これまた静かに流れていくインディペンデンス映画でしたね。静かなんだけど、しっかり饒舌に主張してますね。
ルワンダが舞台です。「Hotel Rwanda / ホテル・ルワンダ (2004)」の成功以来、沢山の映画がルワンダの虐殺について描いてきました。しかしこの映画はルワンダの地元の人たちを使い、初めてルワンダ語で撮影されたドラマ作品です。でも監督はアメリカへ移民した両親を持つ韓国系の監督です。またこの人の略歴も面白くて、先に書いたように彼の両親が韓国からアメリカにやってきた移民で、なぜかアーカンソーの田舎の牧場で成長し、その後はイエール大で生物学を学び医師を目指すも、その大学時代に映画に目覚めて退学。大学まではアジア移民のらしさがありますよね。この彼にリンクしている日本人もいるみたいですよ。彼は大学時代に一緒に映画を学んだそうです。その日本人の方はこの映画には残念ながら絡んでいませんが、監督の他の作品には参加してるみたいです、そんな彼が作ったのが、ルワンダの少年たちの物語。どこにも接点が無さそうなのに... 現地の言葉で作ったというのも興味深いですよねー。大学までは映画に接点も無かった男性が... 面白い映画なんですよ。冒頭とラストはすごく芸術的。カットの使い方が非常に上手い。名門大で生物学を学ぶという、芸術にまったく接点のない男が... ここの所のインディは本当にカットの使い方が上手くて、ヤラレてしまう事が多いです。うぉーっと唸ります。
本当にゆっくりとゆっくりと時が流れていくんです。舞台が少年の田舎の実家に場所が移ると余計にゆっくり。会話とかも田舎ぽい。少年たちの会話とは思えない位で笑ってしまうのですが、そこがまた彼等の現状を物語っていて良いですね。ルワンダの首都キガリで会い仲良くなったのが、同じ年頃の2人の男の子。サンワは3年前に田舎の家を飛び出してキガリの市場で働いていて、もう一人のンガボ(正式にはタイトルにもなっているムンユランガボだけど、愛称がンガボ)も別の地区からキガリにやってきた男の子で同じ市場で働いてる。実はサンワがフツでンガボがツチなのだ。2人はある目的の為にキガリを出て、その途中にサンワの実家を訪れるんです。
やはりルワンダが舞台なので大虐殺が絡んでくるんですが... 死体なんて出てきません。死体とか殺害シーンはその現状を伝えるのには分かりやすい手段だと思うのですが、それは使っておりません。でも余計にきますね。グッと心に入り込んできます。でも暴力の恐ろしさを十分にこの映画は伝えてくれております。ナイフという物が出てきますが、その使い方も上手かったです。でもそれよりも2人の少年の微妙な心の変化とかが、繊細に描かれています。後は父と息子の関係とかも面白い。畑仕事をバカにされた息子が躍起になる所とか、逆に父も躍起になったりして。アフリカって、今でも父親の存在が「巨人の星」の父親一徹みたいに頑固で絶対的な存在なんですね。あんまり描かれなかったルワンダの「普通」も描かれているのが興味深いです。ああいう風に出稼ぎみたいに子供たちが都会に行ったり、大虐殺の孤児達が都会で一人で働いて生活しているのも知らなかった。でもまあこの映画が饒舌に主張している部分は、ルワンダのこれからの未来の部分ですね。だからこそ、未来を築く少年たちが主役なのが上手いです。
感想やあらすじはこちら。
(5点満点:DVDにて鑑賞)