Hellfighters / 日本未公開 (2007) 69本目
スポーツ番組のESPNが制作したドキュメンタリーです。一言で言ってしまえば、「Hoop Dreams / フープ・ドリームス (1994)」のアメリカンフットボール版。
ニューヨークのハーレムと言えば、音楽や文学等のハーレムルネッサンスという黒人文化が栄えた街。スポーツはバスケットボール以外は盛んじゃないように思える。この映画を見た後にうちのフットボール大辞典こと夫に「そういえばハーレム出身の超有名フットボール選手って聞いた事ある?」と聞いてみた。「聞いた事ないかもなー」という返事。その答えはこの映画にあった。ニューヨーク市内にある300以上ある公立校でフットボールチームがある学校はたったの43校。ハーレムは0校。今でも高校内にはフットボールチームは存在していません。そこで立ち上がったのが、どこからともなくやって来たデューク・ファガーソンという男性。元NFLの選手。彼はハーレムから戦争に行った陸軍の第369歩兵連隊のニックネームを取って「ハーレム・ヘルファイターズ」というチームを作った。NFLが資金提供して出来たハーレムにある高校の連合チーム。ハーレムと名前がついているけれど、マンハッタンにある高校でフットボールチームがない学校に在籍している生徒は誰でも参加出来るらしい。公立校の多くが所属しているPSALに所属して試合に参加している。
デューク・ファガーソンはあまり多くを語らない。選手達も彼のプライベートな事は全然知らず「どこからやってきたのかも分からない」と答えている。ファガーソンはフットボールの事になると熱くなる。ボランティアでやってくるアシスタントコーチとも、お互いが熱くなって口論になって辞めさせてしまう程。ある意味独裁国家状態。PSALに所属しているので、学業も疎かには出来ない。ちゃんと提出しないといけない書類もあるが、ファガーソンだけでは手が回らずに毎年のようにペナルティで1試合放棄させられてしまう。
またハーレムにはフットボールフィールドもないので、バスケットコートで練習したり、普通の公園で練習したりしている。子供が遊んでいる中「ごめんね、ここ使わせて」と練習しているのだ。アメリカではフットボールは花形だ。フットボールの強い地域に行けば尚更。フットボールチームに所属しているだけで人気者になれる地域だってある。いいフットボールフィールドを持っている高校生はそれが自慢になる事だってある。ハーレムのそんな状態は選手にとって屈辱。
でも彼等だって普通の高校生。プロになって生活を華やかにしたいという夢がある。他の地域の選手と同じ位のいい体を持った選手がゴロゴロしている。彼等も他の地域の子供達と同じように小さい頃からフットボールを練習していたら、ハーレムからもスーパースター選手が育つんだろうなーと思わせる。でも現実は厳しい。
ファガーソンは彼等がヘルファイターズでプレイする事に対して「大学の資金になるだけでもいいんだ」と言っていた。何人かの生徒は夢見たフットボールの一流の大学ではないけれど、実際に大学に進む。もしファガーソンがハーレムにやってこなかったら... 彼等の殆どは高校を卒業するのがやっとだったと思う。生きがいを見つけた男達は素敵だと思った。
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(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)