何回も同じ事ばかり書いて申し訳ないけれど、でもそれがやっぱりこの映画についての大きな部分を占めていると思うので書きますが、公開前から随分と批判・論争を呼んだいわくつきの映画。アメリカ音楽を代表する天才ピアニストのニーナ・シモンの自伝映画。『Avatar / アバター (2009)』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』等の人気女優ゾーイ・サルダーニャがその伝説ミュージシャンを演じた。批判・論争になったのは、ニーナ・シモンは黒人の中でもダークスキンと言われる色が濃い女性で、彼女の曲などでもそれについてのプライドが伺える。演じたゾーイ・サルダーニャはライトスキンと呼ばれる比較的色の薄い女性。まあ、ライトスキンの女性がダークスキンの女性を演じるのは、今まででもあった。問題はそのシモンを演じるのに、この映画ではサルダーニャの肌に色を足し「ブラックフェイス」という昔白人役者が黒人をバカにする為に使ったものを使用、そして白人のような鼻を持つサルダーニャにメーキャップを施し鼻を広げて大きくした事にある。それは多くの人々を怒らせた。シモンの遺族・関係者が激怒した。シモンの公式ツイッターでサルダーニャに直接「2度とニーナの名前を貴方の口から言わないで!」と懇願される程だった。まあそれが全てですね。なんと驚く事に吹き替えなしで、サルダーニャが劇中で歌を披露。意外に歌えるけれど、やっぱり感動するレベルではない。遺族を納得させる出来ではなかった。また、シモンの半生を描くならば、もっと違う時代を観てみたかった。確かにトラブルを抱えていた時代を物語にするのは観客の興味をそそるかもしれないし、そして作り手としても作りやすいのは重々に分かる。確かにこの映画はニーナを知らない人には見やすい。が、ニーナの音楽はそれだけじゃなかった。公民権運動時代に辛い運動で人々を励ましたあの曲たちこそニーナが一番伝えたい事だった筈だ。やっぱりこれは冒涜でしかなかった。(3点)
Nina / 日本未公開 (2016)