あ、やっと紹介出来る!この映画を早く紹介したかったんですよ。実は「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」よりも期待していた作品です。
いやー、期待通りというか期待以上。もう最後のラストカットが奇跡的!!!というかこれはもう奇跡です。もうラストの2カットの為にこの映画観て良かったーーーーー!!!!!と私のテンション上がります。でも、この映画のテンションは低めです。ミシシッピとは思えない寒空の青が映える景色。でもミシシッピなんですよね。なんかその地の過酷さが伝わってくる絵です。と最初に書いてしまったようにラストカットが最高なんですが、オープニングからも最高です。寒空の青がスクリーン一面に広がる絵が、芸術的。物語自体は本当に暗い。これでもか!という位に暗くて重い。
この映画の舞台になったミシシッピは全米で一番の貧乏州として知られています。一人当たりの収入の割合が全米で一番低いんです。「アナポリス」という米海軍のアカデミーを舞台にした映画でヴィセロアス・レオン・シャノン(そういえば最近見ないな...涙)という黒人の俳優が主人公に「お前は俺のミシシッピだ」という台詞があります。その理由は「アーカンソーの好きな州を知っているか?ミシシッピなんだ。ミシシッピはアーカンソーがワーストワンの州にならないようにしてくれているからね」と理由を語るんですよね。ちなみにアーカンソーが全米のビリから2番目。「アナポリス」という映画では、君(主人公)が出来が悪いので私に注目が集まらなくて助かるという意味なんですね。何が言いたいかというと、ミシシッピは全米ではビリという事です。そこの人里離れた小さな町...とも言えない集落みたいな所が舞台。いきなり自殺という事件が起こります。その事件からラストのラストまで中々ハッキリと分からない部分も多いのですが、ゆっくりとゆっくりと「あ!そうだったんだ」と分かってきます。そこがまた面白いですね。事件が起きてからは本当にゆっくりと話が進みます。その手の映画が苦手な人はダメかもしれませんね。でもそのこの映画のゆったり感が物語を余計に悲しくさせているんです。傷を癒す時ほど、時間は中々経ってくれないものなんですよね。時間の経って欲しい時こそにゆっくり。その辺がすごく悲しくて現実的じゃないかと思いました。そしてすぐに起承転結する訳でもなく、2歩進んでもやっぱり1歩下がってしまう。<相田みつを>つまいずいたっていいじゃんか、人間だもの。相田みつを>
そしてこの映画作りも面白いんです。主要キャストのローレンス、ジェームス、マーリーを演じた3人は殆ど素人同然。監督はわざとちゃんとしたきっかりとした脚本を渡さずに、役作りをさせてから会話をさせていく形で撮ったようです。ハリウッド的な派手な仕掛けとかもなく、淡々と映画は進んでいくのですが、とにかくこの3人の距離感が気になって気になって...思わず最後まで見て、最後のラストに思わず「うぉーーーーー!(号泣)」となりました。凄い難しくて重い問題点も描いているのですが、衝撃的に訴えかけるのではなく淡々と私達に訴えかけてきます。台詞で訴えかける部分と、そうでないものが訴えかける部分のメリハリがあっていいですね。ローレンスがボロボロのラジオステーションを眺めているシーンとか大好きです。
この映画の監督はメジャー映画でヴィジュアル関係やアート等の色んな仕事をした後で、インディペンデントで映画を撮り始めて2本目がこの作品。コケイジアンの監督で、主要キャストの3人に加えて、コケイジアンの隣人が1人登場するのですが、普通だとその隣人が聖人化して描かれる事が多いのですが(グローリーとかみたいに)、ここでは特に聖人という訳でもなく、人間として普通の事をしたというように描かれているのもいいですね。誰か1人が凄い人じゃなくて、色んな人が色んな場面で支えあう。<金八>人という字は人と人が支えあって出来る字。金八>あと、逆にコケイジアンの監督だったからでしょうか?宗教に頼らずに、人間自身が立ち上がって(もちろんゆっくりですけど)いくのが好感持てますね。バイブルベルトに属するミシシッピなので、宗教が出て来ても全然不思議ではないんですけどね。
派手な物は一切無し。でも心にずっしりとした印象を必ず残してくれる作品です。ここに名前を出した相田みつをとか金八みたいなストレートに伝わる台詞や言葉を発している訳でもありません。感動を狙う台詞だってありません。でも普通の会話の中で、そういうメッセージを感じる事が出来るんですよね。
そしてラストは澄んだ気持ちにさせてくれます。私の場合、この次に見た映画のせいでその澄んだ心も帳消しさせられましたけど...
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(5点満点:うぉーーーと叫びながら鑑賞)