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The Woman King / 日本未公開 (2022) 1831本目

The Woman King / 日本未公開 (2022) 1831本目

ダホメ・アマゾンズ、または彼らの言葉でアゴージェ。ダホメ王国の王に使える女性軍人のことだ。その存在は、200年も経て『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』という虚像のスーパーヒーロー映画にも影響を与え、名前を変えて「ドーラ・ミラージュ」となったほどである。ところで、ダホメ王国とは、現在のベナンのことであり、西アフリカに位置している。そして本作は、ダホメ王国で最も偉大な王と言われているゲゾの時代を支えたアゴージェを描いている。

1823年の西アフリカ、ダホメ王国では若いゲゾ(ジョン・ボイエガ)が王の座に就任したばかり。隣国オヨ王国は、新しい銃や馬などを持ち奴隷貿易で栄華を迎えていた。一方、ダホメ王国には、ナニースカ将軍(ヴァイオラ・デイヴィス)のエリート女性軍「アゴージェ」がいた。そのアゴージェは、オヨによって囚われた若い女性たちを開放し、望むならばアゴージェに加入させると約束した。その頃、年増な男性と無理やり結婚させられそうになったナウィ(Thuso Mbedu)は断固拒否して父を怒らせ、父はアゴージェの基地にナウィを置いていく...

なのですけど... 伝わっている情報などで勘付く方もいるかと思いますが、あくまでもアゴージェ&ダホメ王国はハリウッド的な英雄として描かれている。オヨ王国だけが悪者。めちゃくちゃ悪者! まあなので、#BoycottTheWomanKingで批判を集めておりますが、その批判もいささか仕方ない。主演のヴァイオラ・デイヴィスや夫で本作の制作者の1人であるジュリアス・テノンは、「エンタメだから楽しませるために演出も必要」と反論している。それは分かる。でも何と言うか、大河ドラマみたいに史実と演出を加えながらも上手い歴史物語には出来なかったのかなと思う。ダホメもオヨも奴隷貿易は行っていた訳ですし、非情な部分を見せつつもゲゾやナニースカの苦悩や才能が見れたら良かった。時代的に分かっていることですから、その上でのドラマが見たかった。それに加えてのサブストーリーがズルい。感動せざるをえないサブストーリー展開。ネタバレになるから詳細は書かないけれど、ナニースカの過去の物語。あの部分が感動するのだけど、話が上手過ぎでリアリティがなかった。

例えば『ブラックパンサー』は、架空の虚像物語に、アメリカ黒人の実際の歴史を抱えたキルモンガーというキャラクターがいて、それが多くのアメリカ黒人の心に刺さった。自分たちも物語の中にいる感覚を味わえたからだ。本作は、実際の歴史物語に、架空の美しい(過ぎる)物語を入れ込んだ。出来過ぎていて現実の物語と感じられなかった。だから現実と歴史との乖離を生んだ。素直にハリウッド的エンディングを感動できたら良いのだけど、私には出来なかった。あと意外とルッキズムも感じてしまった。

ラシャーナ・リンチのお姉さんぽい役、シーラ・アティムのナニースカを支える役、なによりヴァイオラ・デイヴィスの将軍役など、とてもいい演技&アクションが見れただけに、余計に脚本がな... と思ってしまうのである。アクションにも凝った大河ドラマになるはずが、昼ドラとまでは言わないけれど、ナニースカよりもナウィが話を進めているのもあって、無理矢理感動をつめこんでメロドラマ仕立てで甘くしたナウィ主役の良い感じの朝ドラなのだ。

(9/17/2022:4.25点/5点満点中)
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