SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

Timbuktu / ティンブクトゥ (仮) (2014)

Cast >> Ibrahim Ahmed (Kidane), Abel Jafri (Abdelkerim), Toulou Kiki (Satima), Layla Walet Mohamed (Toya), Mehdi A.G. Mohamed (Issan), Hichem Yacoubi (Djihadiste), Kettly Noel (Zabou), Fatoumata Diawara (La chanteuse) ...
Director >> Abderrahmane Sissako
Writer >> Abderrahmane Sissako, Kessen Tall
Producer >> Sylvie Pialat
Genre >> Drama
Country >> Mauritania

総合ポイント 5点/5点満点中
内容 >> 5 演技 >> 5 演出 >> 5 音楽 >> 5

"Mecca is that way"
マリのトンプクトゥの砂漠で優雅に美しく走る一匹の鹿。しかし銃声が鳴り響いた。銃を持つ男たちが乗っているトラックには、アンサール・アッ=ディーンの旗が揺れている。そして砂漠に置かれた神々しいアフリカ彫刻。その彫刻にも彼等は銃弾を浴びせる。銃を持った男たちは拡声器にて、「タバコと音楽は禁止。女性は靴下と手袋をするように」と呼びかけた。そのトンプクトゥの集落からちょっと離れた所に、テントの家が一軒ポツンとある。主はキダン(Ibrahim Ahmed)で、妻(Toulou Kiki)と12歳の娘(Walet Mohamed)、そしてキダンの牛を世話する少年イッサン(Mehdi A.G. Mohamed)が居た。キダンの一家の周りにも昔は集落があったが、アンサール・アッ=ディーンが街を統治するようになってから、みんな出て行ってしまった。キダン一家の元にも彼等が入り込んでくるが、妻は毅然とした態度で接していたので、あまり関係せずにひっそりと暮らしていた。しかしある日、キダンの牛がイッサンの目を離した隙に一頭が川に入り込み、漁師の大事な網を壊してしまい...

モーリタニア初となるアカデミー賞の外国語部門にノミネート!でも舞台は隣国になるマリのトンプクトゥ。アブデラマン・シサコ監督はやはりマリの首都バマコが舞台の『Bamako (2006)』も撮っている。しかし『Bamako』とは違う。今回はイスラム教過激派アンサール・アッ=ディーンを徹底的に叩いている。とは言え、アメリカのハリウッドとは全く違う手法で叩いているのだ。彼等が過激で非道な所をそのまま映しだせば、それはそれで効果的かもしれない。しかし、シサコ監督はそういう事はしない。ある一家の家族を通し、いかにこのグループが人々を破壊していくのかを丁寧に描いている。そしてこのグループがいかに愚か者で偽善者たちであるかを、サッカーボールが無いのにサッカーを優雅にする少年たちと、取り締まる銃を持った男たちがサッカーのジダンやメッシの話に夢中になっている場面で上手く対比させて表現している。その他の対比も本当に上手くて効果的だ。

シサコ監督は語る。未だに人が人を裁いていると。そこにどうしても歪みが出来てしまうものだ。この映画は人々の非道さではなく、ヒューマニズムに重きをおいて、人々の美しさを雄大に訴えているので、深く考えさせられるのだ。抗議映画の名作が誕生した。

(6/24/15:DVDにて鑑賞)