昔からそうではあったけれど、でもここ最近のイギリス映画の台頭は凄まじい物があると思う。ブラックムービーに於いてもそれは一緒。キウェテル・イジョフォー、イドリス・エルバ、ソフィ・オコネドー、イーモン・ウォーカー、タンディ・ニュートン、ナオミ・ハリス、アドウェール・アキノエ=アグバエ等の俳優はハリウッドでも第一線で活躍する。その中で以前とは確実に違う動きを見せているのが、イギリスをベースに活動している黒人の映像作家達。最近では「Hunger / ハンガー (2008)」のスティーブ・マックイーンがカンヌ映画祭でも受賞するなど、すばらしい活躍を見せている。そしてもう一人が、この映画の監督トーマス・イキミ。彼は両親がナイジェリアからの移民で、彼自身はイギリス生まれ。それは俳優のキウェテル・イジョフォーと同じである。そのイキミとシエラレオネとガーナからの移民の両親を持つイギリス生まれのイドリス・エルバと、グレナダとトリニダード出身の両親を持つイーモン・ウォーカーが共演するサイコスリラー映画。イギリスで撮影&制作されているけれど、資金が集まらなかったので、イキミの故郷であるナイジェリアからの出資も受けて映画は完成。カレイドスコープというナイジェリアのプロダクション会社がちゃんとクレジットされている。本当にナイジェリア映画産業はすこぶる元気が良いんだなーと感じましたね。アメリカでのDVD権を獲得したのは、アメリカ黒人が代表を務めるコードブラックという会社(最近オープニングタイトルを変えてカッコ良くなってる!)。でも主な舞台となっているのは、ニューヨークのブルックリン。不思議な映画でしょ?
主役のイドリス・エルバが演じるのがマルコムという軍人で秘密工作員。今回はヨーロッパのどこかでテロ撲滅の任務を遂行していたが、その時に敵に捕まり激しい拷問にあう。その次の瞬間、マルコムはブルックリンの古い汚いアパートの一室に居る。そこからかなりの密室劇。同じ任務についていた仲間や上司がそのアパートに訪れてビールを飲んだと思ったら、兄と結婚してしまった元恋人がそのアパートに訪れたりする。マルコムの兄役がイーモン・ウォーカーが演じるダーネル。彼はニューヨークでかなり活躍している政治家で、大統領選に出馬か?と言われている位に注目されている。しかしマルコムとは恋人の事などで確執があるのか、ダーネルのスキャンダルをマスコミにばらそうとしている。アパートには電話がひっきりなしに鳴るが、マルコムは答えようとしない。何か普通のサイコスリラーぽいですか?いやいや... 実はマルコムはかなり酷いパラノイアに襲われていたのです。だから、この映画の冒頭から最後まで、どこからどこまでが、本当なのか?さっぱり分らない不思議な面白さがあるのです。最近のイギリス人俳優の中でも一番の活躍をみせているのが、先日のゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたイドリス・エルバだと思う。この映画は迫真の演技を見せてます。なにせ殆どが密室劇なので、演技に頼るしかないですからね。凄いです。
スティーブ・マックイーンといい、この映画のトーマス・イキミといい、映像がとにかく芸術的。グロテスクな色使いで黒とか茶色を使うのが綺麗。このイキミの場合は、オープニングの演出もかっこいい。イギリス映画から目が離せません!そしてナイジェリア映画資本もね。
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)