SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『アメリカ黒人映画傑作選』コメントに寄稿。(4/18/25)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/24)
*『クワイエット・プレイス:DAY 1』コメントに寄稿。(5/31/24)
*映画秘宝 4月号にて、ベスト10に参加。(2/21/24)
*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/21/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
過去記事

メール

Murder in Mississippi / マーダー・イン・ミシシッピ/炎の十字架 (1999) (TV) 980本目

私も何度か書いているトレイヴォン・マーティン事件がどんどんと広がっていますね。この前、半日ずっと並んだ事があって、すぐ後ろに居たのが、アジア系の女性(多分フィリピン人?)と黒人の女性の職場仲間の2人。iPodを忘れ、iPhoneなんて持っていない超暇な私は、ひたすら聞こえてくる人の話に耳を傾ける。すぐ後ろの2人はそんなにうるさい方ではありませんでしたが、ある時そのすぐ後ろの黒人の女性が興奮して声が大きくなっていて、私にも聞こえてきたのです。彼女はトレイヴォン・マーティンの事件について話しているのが、すぐに分かりました。彼女は「この事件で、黒人のみんながなんであんなに怒っているか分からないわ。たった一人の黒人少年が白人に殺されたからって怒る事じゃないじゃない!黒人対黒人の犯罪はどうなのよ?もっと沢山の人が命を失ってるわ!!」とかなり激怒。そして今日になってジャーナリストのファン・ウィリアムスも「黒人対黒人の殺人はどうなんだ?」と書いてますね。でもその話を聞いていて、ポイントがずれてきれているなと思ってしまいました。この事件は黒人対白人(ジマーマンは純白人じゃないし)だからという訳じゃなく、犯人が黒人でもちゃんと処罰を受けていない事が問題なのに...。とはいえ、ある意味その若い黒人女性もポイントを突いているところはある。ジマーマンが黒人だったら、こんなに騒がれたか?とも思う。しかし、今までの歴史が白人対黒人だった訳で、その歴史が200年もある訳で...やっぱり加害者が白人だとすると、黒人の人々は敏感に怒るわけで... 前置きが長くなりましたが、公民権運動では白人の活動家も被害者になった歴史もある訳で...という訳で、この映画です。

この映画の題材となったは、1964年にミシシッピーで起きた殺人事件が元。「Mississippi Burning / ミシシッピー・バーニング (1988)」も同じ事件を描いている。でもあちらはフィクション、こちらはほぼ史実通り。ミシシッピーは公民権運動にとって、本当の戦場だった。多くの活動家が血を流し、命を失っている。NAACPの代表だったメドガー・エバースもそう。そのミシシッピーで活動する活動家達が口をそろえて言っていたのが、「ネショバ地区は危険だ」。ブレア・アンダーウッドが演じたのが若い活動家ジェームス・チェイニー。ミシシッピーで生まれ育って、ミシシッピーを変えようとしていた男性。ネショバにも出向き、住民に投票登録をするように呼びかけている。そして夏にニューヨークから公民権運動の為にやってきたのが、トム・ハルスとジェニファー・グレイが演じた夫婦。ジェームスは当初はユダヤ人の活動家を信用できないと思っていたが、2人の献身的な活動でジェームスも少しずつ心を開いていくのです。しかも2人はネショバにて少しずつ成果を挙げていく。しかしそれが悲劇へと繋がってしまうのです。「ミシシッピー・バーニング」は、殺人を追う架空のFBIがヒーローでしたが、こちらは実際に活躍した若き活動家達がヒーロー。彼等が殺されてしまうまでが描かれております。という訳で、学校の教材にするなら「ミシシッピー・バーニング」なんかよりも、こっちの方がおススメ。分かりやすいし。あの有名な画家ノーマン・ロックウェルもこの事件を元に1つの絵を描いております。題名もこの映画と同じ。どうやらこの事件と、別の事件の写真を元にしているみたいですね。

でもさすがにブレア・アンダーウッドは南部の男性には見えなかったかなー。発音も綺麗。都会的過ぎるわ。活動家スー・ブラウンを演じた女優さんが素敵!と思ったら、彼女はラルフ・アバーナシーの娘さんだった!!いちよう知らない人のために...ラルフ・アバーナシーはキング牧師の右腕ね。彼女が「ウィ・シャル・オーバーカム」を歌うシーンは涙ものですわ。彼女は何度父の歌う「ウィ・シャル・オーバーカム」を聴いたのでしょうか...

