ででででーん、でろでろでーん。何のこっちゃ分からないと思います。いや、この映画を見るとこのメロディが頭にこびりつきます。テレビ界の最高の勲章となるエミー賞にて、主演のポール・ウィンフィールドやシシリー・タイソンに助演のオシー・デイビスもノミネートされたのですが、なぜか受賞したのはこのででででーん、でろでろでーんのこのメロディです。
この作品ではキング牧師の様々な姿に触れる事が出来る。キング牧師の活動家としての一面はもちろん、夫としての一面、父としての一面、そして1人の男としての一面。キング牧師の素晴らしい一面だけでなく、人間らしい弱さや過ちすらも描いている。それでも尚、キング牧師の人間としての素晴らしさに出会える作品。また、コレッタ・スコット・キングの強さも伺える。夫の浮気現場が盗聴されていたテープを受け取って、その問題を処理していくコレッタ。妻という立場だけでは無かっただろう。それを乗り越えて立ち向かう強さ。あの場所で、戦っていた全ての人たち、本当に強いんだなーと思いました。
ポール・ウィンフィールドが、キング牧師の有名なスピーチを見事に再現していきます。また、やはりキング牧師はスピーチが重要なので、映画でもかなりの時間を割いてその再現シーンを作っています。そういう公の場でのキング牧師と、プライベートでのキング牧師の姿の違いが面白い。あの暗殺されたメンフィスでのホテルの部屋でFBIの罠を知り緊迫した状況の中、アンドリュー・ヤングを脅かそうとみんなで隠れたりして遊んでいる姿... 子供の誕生日パーティでカメラに撮られてはにかむ姿... 子育てで忙しいコレッタの代わりに料理を作ってくれた女性にチャーミングな礼をするキング牧師の姿... 子供と家の中でボールで遊ぶ姿... それら全てが「人間」としてのキング牧師を浮き彫りにしていく。だからこそ、人間としてあの問題に立ち向かっていく男の困難と苦悩が余計に浮き彫りになる。あの状況下で丸腰だったキング牧師と、その仲間達...よっぽどの覚悟の上だったと想像する。誰かが踏み出さなければいけなかった一歩を踏み出す勇気...
ポール・ウィンフィールドとシシリー・タイソンも素晴らしかったですが、他の共演者も素晴らしい。特にはキング牧師の父を演じたオシー・デイビス。特典映像では「本人を良く知っているので、今まで演じた中で一番簡単でやりやすかった」と述べていた。カッコいい。これが本当にソックリというか厳格なイメージ通り。でもその父がコレッタに「彼の勇気の為に生きようじゃないか」というシーンが物凄く好きです。家が爆破されたり、夫が刺されたりと厳しい状況下でコレッタが疲れきっていた時に、結婚を反対していた父がコレッタに言った言葉です。その父もアトランタでは有名な牧師なので、その勇気がどんな勇気か分かっているからこそ感動するのです。
またアンドリュー・ヤングを演じたハワード・E・ロリンズ・ジュニアが、若き熱血漢という感じで素晴らしい。何となく「Heat Wave」とか若い頃のブレア・アンダーウッドを思わせる。ルックスもなぜか似ている。スパイク・リーの「マルコムX」でイライジャ・モハメドを演じていたアル・フリーマン・ジュニアがデーモン・ロックウッドを演じた。いい感じです。
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(5点満点:DVDにて鑑賞)