この舞台が数々の賞を受賞したと言うニュースを聞いてからというもの、ずっと見たいなーと思い続け、でも舞台だから無理ーと諦めていた所に、スパイク・リーがこの舞台を映像化すると聞いて、どんだけ喜んだ事か... しかもスパイク・リー先生ですよ。私にとって盆と正月がいっぺんに来たとはこの事です。
テレビ放映での正式タイトルは「Passing Strange :The Movie」です。日本のドラマが映画化されたみたいな感じ。ちょっと残念。タイトルだけはいつものリー先生らしからぬセンスの無さ。実はこの作品、去年の夏ごろにアメリカではペイ・パー・ビューにて一足先に公開されてました。そして今度はPBSというチャンネルで1月13日に一般公開され、その前日にアメリカではDVD発売されました。多分、私の所ではDVD入って来ないだろうなーと思ったので、その前にテレビで見た方が確実という事でテレビ放映で見ました。それまでに家事を全て済ませて、完璧な状態で見ました。
という訳で、私もテンション高かったせいか、この舞台のテンションの高さも最高でした。いきなりオープニングから「オバマが...」とか出てきます。そうか、まだまだ大統領選の頃にやっていた舞台を撮ってたんですよね。
舞台はこの映画でナレーション的役目を果たしているスチューの自伝的な物語。70年代のロサンジェルスのサウスセントラルからヨーロッパへと旅立つ若者(役名は無し)が主役。最初はゴスペル音楽に触れるのですが、何となくタイラー・ペリーに通じる物があるのかなーと思ったら、全然違います。でもアメリカの黒人の青少年がどのように教会と関わっていくのかを見るのには興味深いと思います。お母さんと喧嘩しながら無理矢理教会に行かされます。でもそこでは衝撃的な事があったりして、中々面白いんです。教会の合唱部でマリファナ吸ったり、その後はパンクロックをやり始めてエンジェルダストにはまったり...そして自由を求めてアムステルダムへ... スチューの語り、そして歌にも風刺があったりと飽きません。何しろ、演者の汗が凄いのです。それだけ熱のこもったステージで、映像でも十分に伝わってくるんですよね、あのステージの熱度が。そしてこの舞台の面白さは、若者とお母さん以外の演者は全て何役もこなしているのです。場所はいろいろ変わるけれど、出てくる顔は同じ。色んな人が居るけれど... 上手い演出でしたね。
ステージの電飾とかも綺麗。この舞台からトニー賞にノミネートされたDe'Adre Aziza(ディアドレ・アジザでいいのかな??)が、評判どおり良かった。主役の若者を演じたダニエル・ブレイカーの飄々した演技も笑った。スチューはどう見てもCee-Loにそっくり。ソウル親父のCee-Loとはちょっと違って、このスチューは相当なパンク親父。いやこの舞台で描かれたようにゴスペルやジャズにも触れているんですが、生き方がパンクですね。みんな即興性もある人達。舞台役者ですね。
スチューはこの舞台のオフィシャルサイトで「(GW)ブッシュのお陰でこの作品は出来た。真剣に。ブッシュは自分のジェットが持っている程のお金を持ちながら、大統領になるまでヨーロッパ等の海外に出かけなかった。そういった外交への無関心が戦争に繋がっていったと思う。そういったブッシュや取り巻きたちの無関心さや、自分が支配しようとしている世界を知ろうともしらない馬鹿ども達に我々は苦しめられているんだ。」と語っている。確かにこの作品は若いうちに世界に触れる楽しさも表現している。
私はこういうのをもっともっと見たいなー。とっても新しい感覚の舞台です。最近は舞台も近くなってきたので嬉しい限り。この勢いでデンゼル・ワシントンの「Fences」も映像化されないかな。
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(5点満点:TV放映にて鑑賞)