Difret / 日本未公開 (2014) 1501本目
エチオピア映画。サンダンス映画祭にてプレミア上映され、ワールドシネマ部門で観客賞を受賞。オスカーの外国語部門にエチオピア代表で出展されたが、ノミネートは逃した。
物語はエチオピアで実際にあった物語。エチオピアの農村では、代々、嫁に貰う時には夫となる男とその仲間たちが嫁を連れ去り、夫が嫁の処女を奪うのが習わし。14歳のヒルート(Tizita Hagere)は学校帰りに連れ去られた。けど、まだ学校が楽しい時期で、結婚なんてイヤイヤ時期。実はヒルートのお父さんも「まだ早い」と夫になる男に断りを入れていたのだ。しかし男と仲間は強行。ヒルートは泣きながら帰してくれと頼むも聞き入れてもらえず、ビンタをされてレイプ。しかし、その後に夫となる男が置いていったショットガンを持って逃走。すぐに囲まれ、ヒルートは夫となる男に向かって発砲。ヒルートは仲間や地元警察に取り押さえられ連行。そこにやってきたのが、NGO団体で女性の権利を弁護する女性弁護士団の1人マエザ(Meron Getnet)だった。ヒルートの正当防衛が認められるように尽力を尽くした。しかし村の酋長や男たちの話し合いでは、「ヒルートを殺せ!」という意見も出たが、ヒルートの年齢なども考慮して酋長が、村から出ていくこと、もう戻らない事を条件として正当防衛を認めた。しかし、実際の裁判でも検察側は「死刑」の態度を崩さず、夫になる男を殺された家族や仲間がリベンジを狙っていた。マエザは必至にヒルートを守ろうとするが...
というお話。日本にも無くしたくない守りたい伝統は沢山あるけれど、やっぱり変わらないといけない伝統もある。伝統という事だけで、人々の体が蝕まれてしまうのは、やっぱり違う。面白かったのは、村の男たちがなぜかヒルートが通っていた学校の先生(男)に責任を擦り付けようとしていた所。「伝統を守れない女を育ているのか、学校は!」と無茶ぶり。村の人々は女が勉強する事自体を良く思っていない。そして村八分なんて言葉があるけれど、何か新しい事をしようとすると反発され疎外されてしまう。でもそれを助けようとするのが、マエザという女性。村で育ってきたヒルートは何の疑いもなくマエザに「(マエザが)結婚していないのは、何か悪い事したの?結婚できなかった女性は悪い事したって事だから」と言う。思わず笑ってしまうマエザ。この2人の関係が美しかった。でも最後に「勝った気がしない」というヒルートに切なくなった。村には帰れない、妹を助ける事も出来ない。マエザ役の人、綺麗だったし聡明という感じで素晴らしかった。
ちなみにですけど、今離婚問題でお騒がせ中のアンジェリーナ・ジョリーがプロデューサーの1人で、英語ポスターは彼女の名前が監督かよ!っていう程大きな文字で載っております。が、多分制作後でプロデューサーになった名前貸しプロデューサーだと思います。好きそうじゃん、こういう女性権利モノ。
そして実際の事件では、ヒルートではなくAberash Bekeleという名前の子です。今は、自分と同じ境遇の子供たちを減らそうと頑張っている。でも、この映画は弁護士のマエザばかりが良い感じで描かれている!と怒って裁判まで起こした。監督は「もし勘違いをさせてしまったらごめんなさい」と謝罪。けど、この映画はエチオピアで中々の興行成績と収めて、まだ幼い子供たちの無理強い結婚防止の啓蒙には多いに役立ったという事。
(4点/5点満点中)
Difret / チャイルド・マリッジ- 掠奪された花嫁 (2014)