ジャズ界の自然児サン・ラーが主演のSF作品です。カルト人気となったこの作品は2003年にアメリカでDVDが発売開始されて、2004年には日本でもDVD発売となったようです。日本の方はすでに廃盤となってしまったみたいですが、BMRの岩間氏が解説を書いているらしく読んでみたいです。
結論から言ってしまえば、こういうの大好きです。この時代のブラックスプロイテーションに影響を受けつつ独特の世界を作り上げてしまう感じ、たまりません。ビル・ガンの「Ganja & Hess / ガンジャ&ヘス (1973)」とか、メルヴィン・ヴァン・ピープルスの「Don't Play Us Cheap / 日本未公開 (1973)」とかもそうですね。自分にしか出せない個性をゴリゴリに出していく、その中で自分の伝えたいメッセージをガンガンに送る。サン・ラーの台詞は自分自身で全部考えたというのもそのメッセージがより伝わりやすくなっていると思います。敵対するオーバーシアーの役名については感想で書きましたが、それ以外にも若者達が集うユースセンターにはアンジェラ・デイビスやジョージ・ジャクソン、フレデリック・ダグラス、マルコムX、Godfrey Cambridge (ゴットフリー・ケンブリッジ)等のポスターが張ってあったり、サン・ラーが「ブラックネス(黒人であることの自覚)」という単語を多用したりする政治的な部分も見逃せないと思います。でもそれだけじゃなくて遊び心も忘れてない部分とかも好きです。監督は白人の人ですが、彼は昔のどうしようもないSF映画へのオマージュなんだと語ってましたが、サン・ラーが乗っているスペースシップは女性のおっぱいを思わせる形で笑ってしまいます。こういうサン・ラーのペルソナはジョージ・クリントンとかP−Funkに引き継がれていったのでしょうか...
この映画、映像も凄く綺麗です。ラストでサン・ラーと女性ボーカリストが交互にフレームインする所とかたまりませんね。衣装とかも綺麗。クレジットを見ていて、目に飛び込んできたのが「Emiko Omori」という日本人の名前。Photographyを担当したそうで、調べてみたら日系の人で後にPBSで日系の人についてのドキュメンタリーを撮ってサンダンス映画祭を受賞しているらしい。
この映画で重要なのが2人の男の子です。1人は最初からサン・ラーのメッセージを飲み込みますが、1人は半信半疑。でも最後にはその半信半疑だった男の子がサン・ラーの為に立ち上がるのです。サン・ラーが子供達に託した物を確認できる場面でもあると思います。
I'm the myth talking to you, farewell!
秋に相応しい芸術作品堪能させて頂きました。たまりませーん!
感想はこちら。
(5点満点:DVDにて鑑賞)