私の世代で黒人文化が好きな人々は恐らくTLCのT-ボズの件で、鎌状赤血球症(Sickle Cell)について知った人が多いと思う。私ももちろんその一人。その時に、なぜかこの病は黒人に多く発症すると聞いて驚いた。先日、惜しくも他界したラップ・デュオ「モブ・ディープ」のプロディジーがこの病に生後3か月から患い、そして42歳という若さでこの世を後にしている(しかし今日発表されたニュースによるとプロディジーの死はこの病と関係ないらしい)。他にも『Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993) 』等で知られる俳優ラレンズ・テイト、そしてあのジャズ界の巨人マイルス・デイビスもこの病を発症している(いた)。この病の詳しい事は、専門的なサイトで確認して欲しい。そんな鎌状赤血球症について描いたのがこの『To All My Friends on Shore / 日本未公開 (1972)』というテレビ映画。あのフィービー・ケイツ(赤ビキニ)の叔父ギルバート・ケイツが監督。スタンダップコメディアンにして、80-90年代『The Cosby Show / コスビー・ショー (1984-1992)』にてお茶の間を席巻し、アメリカTV界のドンとなったビル・コズビーが主演・原案・音楽を担当している。
ブルー(ビル・コズビー)は空港のポーターや工事現場の小間使いなど、幾つもの仕事を掛け持ちして、真面目に家庭を守ろうと必死であった。妻のセレーナ(グロリア・フォスター)もブルーと入れ替わりで外で働いていたが、なかなか暮らしは良くならなかった。そんな彼らの一人息子ヴァンディ(デニス・ヘインズ)は体が弱く、2人は心配していた。特に母セレーナは、自分の弟を同じような症状で亡くしているので心配で仕方なかった。そんな中、ヴァンディが遊んでいる途中で倒れてしまう。精密検査で、鎌状赤血球症だと分かり、あまりいい状態ではなく、先も長くもないかもしれないと分かり...
あのビル・コズビーが100%真剣に真面目に取り組んでいるドラマ。コズビーが主演・原案・制作・音楽担当とコズビー色がかなり強い。かなりメロドラマ調ではあるが、それゆえにこちらも真面目に真剣に応援してしまう。息子、真面目でいい子。最後の方はダウンタウンの「チキンライス」調で泣けてくる!七面鳥じゃなくてチキンライスで良いよっていうアレ。親の葛藤と子供の成長を上手く描写させております。
タイトルはどういう事?って感じですが、病院の壁に貼ってある言葉から。「ジキル博士とハイド氏」などで知られるロバート・ルイス・スティーヴンソンの詩の一節。最後の最後まで観るととても納得なタイトルなのです。旅立ちの詩。
鎌状赤血球症の事はあんまり詳しくは知る事は出来ないかもしれないので、啓蒙映画としての役割はそこそこかもだけれど、映画自体は親子映画としてとても面白かった。
To All My Friends on Shore / 日本未公開 (1972)(3.75点:1564本目)