感想やあらすじ等はこちら

(4.5点/5点満点中:3/24/12にDVDにて鑑賞)

トレイヴォン・マーティンのアップデート

この前、だいぶ溜めてから書いたので、もうアップデートも平気かな?と思っていたのですが、あれから思っていた以上に話題となっているようなので、アップデート。

トレイヴォン・マーティンの事件自体の詳細はこの前のエントリーをご覧ください

オバマ大統領がトレイヴォン・マーティンの事件について話す。「彼の両親には特に伝えたい。もし私に息子が居たら、トレイヴォンに似ていただろう。我々アメリカ人全員がこの事件についてもっと真剣に考えなくてはならないと、彼の両親が思って当然の事だと思っております」と述べた。

そして昨夜ツイッターにも書いたのだけど、日本のマスコミがこの事件を単に「白人対黒人」の対立だとまとめている所が多いのが気になる。トレイヴォンを殺したジマーマンはヒスパニック系の白人である。ジマーマンの父は白人とも言わずに「息子はヒスパニックだ」と話している。所謂、クー・クラックス・クランを形成するような白人層とは全く違う。ジマーマンには黒人の友人も少なからず居た。この事件の一番の問題は「ステレオタイプ」である。それは白人だけが持つものだけでなく、我々日本人だって持っているものだ。だからこそ、この事件は複雑で深い。

トレイヴォンはフード帽を被っていた。それがジマーマンに「不審者」だと思われたステレオタイプの原因だとも言われている。そしてニュースアンカーマンのヘラルド・リベラは「黒人やヒスパニックの子供達を持つ両親は、子供にフード帽の洋服を着ないように注意した方がいい。フード帽が今回の事件でとても責任となっている」と語り、多くの黒人ジャーナリスト達がリベラを非難している。ちなみにリベラはヒスパニック。
Geraldo Rivera: Trayvon Martin's 'Hoodie Is As Much Responsible For [His] Death As George Zimmerman' (VIDEO) | HuffPost

問題はフード帽じゃない。ジマーマンの行動に問題があったのだ。キャンディとアイスティしか持っていない少年を散々付けまわし、助けを求めている丸腰の少年を銃で殺したその行為と、なんら対処しない警察こそが問題なのだ。リベラのように黒人やヒスパニックの両親が子供にフード帽を着ないように注意する前に、全両親が勝手なステレオタイプで簡単に銃を持って人を殺してはいけない事を教えるべきなのだ。

だから、3月21日にニューヨークにてトレイヴォンの追悼及び討議の意味を込めて「フーディー・ミリオン・マーチ(フード帽でミリオン行進)」が行われたのだ。

そしてNBAマイアミ・ヒートの選手達は、23日の試合でトレイヴォンへの追悼と協力の意味意味を込めてをみんなでフード帽を被った。
NecoleBitchie - Read our reviews, compare and buy the products on the market. We can help you find the best deal for you!

