アンジェラ・バセットとダニー・グローバーが主演の南アフリカの戯曲が原作のドラマ作品です。重たいです。物凄く重たいです。戯曲を書いたアソル・フガードは後に私も好きな「Tsotsi / ツォツィ (2005)」の原作を書いています。1974年に同じ作品が作られていますが、そちらのオリジナルではフガートが主役のボズマンを演じていたようです。ちなみにフガートは南アフリカ出身の白人です。ガンジーやキリング・フィールド等の名作に俳優として出演してます(あ、久々にキリング・フィールド見たくなってきたわ)。
社会に蝕まれた男が女を暴力によって蝕んでいく。2人は全てを失ってお互いを憎む事しか出来なくなる。人間以下にまで落ち込んだ2人が最後に辿りつく所...。やっぱり人間なんですよね。こんな重たいテーマを演じたのがアンジェラ・バセットとダニー・グローバー。こんなアンジェラ・バセット見た事ない!という熱演ぶりでした。今まで彼女が演じてきた役とは全く違います。ダニー・グローバーは「The Color Purple / カラーパープル (1985)」でも同じように社会に蝕まれて暴力を振るう男を演じてましたよね。やっぱり上手い。殆どが2人舞台という感じ。舞台が原作なので台詞が多いです。カット数も少ない気がしました。でも2人の距離感を感じるカットが上手かった。そして2人は終始アフリカ訛の英語で頑張ってます。途中、何箇所かアメリカ英語になってましたが、このドラマではやっぱりアフリカを思わせるアフリカ訛が必要だったと思います。でも、アフリカ女優が演じるアフリカ女性とアメリカ女優が演じるアフリカ女性はやっぱり違うかな?とも感じました。アンジェラ・バセットは凄い熱量で演じていて迫力とかもあったし説得力もあってさすがだなーと思わせてくれたのですが、やっぱり彼女が演じたアフリカ女性はアメリカの女性のような自立した女性を感じたのです。アフリカの女性ももちろん自立しているのですが、それともまた違う器の大きなママアフリカを感じるのです。「Yesterday / 日本未公開 (2004)」のレレティ・クマロとか「Sarafina! / サラフィナ! (1992)」のミリアム・マケバとかそういう感じでしたよね。でもアメリカの女優であそこまで演じられるのはアンジェラ・バセットだけだと思います。
この作品は監督ジョン・ベリーの遺作。ジョン・ベリーは赤狩り時代には干された人物。70年代に入って「Claudine / 愛しのクローディン (1974)」とか撮ってます。50年代にはドロシー・ダンドリッジが主演の「Tamango」も撮ってます。ベリー自身がアソル・フガードと飲みながら語っているボーナス映像を見ていたんですが、この映画に非常に満足だそうで久々に手ごたえを感じたとか。彼らしい遺作となりましたね。
かなりとっつき難い映画かもしれません。内容が掴めない人にはかなり辛い映画になるかもしれないとも思う映画でした。その位ずっしりと重いテーマの映画です。
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(4.5点/5点満点中:DVDにて鑑賞)