Take a Giant Step / 青い課外受業 (1959) 949本目
これのDVDが去年発売されたので、即効で買いました。でも見ずに今まで伸ばしてしまいましたが... これで映画年初めです。
コネチカットのハートフォードが舞台。そこの白人移住地区に暮らしているのが、黒人一家のスコット家。父のレムは銀行で働いていて成功した。一人息子のスペンスは白人ばかりが通う高校に入っている。スコット家には黒人のメイドも居る。というのも、年老いたお婆ちゃんが居るから。お婆ちゃんは階段の上り下りも医者から禁止されているが、誰も居ない時にはビールを飲んだりする。このお婆ちゃんは母方のお婆ちゃん。なのでミセス・スコットではない。しかしスペンスの友人達は彼女を間違えていつも「ミセス・スコット」と呼んでしまう。まあその事もあって、お婆ちゃんはスペンスの友人達は、実際にはスペンスに馴染んでいない事を察するのです。オープニングから、スペンスは学校で先生と対立して教室を出て行く所から始まる。徐々に明らかになったのは、社会科の授業で先生と南北戦争と奴隷についての見解の違いがあったという事。そしてクラスのみんなはそれで笑った。黒人が1人しかいない学校なので、スペンスは変な質問攻めにあったりしてきた。でも子供の頃からそれに慣れてしまっているのもある。しかし、好きだった女の子の父親がはっきりと「黒人だから好きじゃない」と言われた事で、その今までのストレスや疑問が爆発してしまうのです。家出して、黒人街に行く。そこではみんなと同化できると思っていたのに、違った。厳しい現実が待っていたのです。
W・E・B・デュボイスが言っていたように、黒人には2重の意識がある。黒人であるというアイデンティティと、白人社会に同化していくという社会性の2重の意識が存在する。その2重の意識に苛まれたのが、この映画の主人公であるスペンスである。白人社会ではいつも自分が「他の黒人とは違う」という事を証明していかないといけない。本当は、同じ黒人なんて居ないし、他の黒人が悪い奴ばかりじゃないのも、黒人の意識の中で十分に分かっている。どこか自分を切り離して、白人社会に認めさせようという努力をしなくてはならない。お母さんもお父さんも、白人社会に認められようと必死で、スペンスにも「南部だったらリンチされていた」と我慢するように促す。しかし、お婆ちゃんと黒人のメイドのクリスティーンは、主に黒人社会で生活してきたので、スペンスは「自尊心が強すぎる」と言うのです。
と、まあ面白いよね。邦題は青春エロ映画ぽいけど。確かにスペンスは白人ばかりの中で育ってしまったので、彼女が欲しくても相手の親に反対されて出来ずに童貞で溜まり過ぎている。なので「青い体験」とか「青い珊瑚礁」とは訳が違う。
スペンスを演じたのが、後に「I Can See Clearly Now」をヒットさせたジョニー・ナッシュ。ちなみにこの映画の主人公を探している時に、プロデューサーが美術学校に出掛けて見つけたのがビリー・ディ・ウィリアムス。しかし映画には出演はしていない。そのプロデューサーは別の作品でビリー・ディを使った。そして黒人のメイドを演じたのがルビー・ディ。お婆ちゃんを演じたのがエステル・ヘムズリー。彼女はこの演技でゴールデン・グローブ賞にノミネート。ボー・リチャーズとフレデリック・オニールが両親役。とまあ凄い顔ぶれ。お婆ちゃんは凄いです。台詞もびっくり「私もポーランド人は嫌いだね!ひょっとしたらヒットラーは正しかったかもね!」なんて言います。
で、元々この物語は劇でした。書いたのは、黒人の戯曲家ルイス・S・ペーターソン。ぺターソンの故郷がこの映画の舞台になったコネチカット。そしてブロードウェイで上演された時にスペンスを演じたのが、まだまだ無名だったルイ・ゴセット・ジュニアでした。
(4.5点/5点満点中:DVDにて鑑賞)