黒人専門TVチャンネルのBETでは、月曜日に「Shoot First: The Tragedy of Trayvon Martin」というスペシャル番組を放送予定。
http://www.examiner.com/celebrity-headlines-in-national/bet-announces-news-special-shoot-first-the-tragedy-of-trayvon-martin

アメリカ全国で行進やイベント運動が行われる予定。下のリンクはそのスケジュールがまとめられている。
http://www.eurweb.com/2012/03/nationwide-schedule-of-trayvon-martin-events-and-rallies/

そしてトレイヴォンが殺された時に持っていたというキャンディ「スキトルズ」が注目を集めている。スキトルズは、「テイスト・ザ・レインボウ」というキャッチフレーズで御なじみ。レインボウは様々な色から形成されているので、他民族を象徴しているとも言われ、あのジェシー・ジャクソンの活動機関の名前も「レインボウ・プッシュ」。そのスキトルズの会社も声明を発表。両親や家族に哀悼の意を表明し、このような形で宣伝となってしまった事にとても残念と思うと広報は話している。
Skittles Speaks Out On Trayvon Martin Tragedy | HelloBeautiful

トレイヴォンの悲劇は、今エメット・ティルの再来とも言われている。1955年に起きた悲劇がエメット・ティル。白人女性に口笛を吹いたというだけで、殺されてしまった男の子。同じようにティル少年を殺した犯人達は無罪となっている。しかし何度も書いているように、ティル少年の事件と違うのが、「白人対黒人」という対立ではないという事。このトレイヴォンの事件は人々にある「ステレオタイプ」の恐ろしさを問うている。

あれから57年。このような悲劇は繰り返してはいけない。

フリーウェイ・リック・ロス

ラッパーのオフィサー・リック・ロスじゃない方のモノホンのギャングスタであるフリーウェイ・リック・ロス。「Planet Rock: The Story of Hip-Hop and the Crack Generation / 日本未公開 (2011) (TV)」では、彼がクラックに重曹を混ぜ始めたとの事だった。そのフリーウェイ・リック・ロスの自伝映画の話は前々から何度も書いてますが、そのキャスティングについてフリーウェイ・リック・ロスが語っている。ジェイミー・フォックスはリック・ロスに直接電話を掛けてきて、脚本が気に入り、是非参加したいと語っていたとの事。またライアン・ゴスリングやマーク・ウォールバーグも興味を持っていることを明かしている。

ハロルド・ペリノー

人気TVシリーズ「Lost」等で知られるハロルド・ペリーノが「The Hurt Locker / ハート・ロッカー (2008)」で見事に女性初のオスカー監督賞に輝いたキャスリン・ビグローの最新作のウサマ・ビン・ラディンを描いた作品に出演する事になっている。どの役を演じるかは、他のキャスト同様にまだ秘密となっている。

Harold Perrineau Joins Kathryn Bigelow's 'Bin Laden' Film - blackfilm.com/read | blackfilm.com/read

My Week with Marilyn / マリリン 7日間の恋 (2011) 978本目

マリリン・モンローが歩けば、恋話一つ生まれる...
まあマリリン・モンロー描けば、ハズレは無いよねー。こんなに魅力的な女優は居ないと思うんですわ。劇中では、「私ってばもう3回も結婚してるのよ」なんて言ってましたが、我らのハリ・ベリーちゃんだって、結婚は2回だけど、この前のガブリエル・オーブリーとは子供まで作ったし、事実婚。そしてまた今度フランスのオリヴィエ・マルティネスとも結婚へ秒読みなので、まあ数としてはマリリンとは同格。スター性だって、全然負けてない。でもそんなハリ・ベリーちゃんだって、やっぱりマリリンにはなんとなーく勝てないんですよねー。まあハリちゃんがこの先オリヴィエと別れて、オバマと不倫して...って具合になったら、マリリンに勝てるかもだけど、まあオバマにしてもハリちゃんにしても性格的にその可能性は無いでしょうねー。まあ私が言いたいのは、マリリンは今でも昔でも別格。アンジェリーナ・ジョリーも結婚の数は同じだけど、やっぱりマリリンとは全然違う。もう後にも先にもこんな女性は現れないと思う。

