先日、サン・ラーがシカゴ時代の若い頃(と言っても40代だけど)にインタビューに答えている「Cry of Jazz / 日本未公開 (1959)」があの「Malcolm X / マルコムX (1992)」と共に国立フィルム登録簿に登録されたばかり。そのニュースを聞いて、観たくなったけど手元にないので(買って到着待ち)、そうだ、これが手元にちょうどある!と急いで見てみました。ロバート・マッギーという音楽ドキュメンタリーばかりを25年間も撮っている白人のおっちゃんの若い頃の作品。「Last of the Mississippi Jukes / 日本未公開 (2003)」というモーガン・フリーマンが出演の超マニアックなブルースについてのドキュメンタリーも撮ってた。この人が若いのもあってか、随分とサン・ラーのヒップな世界を見事映像に残しているんですわ!!これは最高!おっちゃん、でかした!
サン・ラーのインタビューに加え、サン・ラーのバンドであるジ・オルケストラのメンバーにも話を聞いている。そこからは、サン・ラーのバンドリーダーとしての素質が明らかになっている。そして彼等がサン・ラーの世界を表現しようと集っているのがよく分かる。そして練習途中にインタビューを受けたメンバーが、楽器を引っ掛ける首輪をそのままつけて話しているのも、自然でカッコイイ。そしてサン・ラーはあのネイション・オブ・イスラムのイライジャ・ムハンマドと遠い親戚であるそうだ。この2人にはどうも人を惹きつけ、導くパワーがあるらしい。その2人が奴隷時代に付けられた名前を捨てているのも興味深い点だ。
サン・ラーと言えば、土星に行った男。ジョージ・クリントン等にも現れているように、アフロフューチャリズムとも言われている黒人と宇宙との関係を一番最初に語った男でもある。今だったらN.E.R.D.のファレル・ウィリアムスやキッド・カディなんかも彼の遺産と言えるだろう。個性的な衣装に独創的な音楽。宇宙に完全にイってしまっている人である。シンセをDJのスクラッチのようにパフォーミングしてみせるサン・ラー。そして彼は最後に語る。「ヒストリーはHis-Storyで彼の物語であって私の物ではないし、貴方の物でもない。それで、あなたの物語は?」と。サン・ラーようなオリジナルで新しい物を作り上げた人がこのように語ると実に説得力があって、カッコイイ。ゾクゾクする。
ちなみに誰も興味ないけれど、私の歴代の彼氏の90%がスター・トレックかスター・ウォーズの大ファン。いやみなかなりマニア。最近、スター・トレックのウフーラを演じていた二シェル・ニコラスがマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師もトレッキーだった事を明かした。ニコラスが番組を降りようと思っていた時に、キング牧師は番組に残るように説得した。あの現実的な問題に直面し戦ったキング牧師だって、宇宙にロマンを求めたアフロフューチャリズムの持ち主だった...
とにかく「Space Is the Place / スペース・イズ・ザ・プレイス (1974)」といい、サン・ラーはくすぐられるわー。
(5点満点:DVDにて土星に行ってしまったサン・ラーと交信しながら鑑賞)