPとは、ジョンのビック・ワーズ(MC)とジェームスのジェイビー・ザ・マック(MC)とテリーのDJマリク(DJ)の3人からなるトリオ。デ・ラ・ソウルと同じフォーメーションだね。90年代に活動していた頃は、Das EFXやHome Baseとツアーしたり、Fu-Schnickensと喧嘩になって、レッドマンの車パスファインダーに隠れたりwwwした、人気のあったグループ。けれど今は3人共に会ってもいない。しかもジョンとジェームスは従兄弟同士なのに。まあその辺の事を映画では徐々に明らかにしていくんですね。そこまで上り詰めても成功させるのは中々難しい。才能があっても。その状況をこの映画では実に甘酸っぱく描いております。父のことを書きたいと思っていたベンの心境もね、事実を知った時にはかなり切なくなるね。父のことを尊敬していただろうし。DJマリクだけがヒップホップを続けているのもなんだか切ないんだよねー。マリクはアレしか出来ないだろう不器用さも愛おしい。それを理解しているあの彼女が滅茶苦茶男前だ!
でもね、成功できなかった事を湿っぽくは描いていない。そこが非常ーに気に入った。テリーが彼女にスーツの話しされるんだけど、「俺はヒップホップを作ってるんだぜ!スーツなんかいるかよ!」って怒ったりする。台詞もね、実にヒップホップ。グールーの名言を取り入れたり、ジョンが熱くデ・ラ・ソウルの「Potholes In My Lawn」を語ったり。で、ジョンが途中で若いシンガー志望の女性アニー(ヤヤ・ダコスタ)と出会って、DLPについて仕方なく話すんだけど、DLPが活躍していた90年代はそうでもなかったんだけど、今ではダウン・ロウというと同性愛者を隠しているという意味合いが非常に強く、アニーに3人はそういう関係だったの?と聞かれてしまう。しかも3人のうちの一人が本当に同性愛者だからややっこしいwww。
そしてもちろん音楽ね。ミスター・レン(Mr. Len)が担当しているんですよ。スクラッチとかも彼のもの。
さらにはオバマ大統領が誕生した2008/11/4を舞台にしているのが面白いね。人々の浮かれ具合が分かる。また一つのドラマ。
感想ではヒップホップ好きなら死ぬまでに見るべきと煽って書いたけど、決して大げさじゃないからね。もしこの映画分かんね、とかそこまで面白いか?と思ったとしたら、それは君のヒップホップIQの問題!
という訳で日にちが前後してしまったのは、映画秘宝さんで最初に書いたからです。映画秘宝5月号は絶賛発売中なりよ!
(5点満点:2/24/15:ストリーミングにて鑑賞)