余り期待しないで観たが、これは面白かった!出来に若干荒削りな部分もあるが、物語自体が最高に面白い。タイトルの「一週間」は、主人公の男性ヴァロンが結婚するまでの「一週間」であり、この映画の最大のテーマであるHIV検査の結果が出るまでの「一週間」である。その「一週間」がドラマチック。結婚を控え、幸せな一週間となる筈だった。しかし一本の電話からヴァロンの一週間は豹変してしまう。意味も分からず受けた電話が、健康管理局からの電話で、詐欺だと思って無視しようとしていた。しかし何度も執拗に電話を掛けてくる。仕方なくフィアンセと健康管理局に行くと、信じられない話が待っていたのです。
エイズは黒人社会でも問題となっている。黒人専門チャンネルBETを見ていれば、「エイズの検査を受けろ」というコマーシャルがしょっちゅう流れる。そういえば、この前NAACPからメールが来た。アメリカの黒人は世界で第16位。アメリカの人口のたった14%が黒人なのに、新たに感染する人は44%と高いというメールだった。でも普通の人はそんなに危機感を持っていない。どこか別社会の話位に思っている人が多い。しかし今やエイズはアメリカだけでなくて日本でも急速に広まっている。でも80年代にマジック・ジョンソンがHIV患者である事を告白し、多くの人に認識され(当時の認識は誰もが勉強不足ではあったが)、話題になり討論された。しかし今は前よりも患者数は増えているのに、前のように注目される事はなくなってしまった。
エイズは何度も言われているように「正しい知識と予防」が大事だ。この映画でもそれがとても巧く表現されている。ヴァロンとヴァロンの親友の2人がHIV感染の疑いがあり、2人は検査を受ける。2人共に、同じ女性に「ひっかかった」のである。その女性は別名を使い2人と接触。2人共に気がつかず、一瞬の甘い蜜を吸う。それが彼らの悲劇となった。ヴァロンの親友は「正しい知識」がなかった為に悲劇となる。
そしてこの映画は職場の無意味な学歴ヒエラルキーも描いている。難しい問題にチャレンジしているが、台詞はごくごく普通の黒人男性を反映し、軽快で面白い場面もある。そういう見せ方がこの映画は非常に巧み。
感想にも書いた通り、こういう良質なインディ映画があるとブラックムービーは繁栄していくのですよ。もっと増えて!!
(5点満点: 6/27/12:DVDにて鑑賞)