こちらもニグロアンサンブル劇団の作品。ニグロアンサンブル劇団(以下NEC)については、先日書いたので割愛。そちらを御覧ください。監督がクレジットされていないが、NECでクレジットされていたので、多分舞台と同じダグラス・ターナー・ワードだと思う。という事はNEC創設者が自ら演出なのですよ!でも脚本はレスリー・リーという黒人男性。彼はこの作品を半自伝的と語っている。彼が自分を投影したのは、主役のおばあちゃんの孫ルーだと思う。彼はとっても真面目な学生でおばあちゃん子。若者特有の様々なプレッシャーを感じている年頃。ルーのお兄ちゃんは割りと上手く色々な事をやっているが、それでもワンマンな父親とは対立する。でも主役は先に書いた通り、おばあちゃん。このおばあちゃんを通して描かれる一家の歴史。おばあちゃんは誕生日を控えているが、最近心臓に不安がある。おばあちゃんは自分の思い出を振り返っていくのです。でもその過去はおばあちゃん子であるルーにとって、受け入れ難い過去だった。おばあちゃんは過去に3人の男性との恋愛を経験している。最初の男は情熱的だったが、若さ故に間違いもあった。2人目はおばあちゃんが働いている家の主人の息子。インターレイシャルカップルで問題が沢山あった。そして肝心な時に男は逃げる。3人目は真面目な男で牧師になろうとしている男だった。しかしおばあちゃんと恋に落ちる事で男は変わってしまう。真面目で誠実だと思っていたおばあちゃんの過去と向き合う事で、ルーは混乱してしまうのです。しかし、この作品の素晴らしさはそれだけじゃない。この一家の様々な人間関係を描いている所が凄かった。私も見ているうちにどんどんと惹き込まれていくのが分かった。このおばあちゃんの名前がルクレティア。古代ローマの話に出てくる女性と同じ。多分関係しているんでしょうね。
ワンマンで厳格な父でおばあちゃんの息子を演じたのが、Moses Gunn (モーゼス・ガン)。「Shaft / 黒いジャガー (1971)」ではギャングのボスであるバンピーを演じていた。彼もNACの創設時のメンバーで共同設立者。NECの多くの舞台に出演している。この舞台では歌声まで披露している!おばあちゃん役のフランシス・フォスターや、その若い頃を演じたジャネット・リーグも素晴らしい。ジャネット・リーグは、Tisha Campbell-Martin (ティーシャ・キャンベル=マーティン)とかポーラ・ジャイ・パーカーに似ている。
NECの底力に圧倒されました。
(5点満点:DVDにて鑑賞)