やっぱり映画にも相性があるんですよね。誰がどんなに名作だなんだと言っても、その訳が分からない作品も私には多々あります。どうしても相性が合わない監督さんとかも居たりするものです。その逆で、私の心にズキンと突き刺す映画を毎回作ってくれているのが、チャールズ・バーネット監督。私の生涯ナンバー1映画でもある「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」をUCLAの卒業制作で作ってしまった鬼才。「ありふれた日常を映画という芸術品に収めたい」といつも言っているバーネット監督の作品は、私の心にズキンズキンと刺さってきます。「ありふれた日常」だからこそ、全く違う境遇の主人公を見ても、なぜか自分を重ねてしまうのです。その中になぜか心に残る美しいシーンがあったり、心に引っ掛かるシーンがあったり... それからバーネット監督の映画を幾つか見ましたが、どれもズキンと来ます。でもこれだけは、オープニングだけ見て以前に尻込みして最後まで見てなかったのです。それを非常に後悔しました。最後まで見て思いました。そのあんまり好きになれなかったオープニングこそ深かったのだと。やっぱりヤラレました。骨抜きにされました。外れがないです。私だけかもしれませんが... でも私はそう思える監督を知っているのは幸せな事かもしれませんね。
という訳で、チャールズ・バーネット監督の作品です。映画ポスターやDVDのジャケット等では、丸でアイス・キューブが主役のような印象を受けますが、主役ではないです。あんまり思った程出てきませんが、でもこの映画の要となる人物ではあります。アイス・キューブのイメージそのままの役なんですが、そのイメージによってアイス・キューブ演じるテディ・ウッズという男の人生や、主役であるジョン・ジョンソン(JJ)やその他の人生が変わってしまうのです。イメージとは恐ろしいものです。このイメージというのが、ステレオタイプだった訳でどんどん話しが悪循環で悪い方へと向かってしまうんです。
確かにジョン・ジョンソンのように保安官になって腐敗した同僚達に囲まれて...なんて事は、普通の人にはあると思えません。でも署を職場と変えてしまえば、ある話だと思います。雰囲気の悪い職場とかありますものね。その中で自分を保つのは本当に難しい。私だってあの主人公のように流されてしまうだろうなって思います。周りがそうなんだからと流されてしまうと思う。空気が悪いから波風立てたくないから余計に。でもその後の事とか、真実は何なのかとか忘れちゃうと思う。変な空気プレッシャーで。学校のイジメとかもそういう感じだと思うし。そういう怖さを教えてくれる映画でした。そういう部分もこの映画は人種差別が絡んでいたりします。主人公のジョン・ジョンソンは黒人からのプレッシャーに無関心。分かってはいるけれど、無視しちゃったりもします。
これが本当に普通のサスペンス映画に見えるんですが、深いんです。奥深い。人種差別・性差別等も絡んでいたりします。最後も衝撃。ええぇぇーって感じで腑に落ちないんですが、これは実際に起きた話。人生は厳しい・不公平。考えさせられました。でも暗く考えてしまうかといえば違って、これはいい教訓だなって感じです。実話というのが凄いです。
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(5点満点:DVDにて鑑賞)