Attraction / SEX白/黒 (1969) 635本目
エロに拘り続ける男...ティント・ブラスの作品。エロに拘るというか、拘りのエロというか、その両方。エロがあるから俺がいる。いや俺がいるからエロなんだ。そんな監督です。
もろにカウンターカルチャーのフリーセックスの影響を受けております。映像も音楽もロケーションもメッセージも全てカウンターカルチャーの影響が強いです。冒頭の公園のシーンはフラワーチルドレンの宗教的な物も感じるし、音楽は撮影現場のイギリスのバンドを使っていてビートルズを思わせる感じ(あくまでも感じ)。エグイ映像はその世代の前衛的なアートを思わせるし、戦争等のシーンはベトナム戦争へのあてつけ。
でもタイトルの白と黒という部分のメッセージはかなり弱い。黒である男を演じたのが、「Foxy Brown / フォクシー・ブラウン (1974)」ではフォクシー・ブラウン事パム・グリアの恋人を演じたテリー・カーター。アメリカからやってきたカメラマン役らしいが、この映画には台詞等が極端に少ないために不可解な部分は多い。なぜかこの男がイタリアからロンドンに夫の仕事の都合で来ていたバーバラという女性を一日付回すんですわ。普通、付けられたら警察とかに助けを求めるけれど、バーバラは「嫌いじゃないかも〜」とわざと付回されてます。変なところで止まって、挑発的にストッキングを直してみたり。しかもバーバラの妄想はどんどん発展していって、エロエロしくなっていきます。その中で、バーバラがマオイズム等のプロテストの波に揉まれ、中国人と思われる男性から毛沢東の赤本を手渡されると、テリー・カーターがやってきてそれをマルコムXの自伝に変えてしまうのです。何ともかんとも。でもバーバラは結局はそのテリー・カーターへの興味は性的な物でしかあらず...という事で、メッセージ性はイマイチなんですよね。しかもラストの踏み込みも肩透かし。観客もラストのあのテリー・カーター状態ですよ。「えぇえーー」って。残念。という訳で、カウンターカルチャーばりばりな雰囲気でアートを感じさせる作品ながら、映画史の歴史にその名前を刻めなかったのは、そこだったんだと思います。あと一歩が全然足りてない。監督自身がそこにはあんまり興味が無かったのかもしれません。映像的にも先をいっているので、内容的にも同じ位先をいっていてくれたら... 最後の最後に保守的って。
でもカウンターカルチャーを味わいたい人にはピッタリ。こんな映画、バリバリにドラッグでもやってないと作れないと思いますから(でも麻薬、ダメ絶対)。まー、ぶっ飛んでる映画です。この映画の主人公バーバラを演じたアニタ・サンダースがこれまた当時の雰囲気にぴったりの美女。60年代のソウル音楽のアルバムジャケットとかで、たまに本人達じゃなくて白人女性が使われている事が多かったじゃないですか?(その裏話が「The Five Heartbeats / ファイブ・ハートビーツ (1991)」に出てきますが泣ける)そのジャケットの女性の感じがあるんですよね。しかも冒頭での紗が掛かった彼女の画は綺麗過ぎる上手い演出。光の入り具合も美しい。
はっきり言ってしまえば...夫の出張についてきた妻の一日の妄想日記みたいな感じ...と言ってしまったらティント・ブラスも救われないかしら?でもサイケデリック好きにはピッタリ。ティント・ブラスって、70過ぎてもまだエロな映画を撮り続けてるんですよね。その情熱には尊敬いたします。何かにここまで拘る事もカッコいいかもしれないですね。あ、いやどうだろう??
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(3.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)