黒人女性たちの髪の秘密、大体は知っているつもりだったけど、このドキュメンタリーは更にその上をいっていて面白かった。もちろんクリス・ロックらしい暖かい愛のこもった毒舌もあるからなのだけど。しかし面白いですね。この前に書いたように、まだ携帯が出る前に六本木で遊んでいた頃の私はスパイラルをしていて、一番細いロットで髪を酷使してクリクリにしてました。普通のパーマよりも時間もお金もかかるけれど、TVシリーズ「ER」のグロリア・ルーベンの感じが可愛いなーと思ってやってました。あの頃、やってた人が多かったのもあるし。しかし多くの黒人女性は逆。長く伸びているストレートの髪に憧れを抱いている。タイトルの「Good Hair」は、その事を指す。ガブリエル・ユニオンとかケリー・ワシントンみたいな最近の長い髪はみんなウィーヴなのは知っていたけれど、そのウィーヴがインドやマレーシアから輸入していたとは... しかも10万円もするとは!!いいのは35万にまでなるそう。プラスして、維持費も掛かりますからね。車並みですよ。一般の人はローンで買う人も多いとか。やっぱり「自然」へのこだわりから、カツラのような人口の物よりも高価だけど自然の髪が好まれる。インドやマレーシアでは女性でも宗教の関係で2回ほどトンスラを行う。その時の髪が黒人女性のウィーヴになっている。クリス・ロックはそのインドまで足を運んで、どのようになっているのかを偵察。そして一番いい髪がビバリーヒルズに持ち込まれる。そのビバリーヒルズの美容院の人が「ヴィヴィカ・A・フォックスはマレーシア産がお好みよ」とかバラしてしまう。
そういえば、昔アメリカに居た時に髪を切った時、一気に15センチ位切ったので、白人の女性美容師に「せっかくいい髪だから寄付してくれないか?」といわれた事がありました。なんでも病気とかで髪を失った人に寄付されるそう。私の髪の毛もアメリカのどこかでウィーヴとなって使われてるのかもしれませんね。
またアメリカの人口12%の黒人が(女性だけだともっと少ない)、ヘアプロダクト購入での占める割合は80%。そういえば、子供が髪を伸ばしていたとき、色々買わされた。髪を伸ばす油に、髪にツヤを出す油、髪が乾燥しない為の油に、クシ通りがよくなるスプレーに、コーンロウの時にはそれを整えるワックスみたいのに、アフロの時にはアフロを保つスプレー。もう訳分からない位。結婚して落ち着いた私のストレートの頭なんて、せいぜい贅沢してロレアルのトリートメント液位なのに。
昔は黒人企業家達が、自分達のヘアプロダクトを作って販売していたが、それが80年代に入るとレブロン等の大きな企業が買収に乗り出し、今はあまり黒人企業は存在していない。今はアジア企業が占めていて、主に中国や韓国の企業だそうだ。しかしその中で生き残っているのが、ダドリー・プロダクト。ノースカロライナに工場を構えており、その地区では美容学校も経営。彼等が作っているのが、リラクサー。リラクサーは科学液体で髪をストレートにする商品。しかし、この商品も使用を誤ると危険。失明の危険だってある。それを聞いたクリス・ロックが科学者と一緒に実験。リラクサーの液の中にソーダの缶をつけておく。1時間でソーダの絵柄が剥がれ落ち、1日では缶ごと崩れ落ちる程の破壊力。そのリラクサーを黒人の3歳の子供達だって使う事もある。皮膚についても危ない。ソルトンペパの有名なPV「Push It」にてペパの髪の半分が刈り上げられていたが、あれはリラクサーで皮膚が焼けたからだそう...と、本人が語っていた。「Malcolm X / マルコムX (1992)」でコンク(やっぱり髪をストレートにする)をして、髪や皮膚が熱くなってきたけれど、水道が止められているのを忘れて、便器に頭を突っ込むシーンがありましたよね。あれも似てるのかもしれませんね。
そしてこのドキュメンタリーではアトランタで行われる60年も続く由緒あるヘアコンテストの「Bronner Brothers Hair Show」も追っていく。4人の挑戦者が優勝を目指す。舞台の上で髪を切って見せるショーで、派手なラスベガスショーみたいな舞台。はさみをもって髪を切るけれど、そのテクニックが争われるとは、また違う感じもしました。
映画はクリス・ロック調で面白く飽きない作り。クリス・ロックがナレーションもしているので、少し「Everybody Hates Chris」にも似てるかも。ウエスタン映画で風が強い時に草が絡みあって丸く転がっているように、ブラックコミュニティに行けばウィーヴが必ず風で転がってるとか... バーバーショップでは男性達が黒人女性の髪は怖くて触れないから、白人女性と付き合うんだとか... ニア・ロングはエッチはウィーヴが気になるからついつい上になってしまうとか... リラクサーと言えば、アル・シャープトンが髪について語っていたり... アフリカ系の髪をアジア人が経営している店に持ち込んだり... とにかく明るく作ってる。でも、大学を卒業する女の子達の話が興味深かった。「就職となると、やっぱりクリクリの髪じゃいけない」と語っていた。私から見たら、「The Sixth Man / ゴースト・ブラザー/天国から来たヒーロー (1997)」に出ていたときのマイケル・ミシェルのクリクリの髪とか可愛いとか思ったんだけどな。彼女達は今の作られたイメージと合う為にどんだけ苦労してる事か... 小さい頃の私はよく「黒くていい髪だね」と、正にこのタイトルのような事を言われてました。今でも美容師に「年の割りにはいい髪してる」と褒められる事も度々。黒人女性からは「あら、いいカバン持ってるわね!」とか「シャツが可愛い!」とか言われる事はあっても、決して「いい髪なのね!」とは言われない。彼女達の意地なのかも...と思ったり、まだそこまで心開いて貰ってないのかも...とも思ったりする。彼女達にとってはセックスよりもデリケートな問題なのかも。
(5点満点:アジエンスで髪を労わりながらDVDにて鑑賞)