同じ原作本が元の「The Catch / 飼育 (1961)」は知っていた。見たいなって思っていたけれど、レンタルは無いし、DVD化されているけど邦画のDVDってやたらと高いので見たことない作品をいきなり買うのは無理って思ってた。そしたら東京国際映画祭で上映されると聞き、なら行ってみようかなーと思った。そしたらこの映画も上映されるとの事。最初は行く気無かったんだけど、どうせ遠出するなら一気に2本見るか...という事で行ってきた。いつもチケット買わずにいると、やっぱり面倒だなって行かないと思ったから、先にチケット買った。正解だった。たぶん買ってなかったら行かなかったと思う。本当に遠いんだもん。上映はこの作品が先だった。
この作品はカンボジア出身の監督リティ・パニュの作品。彼はカンボジアの内戦をこの映画の主人公ポン君と同じく少年の頃に経験し、命からがら亡命。パリに渡ってからは、映画に興味を持ち学ぶ。その後はカンボジアを舞台にしたドキュメンタリーを撮っていて有名。という事で、この映画もカンボジアが舞台。そして一番先に書かなくてはならないのだけど、ノーベル文学賞受賞の日本の作家大江健三郎の短編小説「飼育」が元になっている作品である。大江の原作は第二次世界大戦末期が舞台になっていて、人里離れた村にアメリカ軍の飛行機が墜落して、唯一生き残ったアメリカの黒人兵を村人達が「飼う」という作品。初めて見る黒人に興奮を抑えきれない日本の少年達。しかし彼らは「観察」する事で同じ人間だと感じ、途中は触れ合いをもって親しみを感じていくのです。そしてこのひと夏の経験を持って、少年達は大人になっていく。短編で短いし、安い文庫にもなっているし、大江の作品なら図書館に絶対にあるので是非読んでから作品を見る事をおススメします。
このパニュの作品は少年達と黒人の繋がりを原作から割りと忠実に受け継いだ作品。そしてカンボジアの内戦の内情を描いている。子供達が戦争で親を亡くし、クメール・ルージュのイデオロギーに染まっていく姿が悲しい。戦争は子供達を犠牲にしていき、悪循環へと陥れる。そこに子供達の選択権は無い。親を選ぶ権利も住む場所を選ぶ権利も。ただ生き延びていく事だけを本能で感じている。
そしてこの上映後には監督のパニュと黒人兵を演じたシリル・ゲイと脚本家のQ&Aがあった。この映画で一点どーしても気になったのが、原作と結末が違う点。原作とは違う明るい未来がありそうな感じではあるんだけど、少年達がそこから抜け出せるのかは疑問に残った。質問時間が短く、私はちょうど真ん中で人がぎっしりと座っていたので、マイクリレーで迷惑掛かるなーとか思い、手を上げることを断念。意外と気にしいで小心者なのです、私。でもここに公式のいいインタビューがありました。私の疑問にも答えてくれてます。そうか、時代背景としてはあの名作映画「キリングフィールド」の前という事で、ああいう結末なのか!
(4.5点/5点満点中:劇場にて鑑賞)