Moon Over Harlem / 日本未公開 (1939) 844本目
エドガー・G・ウルマーのオール・カラード・キャスト。所謂全黒人キャストという映画。ウルマーはチェコからアメリカにやって来て低予算映画を沢山作っていた映画監督。まあ30年代・40年代のロジャー・コーマンと思ってください。でもコーマンみたいに映画人を沢山輩出した訳じゃないですけど、ドラキュラで有名なべラ・ルゴシとフランケンシュタインで有名なボリス・カーロフを共演させたりしている。所謂売れるだろうと思ったら、食いついて低予算で映画を作ってしまうのです。ウルマー作品の中でもこの映画は群を抜いて低予算だったらしい。当時の8000ドル(今で約80万円)の予算で4日間で撮ったらしい。そしてウルマー作品の中でオール黒人キャストはこの作品だけな筈。
オープニングから当時華やかだったハーレムのアポロ劇場とかサヴォイとかコットンクラブの建物が煌びやかに輝いている映像から始まる。もう、その辺が低予算映画ぽいですよねー。安易。お客食いつくでしょ?みたいな。そして当時沢山あったギャング映画でもあって、主人公の一人がハーレムで悪い事しているダラー・ビル。「Dark Manhattan / 日本未公開 (1937)」や「Gang War / 日本未公開 (1940)」という映画があって、その両方のスターであるRalph Cooper (ラルフ・クーパー)はその煌びやかな時代のアポロシアターの司会者でもあった。なんて言うか、今で言うならジェイZみたいな男だったんじゃないかと。やってる事は違いますが、様々な事を上手くやっていたビジネスマンという事で。この時代に本物のギャングとして活躍していたバンピー・ジョンソン。「Hoodlum / 奴らに深き眠りを (1997)」ではローレンス・フィッシュバーンが彼を演じ、「American Gangster / アメリカン・ギャングスター (2007)」ではデンゼル・ワシントン演じたフランク・ルーカスのボスだったバンピー。彼等のような悪党が蔓延った理由には1929年の世界恐慌が関係していると思う。失業した黒人達は悪の道へと走った。だからこそこの時代にはギャング映画が多かった。
と映画に話しを戻す。その悪いダラー・ビルは本当に悪い。可愛い高校生のスーが居るミニーを騙して再婚。結婚式でいきなりスーを襲おうとする。最低な奴!スーちゃんが家に居ても襲おうとする。スーちゃんは幸せそうな母には言えない。でも我慢できずに言ったら、お母さんは全然信じてくれない。もう家出しかないでしょ!ちなみにお母さんがクラブでメイドをしている。お母さんに話に行くと、ここは貴方の来る場所じゃない!と怒るんですね。でも家出したスーちゃんは、美貌と美声を武器にクラブシンガーとして成長してしまうのです。物語は更に進んでいきます。これが全てじゃないです。クラブシンガーに成長してしまうのは、レナ・ホーンの時代だったからでしょうねー。安易な部分が多いですが、中々面白かったですね。みんなちゃんとした英語をしゃべっているのも面白い。
(3.5点5点満点中:DVDにて鑑賞)