Queen / クイーン (1993) 894本目
こちらはアレックス・ヘイリーの本が原作でTVの歴史を刻んだ「Roots / ルーツ (1977)」と「Roots: The Next Generations / ROOTS/ルーツ2 (1979)」に続いての作品。「ルーツ」は2作品共にヘイリーのアフリカから奴隷として連れて来られたクンタ・キンテからの母方の家族の歴史を追い続けた作品でしたが、こちらはヘイリーの父方のお婆ちゃんを描いた作品。タイトルの「クイーン」とはお婆ちゃんの名前。クイーンの出生からずーっとクイーンだけを追っていきます。なので「ルーツ」みたいな壮大なテーマではないのですが、このクイーンが生まれ育った時代が実に壮絶。
クイーンはまだ奴隷制度があった時代1841年に生まれている。お母さんは奴隷の娘イースター。お父さんはイースターが世話係りをしていた、プランテーションを持つ白人主人の息子ジェームス。この映画では2人はお互いに惹かれあっていたが、身分の違いで叶わぬ恋として描かれている。クイーンの父であるジェームスは別の白人女性と結婚。そして彼女も後に女の子を出産。その生まれてきた世話係として、クイーンは母屋に引き取られていく。でもクイーンはジェームスが父親である事を教えてもらっていなかった。娘2人がティーンになった頃に南北戦争が勃発。ジェームスは南部軍として軍に入隊。戦争によって男の人が居なくなり、農作物などにも支障が出てくる。そして南部が負けて、奴隷が解放。ジェームスの奴隷もみんな離れていき、農作業が出来なくなる。ジェームスも戦争から戻るが負傷していた。クイーンだけはジェームスの所に残るが、ある事件をきっかけにジェームスの妻と喧嘩し、とうとう家を出る。彷徨いながらたどり着いた町で、クイーンと同じように色の白いアリスという女性に出会う。クイーンもパッシング(黒人である事を隠して白人として社会に溶け込む)をするが、後にバレて町を出て行く。そして見もボロボロでたどり着いた所が黒人の教会で、泣きながら助けてくれと言うけれど、白人にしか見えないクイーンに手を差し伸べる者が中々居なかった。しかし一人の黒人女性が立ち上がって助ける事になった。って全部書いちゃいそう...
って、ざっと書いただけでも壮絶でしょ?この先にもまだまだ壮絶な人生が待っているのです。そのクイーンをティーンの頃から演じたのがハリ・ベリー。お見事でした。でも彼女の南部訛りだけは全然南部の人には聞こえないし、無理感が半端ない。南部女性の訛りを耳で知っている私には、笑っちゃうしかなかったです。南部訛りはシシリー・タイソンの方が上手い。彼女ニューヨーク出身なのに!とはいえ、タイソンの家族も多分元々は南部からニューヨークに渡った人だろうから、彼女も耳で知ってるんでしょうね。そうなるとハリちゃんはお母さんが白人だから、そういう訳にはいかなかった。身近ではなかったんでしょうね。でも南部訛り以外は完璧。このクイーンはいちよう「ルーツ」の続編の方にも出てくる。その時にはルビー・ディが演じていた。優しくて理解のあるお母さん。でも最後の方にはかなりボケてたんですよね。その理由も、この映画ではハッキリと描かれている。
所で感想を書いている時に、クイーンはいつ亡くなったんだろう?とふと思って調べたけど、出てこなかった。ヘイリーのお爺ちゃんでクイーンの夫になるアレックは1918年に亡くなっているらしい。でもクイーンは分からなかった。でも写真を見つけた。このリンクのブログを書いている女性は13年間自分のルーツをリサーチしている人で、なんとアレックス・ヘイリーとも親戚関係になる人。クイーンの別の息子アブナーが彼女の大伯母と結婚しているとの事。記事も凄いですよ。ジェームスは映画のようなハンサムではなかったのか...それだけは残念。
アレックス・ヘイリーが実際に本に書いたのか分からないけど、この映画での台詞はアレックス・ヘイリーがラブレター職人だったことが伺える台詞も多い。クイーンがデビットという男性と恋に落ちて、一夜を共にした時に「あなたの愛で死ぬかと思った」なんて言うんです。映画のラストの台詞も可愛い。白馬の王子を夢見ていたクイーンが言う最後の台詞に注目。
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)