Tyson / 日本未公開 (2008) 620本目
I NEVER think I can beat Mike Tyson
去年のカンヌで評判が良かったし、他の映画祭に出展したりで見たいなーとは思っていたけれど、全米でも限定公開だったので、見れるとしたらDVDだろうなーと思っていた。やっとアメリカでDVDが出ましたね。待ちましたよ。
マイク・タイソンのドキュメンタリーです。とは言え、タイソンにとって日本という国とは数奇な運命であって、それもあって日本にもファンも多いし知名度も抜群。日本に来た時の女遊びはボビー・ブラウンと共に伝説でありますよね。まあー、その辺も含めて自分の言葉で赤裸々に自分の事を語っております。そういえば、マイク・タイソンのイメージと言えば、マスコミに植えつけられたやんちゃな「バッドボーイ」の印象しか無いんですよね。タイソンが自分語りをしていても、取り上げられるのは派手な発言した時だけでしたからね。色んな意味で興味深い映画でした。この映画は実際の古い映像とマイク・タイソンの語りだけで構成されているんです。第3者がマイク・タイソンを語る事もないです。それを実現させたのがタイソンとは長年の付き合いがある映画監督ジェームス・トバック。彼はアカデミー賞にノミネートもされた事のある脚本家であり監督。映画作家です。ウータン・クランとかロバート・ダウニー・ジュニアやブルック・シールズとかが出ていた「Black and White / ブラック AND ホワイト (1999)」というアンサンブルキャストの映画も撮ってます。その映画でマイク・タイソンをマイク・タイソンとして使ってます。その作品ではタイソンの陰と陽を使っていましたが、この映画でもその陰と陽が見えるドキュメンタリーでした。
この映画を見た感想はマイク・タイソンは複雑な人だなって感じました。真逆の要素が極端に詰まってる人。いや人類皆そうだと思うんだけど、普通の人はそれが上手くバランスが取れていて、そんなにそれで悩む事もないんだろうけど、タイソンは極端過ぎるから自分でも分かってるんじゃないかな?ボクシングは抜群に上手いけれど、生き方が抜群に下手。女遊びの数も多いけれど、女選びは下手。繊細だけど鈍感。後は、もしトレーナーでメンターのカス・ダマトが後10年長生きしてくれていたら、マイク・タイソンの人生もだいぶ違っていたんだろうなーとも感じました。でもそれが彼の人生なんですよね。今改めて見てみると、タイソンはヘビー級にしては小さいんですよね。80年当時は、随分と大きく見えたんですけどね。絶対的な強さがあって、誰もタイソンを負かす事は出来ないと信じてました。なのでタイソンが来日した時に偶然にどこかで会ってしまって、タイソンに気に入られたら抵抗出来ないから私の人生捧げるしかないと思ってました。その可能性0.00001ですけど。大好きな鳩との思い出とか恩人カス・ダマトについて話す時は、慎重で言葉を選んで話しているのが印象的でしたね。もう途中は、こんなタイソンを見られるなんて!と思う位。子供の頃にブルックリンに引っ越して、そこで苛められたタイソン。その時の事を話すのが辛そうでしたね。また最初のボクシングの対戦でも怖かったと素直に話す姿が印象的。カスとの思い出を語るシーンと、カスとの記録映像のシーンはこちらも涙無しには見られない場面でした。カス・ダマトも「俺の功績をこいつに残したかった」と語ってたりします。
でもドン・キングとRobin Givens (ロビン・ギヴンズ)との事は、我々が想像するマイク・タイソンのイメージのままで話してましたね。ドン・キングの事については本当に酷い。でもそれだけ酷い仕打ちを受けていたみたいですね。かなり虐待されたとも言ってましたし... 「彼はブラザーだけど、悪いマザーファ××さ!」と言ってました。ドキっとさせられたのが、ロビン・ギビンスとバーバラ・ウォーターズのインタビューを一緒に受けている映像。タイソンが横に居るのに、タイソンから受けた暴力についてギビンスが語ってます。でもタイソンは取り乱す事もなく、その話しを冷静に聞いてるんですよね。それについてタイソンはやっぱり冷静に「あれを聞いて、俺が怒る姿を奴等は欲しがっていたのさ。だからやらなかった。」と語ってました。そんな冷静な部分もあるんですよね、タイソンには。そういう見た事もない想像もした事もないタイソンの姿が見れて面白かった。これがタイソンの真実の全てではないと思うのだけど、ここに映し出されていた姿の全てはタイソンの真実かなと思います。難しい表現ですかね?
タイソンには同タイトルのテレビ映画「Tyson / マイク・タイソン/傷だらけのプライド (1995)とかもあってややっこしいですが、そのテレビ映画もこのドキュメンタリーと似てますね。同じくタイソンへ感傷的で意見が一辺倒。でも出来はなぜか、こちらのドキュメンタリーの方が興味深いかもしれません。タイソンという姓名はシシリー・タイソンもそうだし、有名なチキンの会社もタイソンですが...映画タイトル「タイソン」だけでマイク・タイソンとなってしまう程の知名度なんですよね。そんなタイソンも10代の頃には、ロッキーのポスターのあるジムで練習していたんだなーとこの映画のとあるシーンで思いました。
ラストには「40歳まで生きていられるとは思ってなかった」と語るタイソン。「孫も見たい」と普通に語る40代のマイク・タイソン。カス・ダマトの功績は、ホンの僅かかもしれないけど、タイソンには残っていたんだと安心させますね。この映画は本当にマイク・タイソンへのイメージを覆します。監督のジェームス・トバックの采配が光ますね。ポイントポイントでタイソンの言葉が重なり合いリフレーンするシーンがありますが、タイソンの置かれていた環境と彼の言い分が出ていたと思います。
長くなりましたが、ミュージシャンのNasが曲を提供しています。タイソンについてラップしてます。Nasは映画のプロデュースにも携わり、NBA選手のカーメロ・アンソニーもプロデュースに携わってます。そういえば、この前レイトナイトのトークショーを見ていたら、タイソンがゲスト出演していた。この映画のDVDのプロモと、あとゲスト出演している「Hangover」という映画のプロモで出演していた。「Hangover」では踊りまで披露しているらしい。タイソンのこれからの生きる道はそっちなのかなー。
感想はこちら。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)