ブラックヒストリー月間でやっていましたブラックムービーの偉人さんいらっしゃいのコーナー、残念ながら本日が最後となりました。最後のお客様はロバート・タウンゼントとキーネン・アイボリー・ウェイアンズのお2人様です。
っていうか、「計画」という大人ぽい言葉をしらない私は、行き当たりばったりで思い出した人々を見た映画を中心に紹介してきたのですが、最後になってこの2人をどうしても紹介したいなーと思っていた。ま、この2人だけは3月になっても一回だけ無理やり紹介しようか?と思っていたのですが、今年はうるう年。うるう年ラッキー!!
スパイク・リーの「She's Gotta Have It / シーズ・ガッタ・ハヴ・イット (1986)」が1986年の製作。こちらは1987年の製作。両者共に「ゲリラ映画製作」とも言われる、セルフ映画製作によって出来た映画です。もちろん両者共に若い黒人が監督だったというのもあるし、ほぼ同じ時期に出来たというのもあって何かと比較されます。こちらの映画は、ロバート・タウンゼントがクレジットカードを作り限度額ギリギリまで使って、作った後に気に入った制作会社にお金を出してもらって出来た映画です。撮影場所代を払うのをケチる為に、UCLAのスタジャンやトレーナーを着て学生製作の振りをして撮影したり、フィルム代をケチる為に必ず1テイクで済ませるという方法が使われてます。もちろんこれら全てが彼等の武勇伝となり、カルト人気となっていくのです。スパイク・リーの「シーズ・ガット...」では、後に出たスパイクの製作日記がありました。こちらもそういった日記があったら、かなり面白かっただろうなーと思います。何よりこの映画を作るという事自体が楽しかっただろうなーと想像します。
なんで彼等を最後に選んだか?確かにロバート・タウンゼントもキーネン・アイボリー・ウェイアンズも輝かしい賞に選ばれたりする事はない。スパイク・リーみたいに政治的な話をしてご意見番となる事もない。スパイク・リーみたいに有名な映画学の大学も出ていない。でも私は彼等も偉大で素晴らしい監督だと思っている。なぜならこの映画が現代ブラックムービーの始まりじゃないか?と思うからです。「自分」という個性を大事にしたい。その思いが詰まっております。もちろん、ハリウッドにおける黒人俳優達のジレンマを描いた物ではあるのですが、それよりも主人公はボビー・テイラーという個性を認めてもらいたいと思っている。黒人の前に個性が尊重される。ありそうでなかった。まー、それをサラリとコメディ映画にしちゃう凄さ。何で認められないの??確かにショットは芸術的な美しさはないけれど、この映画でのラストの方にある撮影前にボビーが上に居る3人に部屋はあっちだよと言われるシーンとかのショットは素晴らしいと思うのですけどね。
またここである「Sneakin' In The Movies」は後に「In Living Color」では、「Homeboy Shopping」と「Men on Flims」という2つのコントに枝分かれしたし、ここでチュチュを着てカラテを披露しているスティーブ・ジェームスは「I'm Goona Git You Sucka!」では、キーネンの味方カンフー・ジョーとして参加してるし、ヘレン・マーティンは「Don't Be a Menace to South Central While Drinking Your Juice in the Hood / ポップ・ガン (1996)」に出演して、かっこいいお婆さんを演じてました。何よりデーモン・ウェイアンズやジョン・ウィザースプーン、ポール・ムーニー、フランクリン・アジャイー等が出演している。ラスティ・カンディエフも出演していて、彼は後に「Tales from the Hood / 日本未公開 (1995)」や 「Fear of a Black Hat / 日本未公開 (1994)」、そして「デイブ・シャペル・ショー」の監督もしている。ここでやっていた事をそれぞれで実を咲かせているのだ。
スパイク・リーが偶然アーネスト・ディッカーソンと同級生だったように、こちらは偶然にシカゴ出身のロバート・タウンゼントとニューヨーク出身のキーネン・アイボリー・ウェイアンズがコメディクラブで出会い2人で車一台でロサンジェルスに来た。そして映画作りに必要な愉快な?仲間達が揃っている。彼等の自分達の映画を作りたいという思いが、1テイクに込められている。ここから全てが始まった「種」みたいな映画です。何よりキーネンのジェリー・カールの部分が何度見ても笑っちゃうんだよね。大好き。
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(5点満点:DVDにて鑑賞)