The Boy Who Harnessed the Wind / 日本未公開 (2019) (VOD) 1681本目
悲劇をソーラーパワーで跳ね返す!『The Boy Who Harnessed the Wind』
キウェテル・イジョフォーの初監督作品。イジョフォーと言えば、オスカーの作品賞を獲得した『12 Years a Slave / それでも夜は明ける (2013)』が有名ですが、私は『Dirty Pretty Things / 堕天使のパスポート (2002)』からの『Kinky Boots / キンキーブーツ (2006)』というふり幅でイチコロっちゃった者です。ギャップというか、そういうふり幅のデカい俳優が私のツボかもしれません(町田啓太も『スミカスミレ』からの過去作『スキマスキ』のふり幅でヤラレた口)。そんなイジョフォーが初監督に挑んだ作品は、実話ウィリアム・カムクワンバのベストセラー自伝『風をつかまえた少年』の映画化。イジョフォー自らが脚色。力入りまくった渾身の処女作でございます。
2001年マラウイ。農家に生まれ育ったウィリアム・カムクワンバ(マクスウェル・シンバ)は、ラジオなどの修理が得意だった。もうすぐ学校が始まるので、新しい服を買ってもらって大喜び。学校が始まり、分かったのが、お姉ちゃんが先生と付き合っていることだった。そして、最近は天候が悪化し、農作物に影響が出始め、家計が苦しくなっていた。お姉ちゃんが先生とキスしている所を目撃し、先生の自転車にイタズラしようとして、自転車ライトの仕組みを知り気になりだした。周りは畑を売ってお金にしたが、父(キウェテル・イジョフォー)は断固として売らず、益々家計が苦しくなり、しかも天候は悪化する一方。しかも頼りの酋長は大統領に歯向かい... ウィリアムはそんな状況の中、ソーラーパワーの水ポンプを考えつくが...
嗚呼、悲劇に次ぐ悲劇... 辛すぎる連続。それでも、ウィリアム少年が健気でたくましい。父も厳しいけれど、芯は優しい。こういう時って国は助けないよね。それまで取るもの取っておいて、本当に酷い。でも時々光明が見える。ウィリアム少年の勉強シーンが最高でしたね。そういえば、私がすっかりハマってしまったドラマ『初めて恋をした日に読む話』でも塾長が言ってましたね。「塾なのにたまに遊園地にでも行ってきたかのような顔をする生徒がいる。分からなかったことが分かるようになるってそれくらい楽しいものなんですよね」と。モーターの話を聞くウィリアム少年の顔がまさに「遊園地にでも行ってきたかのような」顔でした。それでもお金を払っていないということで悲劇が起きる。教育はどこの国も補償されますように!と願う。勉強したい子供から取り上げるのはどうにかしている。ソーラーパワーより熱い、ウィリアムの情熱は素晴らしいんですよ。
ところで、キウェテル・イジョフォーは両親がナイジェリアからイギリスに渡った移民2世なのだけど、時々台詞にマラウイの言葉を混ぜている。凄い勉強家だなーと。ナイジェリアとマラウイは地理的にも離れているので、言葉の接点はそんなに無さそう。祭りみたいなシーンもインディペンデント映画系若手監督って感じで絵が綺麗で最高でした。はい、また別のふり幅見せられて、やられました...
それにしてもこういう子供が悲劇にもめげずに頑張る『おしん』系の作品は、元気貰えますね!負けてられない!!って思わせてくれます。
(4点:1681本目)
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