出来ると聞いた時から見たくてたまらなかったドキュメンタリーです。タイトル通りで、1967年のアメリカでのブラックパワー...黒人革命を追った作品です。でも面白いというか、付け加えなくていけないのが、このドキュメンタリーはスウェーデンの記者達が当時集めた映像を元に制作されているという点。インタビュー等の映像もスウェーデンの記者が行った映像。なので余り見た事ない映像が多かった。そして監督はこれはブラックパワー運動の全てだと思わないで欲しいとも述べている。
この映像が集められた1967年の前年となる1966年は面白い年だった。ストークリー・カーマイケルがSNCCの委員長に就任、ブラック・パンサー党のヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールがブラックパンサー党の10ポイントプログラムとプラットフォームの最初のドラフトを書いた年だった。1967年にスウェーデンの記者はマイアミの小さな町を訪れている。そこで見た物をスウェーデンで紹介。そしてSNCCの委員長に就任したばかりのカーマイケルが、ストックホルムに訪れている。その時のカーマイケルは既にあの「ブラック・パワー」を叫んではいたが、ストックホルムに着いた時にはキング牧師の非暴力を伝えていた。しかし、スウェーデンの記者がアメリカを訪れ、カーマイケルの母にインタビューしている時には、インタビュアーに「俺がインタビューしてあげようか?」とマイクを取り、母親にインタビューを始める。そのカーマイケルは母親から「黒人だからよ!」という答えを求め、その答えに誘導しようとやっきになっているのが分かる。と、割りと最初の方はカーマイケルの事が多い。カーマイケルの映像をここまで見たこともなかったし、意外と気楽に話している映像や、いつもの緊迫した怒れる青年像のカーマイケルも居て、興味深い。どうせ盗聴されているから...と、FBIのために歌まで歌ってしまう。
そして1968年、キング牧師の最後の年となった年。前年度から続いている大規模な暴動、そしてメキシコ・オリンピックでのトミー・スミスとジョン・カルロスのブラック・パワーの拳、ニクソンが大統領に選ばれる等の混沌とした時代に向かっていく。4月にキング牧師を亡くし、人々は余計に暴力の方向へ向かっていく。
この映画では1年毎に追っていくので、とても分かりやすい。この後はブラック・パンサー党にアンジェラ・デイビス...と続いていく。アンジェラ・デイビスの単独インタビューは見もの。彼女のインテリぶりが発揮されている。最後は麻薬問題で終わっている。クラックベイビーや麻薬中毒による少女の売春等の問題。
当時の映像と共にタリブ・クウェリやエリカ・バドゥにクエストラブにジョン・フォーテ等が話している。そして、ハリー・ベラフォンテやメルヴィン・ヴァン・ピープルス等の当時実際に活動していたエンタテイナーも話してます(少しですが)。そして何と言ってもダニー・グローバーがプロデューサーとして加わっております。本当はこの人がヒューマニタリアン賞総なめすべき。学生時代に過激だったから、疎遠されているけれど。
この中で一番印象に残った言葉がハーレムの本屋の店主の言葉。「黒人は美しい。しかし黒はパワーじゃないんだ。知識こそがパワーさ」。
(4.5点/5点満点中:DVDにて1/9/12に鑑賞)