Roots / ルーツ (1977) (TV) 889本目
これをまた観たい。でも観るならじっくりと一気に観たい。なら夏休み中しかないでしょ?という事で、やっと今年の夏にようやく実現しました。昔は70ドル位したDVDセットも20ドル以下ですよ。というか、アマゾン変動するでしょ?一番安い時を見計らって買いました。ここから長くなるよ。
そしたらさー、もうルーツ・ジャンキー。観てないともうダメ。多分寝言で「クンタ・キンテ、マンディンカの勇敢な戦士!コはバイオリン、カンビィ・ボロンゴは川の意味というのを娘のキジーに教えた。そのキジーは息子のチキン・ジョージに教えた」と言っていると思う。クンタ・キンテのカンビィ・ボロンゴのエピソードで号泣。というか、このシリーズはエピソード毎に必ず一回は号泣ポイントがありますね。6エピソードなので(TV放送は8エピソード)、最低6回泣きました。エピソード5以外は、かなりソープオペラ調ではあると思う。それには理由がある。5以外は全員白人の監督が担当。よってエピソードの1の奴隷船の話だって、なぜか船長は割りとヒロイックに描かれているのです。原作では殆ど出てこない。そしてエピソード5を担当したのが、ギルバード・モーゼス。私の大好きなブラックプロイテーションの1つ「Willie Dynamite / 日本未公開 (1974)」の監督。このエピソードの黒人の描かれ方が他とは別なのも面白いと思う。このシリーズ全体的にかなり感傷的に描かれているが、それでもこのエピソードだけはただ単に被害者としては終わらせていない。チキン・ジョージの息子トムが南部軍の軍人でしかも差別主義者の男をどうするか?というのも面白かった。そのトムと知り合った貧乏な白人青年の存在も面白い。ヒーローじゃない友人としての白人の存在がエピソード5にはありました。そして裏切り者だっていた。ナット・ターナーは出てこないけど、伝説として語られているのも面白い。今だったら多分全シリーズが黒人監督によって描かれる事になると思う。そうじゃなかったら、スパイク・リーが黙ってないと思うし。でもそうしたらそうしたで、今度は白人の観客が離れてしまって、このような歴史を変えてしまうような事にもなっていなかったかも?とも思う。
この作品については、この前お邪魔した得三さんでも話しましたが、当時は本当ーーーに凄かったのです。放送が始まるとどうせ人が入らないから店を閉めたり、逆にテレビがあるお店では「店内でルーツ放送中です」という張り紙をしたり、大学ではこの番組を見ると単位を貰える所まであったそう。視聴率は、最終回は未だに歴代の中で3位の51%。エミー賞は全部で36のノミネーション。多分もうこんな感じの出来事は起きないんじゃないかな?と思う。このテレビミニシリーズが出来たいきさつも実は面白い。ルビー・ディとオシー・デイビス夫婦が、この作品のプロデューサーとなるデビット・L・ウォルパーと食事をした。その時にルビーが「私の友達が今面白い本を出している」とアレックス・ヘイリーを紹介した。そしてアレックス・ヘイリーは、本の内容をウォルパーに話し始めた。ヘイリーの話も上手かった事もあって、ウォルパーはすぐにこの物語に惹かれ、本を買った。まさか、ルビー・ディとオシー・デイビスが一役買っていたとは!!
そもそもこの作品以前は、アフリカ系アメリカ人の間ですら、アフリカという国のイメージが悪かった。そのアフリカのイメージを改善するのにも役立ったと言われている。そして奴隷という制度を黒人側から描いた作品でもある。今になってこの物語の正確性が問われているけれど、そんなの取るに足らない事。クンタ・キンテはもしかしたらアレックス・ヘイリーの本当の祖先じゃないかもしれない。この壮大なる物語は人々を大きく変えた。黒人の歴史にとっても大きな一歩だったし、テレビ界にとっても大きな歴史の1つになっている。俳優としてはこの作品に出れた事は一生の自慢だと思う。だからこそ次のネクスト・ジェネレーションではその俳優人の顔ぶれがもっと派手になって、凄い事になっている。それにしてもこのシリーズ一番の貢献者はルイス・ゴセット・ジュニアでしょう!彼の演じたフィドラーは最高である。これこそ名演技。素晴らしい。OJ・シンプソンが走る姿は凄いね。速いし驚くほどに腰を落としてるね。後はジ=ツ・カンブカがカッコイイ。あの役にぴったり。若きクンタ・キンテを演じたレヴァー・バートン、そして年配のクンタ・キンテを演じたジョン・エイモスも良いし、チキン・ジョージを演じたベン・ヴァーレンは暗いトーンを一気に明るくするゲームチェンジャーという感じで良い。女性はマッジ・シンクレアが素敵でしたね。強さとユーモアを持ち合わせた最高の女性。オリビア・コールはお淑やかながら芯の強さのある女性でしたね。チキン・ジョージに「行きなさい」というシーンは感動した。「私が愛した男性は自由人チキン・ジョージよ」って。自分だったそんな事言えるかどうか...
このシリーズではクンタ・キンテがガンビアから連れてこられ、子孫を作り、1865年に南北戦争が終結し、クンタ・キンテの子孫が奴隷から解放されるまでが描かれている。上でも書いた通り、アレックス・ヘイリーが話上手だったというのは、やっぱり祖先から受け継がれたものでしょうね。アメリカに住む元奴隷の子孫達(という事で移民は除きます)の殆どが自分達の祖先がアフリカのどこから来たのか全く知らない人が殆ど。これでも描かれているように奴隷たちはあっちこっちと移動させられた事もあって、自分のルーツを探すのは困難。日本みたいに戸籍がある訳でもないのもある。うちの夫ももちろん知らない。おじいちゃんが隣の州出身というのを知っている位。アレックス・ヘイリーのように話を聞けた人々は少ないと思う。だからこそ、アレックス・ヘイリーが作り上げたクンタ・キンテ像は多分本当にああいう感じで誇り高きマンディンカだったんだろうと、容易に想像出来ます。話し上手なヘイリーにはグリオの才能が宿っていたのでしょうね。現代のグリオですよ。
にしてもデイブ・シャペルが自身の番組でこの作品のコントやったのだけど、それはそれで面白かった。
(5点満点:DVDにて鑑賞)