大好きなアフリカの映画監督ウスマン・センベーヌの監督作品。同じくセネガル出身のチェルノ・ファティ・ソウと共同で指揮を執った。共同とは珍しいですよね。チェルノ・ファティ・ソウはドラマ作品というよりも、教育系の映像を沢山撮っていた人らしい。なのでチェルノ・ファティ・ソウという監督がどんな監督かは他の作品を見た事がないので分かりませんが、この作品はセンベーヌらしいと感じました。センベーヌと言えば、その物語の語り口の上手さ、そして問題提起、そして自宅には名刺代わりに「抵抗者の家」と刻んでいた程のセンベーヌの何事にも屈しない精神を強く感じる。実際にこの映画が完成した時に、内容の問題から当時のセネガル大統領は自分の金庫にこの映画のフィルムを入れてしまったと言う。
この映画の面白さは、やっぱりセンベーヌの物語を語る饒舌さにある。この映画の物語は実際にあった事件。セネガルでは「チャロユの大虐殺」と呼んでいる。第2次世界大戦中に無事に帰還した兵士達が、地元の人々からの熱烈な歓迎を受け、誇らしげに町を行進する。彼等の顔からは、やっと故郷に帰ってきたという安堵感と、地元の人々からの歓迎の嬉しさがある。しかしそれはすぐに絶望へと突き落とされる。フランス人と同じように汗を流し、血を流してきたのに、植民地ゆえの雑な扱い。敵国のドイツやイタリアの白人捕虜兵士の方がまだまともな扱いを受けている。この辺は、同じ頃のアメリカ黒人兵士と同じなのだ。映画「Red Tails / 日本未公開 (2012)」のタスキーギ・エアメン達の自伝とかにも同じ事が描かれていた。支配下にある国の為に同じように戦った国の人々から、差別を受ける。何の為に命懸けて戦っているのか...なので、この物語の中でもアメリカの黒人兵士が出てきて、セネガルの兵士と交流する場面がある。間違いがあったが、そこから心を通わせるシーンがあって、とても美しい。センベーヌの上手さは感想にも書いたが、ディアッタという人物像をきっちりと描いた所にある。部下にも優しく聡明で尊敬されるディアッタを描いた事で、ラストが切なくなる。また口のきけないペイズという兵士の悲劇もこれまたラストを切なくさせる。彼も障害を抱えながら、皆と同じく支配下にある国の為に戦い、ショックを受けたのだから。また彼はまさかフランスが攻撃してきたとは思っておらず、最後まで敵国のドイツが襲ってきたと思っている。それもまた切ない。そして戦争によって声を失った男がみんなにちゃんと伝えられない切なさもある。それ故に大きな悲劇を呼んでしまった。彼等が戦争なんかに行かなかったら...
さすがにこの映画はフランスでは上映禁止になったらしい。フランスはこの前も「Think Like A Man / 魔法の恋愛書 (2012)」を他民族性を感じないと、上映禁止にしたばかり。意外と懐は小さい。でも第2次世界大戦中には、フランスの敵国でこの映画でも敵国として描かれているイタリアのヴェネチア映画祭では5部門で受賞。ヴェネチア映画祭に招待を受けた時に、大統領は金庫からフィルムを返してくれた。
アメリカにスパイク・リーあり、アフリカにウスマン・センベーヌあり!こういう作品を見ると思いっきり心が熱くなります。だから彼等が好きなのです。
(5点満点:5/30/12:DVDにて鑑賞)