Viva Riva! / 日本未公開 (2010) 911本目
アフリカの映画は今変革の時にある。
アフリカのコンゴ民主共和国の作品。簡単にコンゴの映画の歴史を書いてみる。1936年、まだコンゴがベルギーの植民地だった時代に政府が許可していない映画監督の映画撮影をコンゴ内で禁止させる。そしてそれだけで飽き足らず、1945年にはヨーロッパやアジア人以外は、映画館や公共の場やプライベートな場所でも映画上映場所への入場を禁止させる法律まで設立。しかし第2次世界大戦が終結していた1947年にベルギー情報局の映画・写真部門がコンゴでの映画に関してのポリシーを担うようになり、アフリカのついてのニュース映像やドキュメンタリーをベルギー国内に向けて作るようになった。そして1952年、レオポルドビル(現キンシャサ)にアフリカ人向けに映画製作を教える映画クラブまで存在していた。その頃にはカトリック系の牧師が「コンゴのカトリック系アクション映画センター(Congolese Center for Catholic Action Cinema)」を設立。目的はアフリカ人をキリスト教に改宗させるのと、お金を集め、そしてベルギーと教会への共鳴してもらう事。しかし1960年にコンゴが独立してザイールとなると、壊滅。モブツ政権下1979年には国立映画局が設立され、ここで映画に関する事全てが管理された。コンゴの映画人は、上で書いた映画クラブで学んだ者も多いが、フランスに渡った者、そしてベルギーで学んだ者の居る。この映画の監督ドジョ・ムンガは、ベルギーの国立映画学校で映画作りを学んでいる。
この映画は南アフリカの「Jerusalema / 日本未公開 (2008)」に続いて、90年代のアメリカのブラックムービーを感じさせるような映画なのです。でも「Jerusalema」もそうだったように、こちらもやはり「コンゴ」という国の個性を強烈にそして猛烈に出してくる。しかし堅苦しいコンゴの歴史についてのレッスンは一切ここには無い。ベルギーの植民地時代、そしてモブツ大統領の独裁時代...語りたい事は沢山あるように思うが、ここでは今のコンゴが明らかになっていく。
モハメド・アリとジョージ・フォアマンの世紀の一戦とも言われている「キンシャサの奇跡」の舞台ともなった、キンシャサの町が舞台。主人公のリヴァがアンゴラから10年ぶりに戻ってくる。沢山のガソリンを持って。コンゴではガソリン不足が続いていたのだった。しかしそれは手下として働いていたアンゴラのギャングから盗んだものだった。リヴァはキンシャサのギャングに売る事で沢山のお金を貰う事になる。そのお金を派手に使う。そこでたまたま出会うのが、赤毛の女性ノラ。ノラは、地元ギャングの女。ノラはリヴァを魅了していく。それを見たギャングが激怒。リヴァはそのギャングから追われるようになる。そして、アンゴラから来たギャングにも追われる。
90年代のアメリカのブラックムービーは、麻薬という物を取引して富を得ていた。麻薬なんていう人を滅ぼすつまらない物。しかし、ここでは人々の必需品の一つでもあるガソリンを取引するのです。そこでもうコンゴの個性が出ている。そして、アフリカの近隣国との関係も見え隠れしている。そして売春に腐敗した警官や軍人、そして物売りの子供達。アメリカでは見られない。そして会話にモハメド・アリとジョージ・フォアマンの「キンシャサの奇跡」が出てくるのも面白い。
しかし90年代のブラックムービーとは違うのが、かなりセクシー。いや90年代のブラックムービーもかなりセクシーな作品はセクシーだったが、あれ以上にセクシー。私がびっくりした位。リヴァがこっそりノラが用を足している所をこっそり見ていたり、リヴァとノラが格子越しにしたりと、まあ凄い。ノラを演じた女優さん、素晴らしいです。
アフリカ映画というと、独特なリズムで語られる誌的で牧歌的な作品が多かった。しかし最近では、このような新しい波も起きている。90年代のアメリカのブラックムービーのようだけど、その面白さを上手くつかった最高品を作っている。もっと説教ぽい映画を作る事も出来るだろう。しかし彼らはエンターテイメント性を失わずに、上手く政治的に絡めている。明るい未来が訪れるようなラストも心地いい。「Jerusalma」は白人監督だったが、こちらはコンゴ出身の黒人監督ドジョ・ムンガ。もうこれだから、アフリカ映画はたまらない...
(5点満点:DVDにて鑑賞)