マリリンのハズレは無いにしてもですよ、この映画の描き方は上手いのです。たった1週間の恋愛を描いただけなのに、マリリンの多くを描いているのです。どうしてマリリンは男性の愛を執拗に求めたのか、どうしてマリリンは難しい性格になってしまったのか、そしてマリリンの女優としての生き方までもが描かれている。マリリン・モンローローレンス・オリヴィエと共演した「王子と踊子」の撮影でイギリスに訪れた時のことが描かれていて、ヴィヴィアン・リーとかまで出てくるその撮影秘話も知れるのが、これまた映画ファンの心を鷲掴みにするね。これ見ると「王子と踊子」を見たくなっちゃうのです。

ミシェル・ウィリアムスはさすがに「マリリン・モンローにそっくり!」とは思えないけれど、あのお風呂場のシーンで上目遣いにコリンを見る仕草の時にはマリリンでしたねー。でもやっぱり声がちょっと違うかなーとは思う。でも彼女なりのマリリンを体当たりで演じてますね。この人は本当に女優として魅力的だと思う。

マリリンへの禁句ワードが「クレイジー」。これを聞くと、マリリンは平常心を失う。私、年代的には「トミーとマツ」の「この女男がー!」を思い出してしまいましたわ。

やっぱりマリリン可愛いわー。まあ不倫の許されない恋なんだけど、そんな事思わせないのがマリリンの魅力ね。マリリンには恋が合う。ルーシーっていう初心な女の子が出てくるのが、これまたいいのよね。実はルーシーの方が上手。

この映画にもちゃんとバーのオヤジの台詞の伏線があって、オチが見事にありましたねー。

オフィシャルサイトはこちら

(4.5点/5点満点中:3/19/12にDVDにて鑑賞)

The Sunset Limited / 日本未公開 (2011) (TV) 979本目

元々舞台劇をサミュエル・L・ジャクソン出演でテレビ映画化。あの宇宙人のトミー・リー・ジョーンズが監督。と言うか、この作品、サミュエル・L・ジャクソントミー・リー・ジョーンズしか出てきません。2人芝居。しかもサミュエル演じる男の住む汚いアパートの一室が舞台の密室劇。この作品には役名もない。ジョーンズが「ホワイト」で、ジャクソンが「ブラック」。ホワイトさんは大学の教授、ブラックさんは職業不明だけどユニフォームみたいのを着ていたのでブルーカラー。ブラックさんは、前科あり。そしてルイジアナ出身で、今はニューヨークのゲトー住まい。ホワイトさんは、実は電車に投身自殺しようとした所を、ブラックさんに助けられたのです。ブラックさんは、自分の信じる神の助けを借りて、ホワイトさんを自殺から救おうとしている。でもホワイトさんは、完全なる無神論者。ブラックさんが神の言葉を言っても、すべてそれらを論破しちゃう。2人は平行線をずっとたどっていく。所で、タイトルはアメリカの鉄道会社アムトラックの路線の名前。ニューオリンズからアメリカの南端を国境ギリギリにロサンジェルスまで走っていく路線が、サンセット・リミテッド。2人は、ギリギリな所をずっと平行にたどっていく訳です。

密室劇なので、殆どが2人の会話のみ。見せ所もその2人の演技だけ。しかも難しい話をしているので、ちょっと辛いかも。ブラックさんが刑務所に入っていた時の話は、ちょっと興奮。でもラストは、ハリウッド映画ではない感じが良いですね。ハリウッド映画にありがちな安易に神が全てだと説く作品じゃない。あんなに聖書の話とかしているのに、神プロパガンダにはなっていない。そんな映画に慣れていた私は、最後「おう!」ってなりました。

トミー・リー、さすがにハーバードに進んだだけあって、本当に頭良いんでしょうねー。普段はこんな難しい話してそうな雰囲気。まあこういう難しい作品を選んで映画化しようとする位ですからね、この手の感じが好きなんでしょうねー。そして、このブラックさんを演じられるのも、今の所サミュエルになるんでしょうねー。南部から出てきた、心優しい男。必死に過去の過ちを償おうとする男。面白い!でも難しい過ぎるんだよねー。

感想やあらすじやオフィシャルサイトはこちら

(3.5点/5点満点中:3/22/12にDVDにて鑑賞)