ブラックムービーの偉人さん、6人目?7人目かな??は、シシリー・タイソンさんに御越しいただきました。
先日悔しくもオスカーを逃してしまったルビー・ディが東の大御所ならば、シシリー・タイソンは西の大御所。いや、南の大御所?いや、シシリーもニューヨーク出身ではあるのですけどね、南部女性をやらせると右に出る者はいない... 別に南部の言葉や訛りを駆使している訳でもないのですが、南部の女性を演じるとシックリ来る...それがシシリー・タイソン。○○を演じるという事は、言葉だけの問題じゃないという事を教えてくれる女優さんです。シシリー・タイソンは1972年の「サウンダー」という私の映画人生を変えた作品でオスカーにノミネートされています。その次に出演したのが、この作品。当時41歳のタイソンが110歳の女性を演じています。その特殊メークを担当したのが、「Norbit / マッド・ファット・ワイフ (2007)」で今年のオスカーにもノミネートされていた特殊メークの巨匠リック・ベイカー。作品をアシストする素晴らしいメークです。これまた、タイソンがかすれた声で素晴らしいんですよ。
110歳の女性が経験した奴隷時代から奴隷解放、そしてこの舞台ともなっている1960年代の公民権運動までを生き証人として語っていくドラマ。さすがに見ごたえあります。原作が「A Lesson Before Dying / ジェファーソン/冤罪の死刑囚 (1999)」がオプラブック入りしているアーネスト・J・ゲインズ。彼の歴史に対する調査と熱い文章は、絶対に観客を惹きつけます。
主演がシシリーという事で「Mama Flora's Family」も思い出しました。同じように女性が歴史を語っていくストーリー。「Mama's...」は、家族の歴史を振り返ります。2時間30分ぐらいある映画なんですが、かなり見応えあるので、興味ある方は是非一緒に見てもらいたい作品です。ブレア・アンダーウッドやクイーン・ラティファ、ヒル・ハーパー等が出ていたと思います。
同じ時代に活躍したパム・グリアとは正反対の方向で活躍したのがシシリー・タイソン。ブラックムービーと言えども、その形は様々です。どちらか片方が良いとか、黒人の姿により近いという訳でもなく、その様々な形全てが黒人の姿。ニューヨークの黒人だけが黒人の姿でもないし、南部の黒人の姿だけが黒人の姿でもない。様々な形が当たり前なんですが、黒人の姿なんです。だからこそ、パム・グリアのような女優とシシリー・タイソンのような女優が欲された。シシリー・タイソンも映画の中で歴史的な偉人を演じたりして、別の形のヒーローを演じていた訳です。この映画はフィクションですが、やはり主役のジェーン・ピットマンは激動の110年間を生き抜いたヒーローですから...
シシリー・タイソンは音楽好きには、ひょっとしたらマイルス・デイビスの元妻として知られているかもしれないですね。スクリーンでは「サウンダー」で共演したポール・ウィンフィールドと絶妙のコンビネーションを見せて、幾度も共演しています。今でいうアンジェラ・バセットとローレンス・フィッシュバーンのような感じ。違うとすれば、ウィンフィールドとタイソンは当時は付き合っていたという事。
ちなみにこの映画はテレビ映画の為にオスカーには参加出来ませんでしたが、テレビ界の最高峰の賞エミー賞に輝いております。その受賞は黒人女性として初の主演女優賞受賞で歴史になりました。
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(5点満点:DVDにて鑑賞)