Cast >> Henry G. Sanders (Stan), Kaycee Moore (Stan's wife), Charles Bracy, Angela Burnett, Eugene Cherry, Jack Drummond ...
Director >> Charles Burnett
Writer >> Charles Burnett
Producer >> Charles Burnett
総合ポイント >> 特5/5点満点
Contents >> 5 Performance >> 5 Direct >> 5 Music >> 5
Long Lost Pure Gem
スタン(ヘンリー・G・サンダース)は、ロサンジェルスのワッツで妻(ケイシー・ムーア)と息子と娘の4人で暮らしていた。スタンは真面目に羊やヤギの屍処理場に務めていたが、暮らしは良くなかった。妻の車が牽引されたので、友人とエンジンを買いに行くが...
イタリアのネオリアリズムに影響され出来た作品。ネオリアリズムは、所謂ハリウッド形式のハッピーエンディングに終わるというドラマという反対側にある。
チャールズ・バーネット監督は、この映画の製作理由を聞かれたときに「コミュニティが作らせたんだ」と即答している。そのコミュニティとは、ロサンジェルスのワッツという、それまでにも幾度もハリウッド映画の舞台になってきた場所。ロサンジェルスのワッツと言えば、ギャングが蔓延り簡単に銃を取りバイオレンスが横行している町と描かれるのが普通だった。しかし、バーネットが描いたコミュニティは、子供達が遊び、犬が吼える普通のコミュニティ。
そのように子供達の遊ぶシーンが多く使われる。少年達が屋根を飛び越えて遊ぶシーン、そして少年が電車の下に潜り込みレールに頭をつけて遊ぶシーンなど、なぜか少年達が死と隣り合わせ的なシーンが多い。それは、スタンの職業である屍処理というのに関係するものと思われる。スタンはその「殺すという」仕事故に、妻への性的魅力や生きる事の面白さすら失いつつある。それでもスタンは娘を抱っこする喜びは失わない。そして、暖かいティーカップを頬に当てた時にですら、女性を抱いた喜びを思い出すロマンチストでもある。そのようなありふれた日常を見て尚、考えさせるパワーをも持っている映画である。それは逆にテーマが人種だけの枠に収まらずに、万人が自分に近い心を見せられた事で起こる事なのかもしれない。それがネオリアリズムのパワーである。
劇中のすべての事柄が結びつく安易な映画とは違い、起承転結やハッピーエンドはこの映画には無い。「自転車泥棒」のような「これでもか!」という辛いエンディングもない。一つ一つ全てのシーンがパズルのようにスタンという人間を浮き彫りにする。そしてその自分もそのパズルの一つでもある事を実感する事になる。また観客がそのパズルを完成出来た時、一つの偉大な芸術品を見ることになるだろう。
(11/20/07:DVDにて鑑賞)