SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

The Sky Is Gray / 日本未公開 (1980) (TV) 690本目

アメリカの傑作ショートストーリーを集めて作ったショートムービーで、PBSで放送されたテレビ映画です。コレクションの一作に選ばれたのがアーネスト・J・ゲインズ。南部を舞台に書く小説が有名です。ドン・チードル主演でテレビ映画となった「A Lesson Before Dying / ジェファーソン/冤罪の死刑囚 (1999)」の原作本はオプラ・ウィンフリーの最高視聴率を誇る番組で発表する「ブック・クラブ」に選出してベストセラーになった。この映画の舞台もやはりゲインズが生まれ育った1940年代のルイジアナ。人里離れた村で農業をやっている家族。しかし父親は居ない。母と叔母で農業を切り盛りしている。主役となる8歳のジェームスと弟も農業をやらされている。母が捕まえてた鳥もペットにしようと喜んでいたのもつかの間... 母に絞めろと言われる。子供の笑顔が消えて、泣きながらやる事になる。生きていく術を母は教える。そしてジェームスは母にお金を使わせたくないと歯が痛い事を隠している。この感覚は今の子供達にもあるのだろうか?ダウンタウンの松ちゃんの作った歌の詩「チキンライス」を思い出す。あの子供達の感覚は日本なら昭和のもので、アメリカなら40年代の事の思い出となってしまったのだろうか?物に溢れた今、大事な物が失われたのだろうか??と、オープニングの5分間で胸がキュンとなった。

大人の男性像が無いように思うかもしれないが、おば目当てにたまに来ている?男性が居る。歯が痛いジェームスに向かって、カトリックの教えを植えつけながらお呪いで歯を治そうする。まだ痛がるジェームスに向かって「お前の宗教は何だ?バプティストか、なら仕方ない」という台詞とか、ちょっとコミカルな面もある。その男を演じていたのが、クリーヴォン・リトル。「ブレージングサドル」の主役ですね。その男性に口説かれるおばがマーガレット・エイブリー。「カラー・パープル」のシャグですよ。

で、歯が痛い事なんて母にはバレバレ。次の日に歯医者に行く為にママとジェームスは町に出る。歯医者に着くと、そこはもう人が何人も待っている。待合室では、若い男と中年の牧師が「宗教観」について口論。神の存在を信じない若い男は、「風はピンクで草は黒なんだ。言葉なんてなんて事ない。行動こそが全て」と神の存在は絶対じゃないと反撃。この台詞が後に白人老夫婦と出会った時に、いい感じでジワジワときいてきます。その老夫婦は後で触れるとして、その無神論者の若者は中年の牧師から頬を引っ叩かれます。その時に言う台詞が「もう片方の頬を忘れてるよ」。そうですね。キング牧師でも有名な「右の頬を叩かれたなら、左の頬を差し出しなさい」の教えをわざと逆撫でするのです。40年代が舞台なので、キング牧師は関係ないですが、キリスト教の有名な教えですね。主役のジェームスは待合室でそういう大人のやりとりを目撃します。しかしせっかく待っていたのに、午前の診療はおしまい。午後にはバスで帰ろうと思っていたジェームスと母はどこかで時間を潰さないといけない。その日はあいにくずっと強い風が吹いていて寒そう。しかし黒人が入れる場所もあまり知らず... 一軒のコーヒーショップに入るけれど、そこでもひと悶着。母が女性であると同時に、夫の居ない母の強さを少年は知る事になる。行くあてもなく歩く2人を止めたのが、お店を営んでいる白人のおばあさん。寒いので中に入れといわれるが、母は「お情けは無用」と突きはねる。そうするとおばあさんは夫が病気で動けないので、代わりにジェームスにゴミ箱を外に出して欲しいと頼む。歯医者には電話しておくからと。でも8歳の男の子でも片手で運べる軽いゴミ箱だった(ゴミ箱運びなんて本当は無用なんでしょうね)。おばあさんはそのお礼に暖かいお昼をご馳走したいと申し出る。それならと母とジェームスは食べる。ただ頂くだけでは申し訳ないと、お店の塩漬け肉を買うと母は言う。おばあさんはその値段で買える倍の重さの肉を渡そうとするが、母は「私はそんなに買ってませんよ」とまた申し出を突きはねる。おばあさんは「私はここでもう何十年もこの仕事をやっているのですよ、見れば重さ位わかるわ」と申し出るのだけど、やはり母は「では結構です」と帰ろうとする。おばあさんは母の気持ちを察して、母が買った重さの大きさに切り直して渡すのです。そうすると母は「ご親切をありがとう」と言い去る。店を出たところで母は息子に「あなたはフーテンなんじゃない。男なのよ」といい、息子も母の毅然とした態度を誇らしげに思っているのです。

あー、かっこいい。慈善じゃない優しさ。哀れみなど感じて欲しくないというプライド。白か黒かなんて言う色は、あの若者が言っていたように言葉でありなんてことない物。それがクドイ台詞じゃなくって、カッコいい言い回しによってそれらを表現しているのが、まーーーかっこいい。原作は先に書いたようにアーネスト・J・ゲインズですが、脚本はチャールズ・フュラー。劇作家でもあり「A Soldier's Story / ソルジャー・ストーリー (1984)」が有名。この2人の名前を見て観る事を決めました。そして母を演じたのがオリビア・コール。凛としていて寡黙なんだけど、母の愛情タップリ。この母役にぴったりでした。主役のジェームスを演じたのがジェームス・ボンド・3世。有名人になるべくしてつけられた名前ですね。でもこの人の子役時代は半端ないです。天才子役ですよ。監督は今でこそラッセル・シモンズと組んでスタンダップコメディ番組の制作をしているスタン・レイサン。女優サナー・レイサンのパパであります。

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(4.75点/5点満点中:あれ?ここまで書いたらなんで5点満点じゃないのか自分でも不思議だけどDVDで鑑賞)